第17話 黒の森
息が出来ない!!!
突然の水中、暗く、上も下もわからない。
僕はパニックになっていた。
もがいても、もがいても、水面に出られない。
浮くんだ!!!浮かなきゃ!!!
小学生の時、小野先生から習ったことがある。
着衣水泳の授業だった。
「溺れた時はバタバタしないで、浮いて救助が来るのを待つこと!」
小野先生の顔、言葉を思い出して全身の力を抜き、手足を広げて大の字になる。
体がゆっくりと浮上していくのを感じる。
と、共に足が何かに当たった。
「足、着くじゃん、、、。」
立ってみると、水から頭だけ出すことが出来た。
大海原にでも放り出されたような感覚だったが、ここは湖?池?沼か?
流れはないから川ではないような、、、。
「なんだろう?ここ、、、。」
陸に向かって歩き出すと、違和感に気づく。
木々が黒く、水も、草も黒いので夜だと思っていたが、木漏れ日が刺している。
暗いのではなく、黒かったのだ。
木、水、草、全てが黒い。
ガサッ!!!
草が揺れた方に目を向けると、何かがいる。
何かも黒いので、これだ!と判断出来ない。
大きさ的に小動物だろうとは思うけど、、、。
僕は立ち尽くすことしか出来なかった。
「お!居たよ!レア!」
「回収するわよ!ノア!」
突然、頭上から声がした。
「え!!!???」
声の方に目を向けると、少年と少女が箒に跨って浮いていた。
絵本に出てくる魔法使いのようだった。
「俺は右腕!」
「私は左腕ね!」
箒に乗った少年少女が下降してきて、僕の腕を片方ずつ掴んだ。
「「せーーーのっ!!!」」
僕の体は一瞬にして宙へと浮かび上がる。
「うわぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
全身が水中から出たと思うと、すぐに僕の目線は背丈の2倍程になっていた。
「静かにしろよな!落とすぞ!」
ノアと呼ばれる少年は白い半袖のワイシャツ、ピシッとした紺色の半ズボン、首には紺色のリボンまで着けていた。
足元はローファーに白い靴下で、良いところのお坊ちゃんのような服装だ。
襟足が首元まであるし、前髪も長いので、ショートカットの女の子に見えなくもない。
ネイビーの髪の毛はサラサラだった。
「あーあ、重いなあ。
男運んでも何も楽しくないね。」
見た目と言動のギャップがすごい。
「ドロシー様の命令よ!黙って運ぶ!」
そう言ったのはレアと呼ばれる少女だ。
少年とほとんど同じ服装だが、彼女は膝丈のスカートを履いていて、白い小さなベレー帽を被っていた。
二人とも小学校低学年くらいに見える。
そんな二人は顔がそっくりだった。
多分、双子かきょうだいだ。
「あの、、、どこに行くですか?」
落とすぞ!と脅されてから黙っていたのだが、不安すぎて尋ねてしまった。
「ドロシー様の家だよ!
お前の魔女もそこにいる。」
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