第27話 本当の私



「蒼、、、。」


鏡の中のたくさんの私が、たくさんの蒼に変わっていた。


「詩織のせいで僕は一人で外出が出来ない。」


「好きな子に告白すら出来なかったよ。」


「なんで僕に魔法なんて掛けたの。」


「「「詩織なんて、大嫌い。」」」


蒼たちが私に酷い言葉を投げかける。

やめて、やめて、わかってるから。

私が全部悪いの。

わかってるから言わないで!!!

もう試練なんてやめたい、辛い、、、。


「蒼はそんなこと言わない!!!!!」


自分の口から出た言葉にハッとした。

そうだ、蒼はそんなこと言わない。

いつも誰にでも優しくて、笑顔で私の話を聞いてくれて、そんな蒼だから友達になりたいと思った。

この試練を乗り越えて、蒼に掛けてしまった魔法を解きたい!!!

私は蒼と話をしなくちゃいけない!!!


「「「本当の私は見つかった?」」」


いつの間にか私を囲んでいた蒼たちは、またたくさんの私になっていた。


本当の私、、、本当の私は、、、。

先程見た大勢の私の姿が頭に浮かぶ。


「居た、、、見つけた!!!」


その瞬間、心が晴れやかになった。

スッキリした。


「全部!!!」


そう、全部だ。

心当たりがあるから、図星だから嫌な自分を見て最悪な気持ちになった。

それがわかったから、認めたから、スッキリしたんだ。


「蒼が大好きな私も!塾に行きたかった私も!

ママのせいだって思ったのも、迎えに行くのちょっとめんどくさいって思ったのも、、、。

全部、みんな、本当の私!!!」


鏡の中の私たちが一斉に笑顔になる。


「「「大正解!!!!!」」」


たくさんの私がそう言うと、鏡の迷路がまるで花びらが舞うようにバラバラになった。

鏡はまた谷底に散らばった。


「詩織、第二の試練クリアおめでとう!」


「ありがとう、シルビア。」


私の目の前でシルビアが拍手してくれていた。




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