第11話 焦りと動揺
あの日から奥田くんとは大の仲良しになった!なんてことはなくて、、、。
私と奥田くんはあれから一度も話していない。
彼は相変わらず窓際で本を読んでいるし、私は女の子と遊んでいる。
話しかけたいけど、勇気が出ない。
それから1週間経っても、奥田くんと話すことは出来なかった。
1週間後の夜、私はまた寝る前に1日のことを思い出していた。
「今日も奥田くんと話せなかったなあ。」
話しかけようかな!って何回も思ったのに、勇気が出なかった。
「あーあ、奥田くんまた迷子にならないかなあ。
迷子になった奥田くんを私だけが見つけられたらいいのになあ。」
目を瞑りながら、そんなことを考えていると突然自室のドアが勢い良く開いた。
「詩織!!??」
飛び込んで来たのはママだった。
「詩織!!!あなた今何をしたの!!??」
ベッドのそばに座るママは見たこともないような怖い顔。
私の肩を握る手にどんどん力が入っている。
「寝ようとしてただけだよ!
何もしてない!」
涙目になりながら答えた。
「そう、、、。」
それだけ言うと、手を離してくれた。
ママの顔はいつもの優しい顔に戻っていた。
「ごめんね、詩織。
ママの勘違いだったみたい。」
ママは私を抱きしめて、頭を撫でてくれた。
私の涙が引っ込む。
「おやすみなさい、詩織。」
「おやすみなさい、ママ。」
その日は私が眠りにつくまで、ママがそばに居てくれた。
「今思えば、この時私は無意識に魔法を使っていたんだと思います、、、。
そして母はそれに気づいていたみたいです。」
詩織の話を聞いて、ツバメがうんうんと頷いている。
「オカンは魔法の気配を感じたんやな。
それにしても、、、。」
そう言って僕をチラッと見る。
「迷子になって泣いて女子に助けてもらうってやばない?
情けなさすぎん?」
気にしていたことをツバメに言われ、僕の顔は耳まで赤くなる。
「そりゃ、子供の頃は迷子は怖いですよ。今は迷子になっても泣いたりしないで、すぐに詩織を呼んでま、、、。」
途中まで言いかけてやめた。
が、僕の言葉を聞いてツバメがカラカラ笑う。
「女子に助けてもらうんは変っとらんやん!!!
ほんまになっさけないやつやで!!!」
自分でも本当に情けないし、申し訳ないと思っているから何も反論できない。
「そりゃあ、詩織以外見つけることは出来ないからね。
“迷子の魔法“はそういうもんさ。」
紅茶を啜りながら、ソファーに座っていたドロシーが言った。
「私が魔法を使ってしまったことに気がついたのは、それから1ヶ月ほど後のことでした、、、。」
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