17話「仲違い」
俺達はクエスト【コボルト退治】を終えると、日が完全に暮れる前にギルドへと報告しに帰った。
ギルドに着くと相変わらずここの冒険者達は昼間から酒を飲んでいる連中ばかりだ。
顔ぶれもそんなに変わんないしな。
そして今は、受付にて討伐結果を報告しようとしている所だ。
「すみません……今回の討伐確認お願いします」
「ああっ……お、お疲れ様です……」
相変わらず毎回ボロボロの姿で現れる俺を見て、受付のお姉さんは苦笑いを欠かさない。
受付のお姉さんは手際よく俺達のドッグタグを回収すると、そのまま討伐の確認を始めていた。
前にも言ったがドッグタグに討伐データが蓄積されるというこの世界の技術……一体誰が考案したのやら、全くもって不思議だ。
すると今回は、あっという間に確認作業を終えたのか受付のお姉さんが俺達の方を見てきた。
「はい、確かにコボルト退治のクエスト完了を確認しました! ……それと、コボルトキングを倒した事により
受付のお姉さんがクエストクリアを教えてくれると気になる言葉を言ってきた。
「「特別金?」」
俺とヴィクトリアはそのままオウム返しした。
「はい、特別金とはギルドで指定している危険モンスターを討伐した際に払われるお金の事です。コボルトキングはBランク帯の魔物指定だったので助かりました!」
受付のお姉さんは特別金とは何かを話してくれると俺は一つ疑問が生まれた。
ギルドが指定する魔物って事はだいぶ危険な魔物って事なのでは……?
あの時、確かパトリシアは『戦闘力も低く初心者には打って付けのクエストですわよ』とか何とかほざいていた気がするんだが?
俺は直ぐに横に居るパトリシアの肩を掴み尋問を始める。
「おい、パトリシア? お前このクエスト選んだと時にコボルト達は戦闘力が低くて初心者向けとかどうのこうの言っていたよな? コボルトキングってなんだよ聞いてねえぞ」
グイグイと顔を近づけて問い詰めるとパトリシアはゆっくりと口を開いた。
「フッ……私は一言もコボルトキングについての戦闘力は言っていないですわ。言ったのはあくまでも通常種のコボルト達ですわ。それに私は聖騎士を生業とするパラディンですの。立派な聖騎士道を歩む者にとって、弱い相手と戦って何が成長と言えますの!」
パトリシアは最後の部分をドヤ顔で語ると満足したのか、肩に乗っかっている俺の手を退けようとしたが。
「馬鹿かオメーは!! 何が弱い相手を戦って成長だぁ!? そんなもんどうでもいいわ! こっちはお前の下らない聖騎士道で死にかけたんだぞ! やるならソロにするか別でパーティを組んでからにしろ! それと、これは今回は一番言いたかった言葉なんだが……」
「な、なんですの……」
俺は肩に乗せいている手に力を掛けて、罵詈雑言を浴びせるとパトリシアは顔を引き気味にして次の言葉を待っているようだった。
「……そう言っときながら結局お前はコボルトキング倒してねーじゃん! ダメージすら与えてないじゃん! 倒したのはユリアだぞ! せめて援護やらなんやらしてからそのセリフを言いやがれ!」
言いたいことを全部吐くと、俺は息を荒げてパトリシアの肩から手を離した。
「ッ……!」
パトリシアは何か言いだけな顔をしていたが、唇を噛んで堪えている様子だ。
「ちょっとユウキ……いくら何でも言い過ぎじゃないですか? パトリシア涙目ですよ?」
「お嬢様系キャラの泣き顔! これは実に見たい所……だが、オレもここは言い過ぎだと思うぞ」
ヴィクトリアとユリアが意外にもパトリシアの援軍となっていた。
しかし……ここで俺が折れたらパトリシアまた同じ事を繰り返すかも知れない。
俺はパーティの成長を考えて言っているのだ。
普段の俺なら美少女を泣かすなんて行為、絶対に出来ないけどな!
逆はあったけど!
「俺は事実を言ったまでだ」
ヴィクトリア達の言葉に俺はこう返すと、流石に言い返せなくなったのか二人は黙った。
「あ、あのー……お取り込み中すみません。こちら今回の報酬金二十三万パメラになりまっす……」
受付のお姉さんは俺が喋り終えるのを待っていくれたのか、区切りの着いた所で報酬金を渡してくれた。
「すみません……。カウンター前で騒いでしまって……」
俺は受付のお姉さんにペコペコと頭を下げた。
なんか毎度毎度、カウンター前でやらかしていてる気がして本当に申し訳ない……。
そのうち出禁とかにならなければ良いが。
というより総額報酬金が二十三万パメラか……四人で割ると一人あたり五万七千五百パメラと言った感じだな。
俺は報酬金を受け取ると、カウンターから少し退いた所でお金の分配を始めた。
「ほれ、これが今回のお前たちの報酬金だ。多いか少ないかは各自の使い道次第である!」
ヴィクトリア、ユリア、パトリシアの順で渡していく。
「ほうほう、この額なら何とかあそこの賭博屋で戦えますかね……」
ヴィクトリアは恐らくギャンブルに使う気だろう。
「ふむ、私としてはこの額ではちっと少ないが、まあ良かろう!」
ユリアはなんやかんや言いつつも受け取っていた。
「…………」
パトリシアはお金だけ受け取ると、俺と目を合わせようとせずに直ぐギルドの外へと出て行ってしまった。
俺はその光景を見て、まるで子供が自分の思い描いた様に物事が上手く進まなくて駄々を捏ねているような姿だと思った。
そして横からヴィクトリアが俺の背中をつんつんしてくると。
「本当に大丈夫ですかね? パトリシア、このままパーティを辞めたりしないですよね……?」
「どうだろうな。だがまあ……」
俺は視線をギルドの扉から外すとユリアへと向けた。
「すまないがユリア、パトリシアの様子を見といてくれないか? あれだけ言っといて何なんだがな……」
「ふん、案ずるな! 元よりそのつもりだったぞ」
ユリアは杖をコンッと軽く床に突いて答えた。
「おぉ、それはありがたい。パーティを組んで早々にすまないがよろしくな」
「まったく……ユウキは意外とツンデレさんだなっ! ハッハッハ!」
俺が頭を下げて改めて頼むと、ユリアはニィっと笑み見せてからパトリシアの後を追っていった。
恐らくパトリシアはお嬢様系キャラとかではなく、
だから、今まで誰にもキツく怒られた経験がなくて、どうしていいのか分からないと言った状況なのだろう。
理想だけが先行して自分が追いついていないというのは、よくある事だ。
だからこそ、気づいて欲しいんだけどな。
「その紅茶飲んでいる時に
俺は小さく呟いた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ユリアがパトリシアの後を追いにギルドから出て行った後、俺はステータス反映と睨めっこしていた。
ちなみにクエスト帰りに言っていた飲み食いは、パトリシアとユリアが居ない事から次回に取っておく事になった。
流石に食い意地の張っているヴィクトリアもこの事に関しては納得している様子だ。
「さて……レベルが六も上がって今は十一レベに到達したな。スキルポイントは十八ポイントも使える訳だ」
ステータス反映を操作してレベルとスキルポイントを確認すると、俺はどんなスキルを取ろうか悩んでいる。
うーむ。レンジャー職で他のスキルを取るか今のスキルを強化するか。
これは想像以上に難題だな。
もし単独戦になったとしたら今回みたいに上手くいくとは考えれないし……。
「うーむ……どうっすかな」
俺はスキル欄を眺めていると、ふと視界に【???】の項目が入ってきた。
「これは……? 前に現れた謎のスキル項目じゃないか。あの時はビビって避けてたけど」
何気なく俺はその項目選んでみると、画面の真ん中に『解読しますか?』と表示された。
「解読しますか? なんだそれ?」
俺は一瞬、解読ボタンを押すかどうか悩んだが、心の何処かで湧いてしまった好奇心に負けてしまい……。
「解読ボタン! ポチーっ!」
そのまま解読を選んだ。
すると【???】と書かれていた項目が徐々に文字になっていくと、そこに書かれていたスキル名に俺は驚愕した。
「な、なにぃ!?す、スキル『スラスター』だと!?」
俺はてっきりこの世界に来た時に失われた能力だと思っていたが、まさかスキルとして認証されていたのか!?
スラスターとは一点加速で瞬時に移動したり、相手に詰め寄ったりと逃げと攻撃に上手く使える能力だ。
よ、よし……この能力があればきっと単独戦になったとしても俺は戦える筈だ!
俺は躊躇せずに『スラスター』と書かれた項目選んでスキル取得ボタンを押した。
「っしゃあ! これで装甲がまた一歩有能な武器になったぜ!」
ステータス反映機の前でガッツポーズを取りながら喜んでいると、俺は右上の残りのスキルポイント数に目が行った。
「は……はぁ!? ななな、何でもうスキルポイントがゼロなんだよ!」
お、おかしいぞ……さっきまで確かに十八ポイントあった筈だ。
なんでどうして!? お、落ち着け、考えれる事としては、あの解読ボタンとスラスター取得ぐらいだろう。
スラスター所得はまあ分かる、スキル項目にあったぐらいだからな。
だけどそれで全部使い切る何て事は流石にないだろう……てかあって欲しくない。
だとしたら……あの解読ボタンでかなり吸われていたのか!?
嘘だっろ! だったら書けよ! これぐらいポイント使いますよって!
他のスキルにはちゃんと使用するポイント料が書いてあたったぞ!
はぁはぁ……。恐らくこのスラスターという項目自体が例外的な物だからか?
「いや待てよ? 何か小さく横に書かれている?」
俺は目を細めると新たに小さく文字が記載されていることに気がついた。
えーとなになに? 解読ポイントで七ポイント消費。取得ポイントで十一ポイント消費……だと?
…………ぬぁぁぁぁ!!
そういう大事なことを小さく書くんじゃねえ! ふざけんなよ!
「ユウキ~? 終わりましたか? そろそろ宿屋に帰って休みましょうよ」
そこへタイミングよくヴィクトリアが俺に声を掛けてきた。
「あ、あぁ、そうだな。今日はもう何もしたくないや……」
俺はヴィクトリアの提案に乗ると即行で宿屋へと帰るとにした。
そう言えば……ユリアとか大丈夫だろうか?
パトリシアの様子を見とくように頼んだが、ちゃんと宿屋とか取っているのか?
うーむ、ちゃんと聞いておけば良かったな。
もしお金が足りなければ、気前よく貸してあげないとな。
頼んでいるのはこっちだし。
俺は宿屋へと向かう途中にそんな事を考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます