修学旅行と「誰にも内緒」な11文字
和響
第1話
凄すぎると思った。正直、こんなに修学旅行が豪華だなんて思ってもみなかった。同じ塾に通ってる他の中学の友達も驚いていたほどだ。
「まじで? 東京ドリームランドの系列ホテルに二泊!? しかも一日目の夕飯は屋形船って、凄すぎん?
「でしょう? しかも屋形船でご飯食べた後は、スカイツリー貸切だって」
「やっば! うちらなんて大阪、神戸、広島行くけど、ユニバーサルパークにはよらないんだよぉ? 羨ましすぎるって!同じ市町村でこの違い、なんなんだー!」
そう言って、隣の中学の
修学旅行は六月。修学旅行を楽しむためには、最高の班でなくてはならない。それが今、私の中の一番大きな悩みだった。
――
そうは言っても、私の好きな人、大地君はすでに
――でも、大地君のことが好き。
大地君は中学二年生の時に私のクラスに転校してきた。転校する前は東京に住んでいたけれど、親の仕事の関係で、私の住んでいる田舎町に引っ越しをしてきたと言っていた。
初めて大地君を見た時、私の胸はとくんと小さな音を立てた。学生服を着てはいるけれど、どこか都会の香りがした。派手とか、かっこつけてるとか、そういうことじゃなくて、小学校からずっと一緒のメンバーだったこの中学校にはない雰囲気を醸し出していた。それはただ転校生というだけではない。どこか冷めているというか、悲しげにも思えた。
その日、大地君が転校してきた日。私はきっと大地君に恋をしたと思う。目新しい転校生に一目惚れ。自分でも単純だとは思うけれど、そういうことなのだろう。でも、そんな風に思っている女子は他にもいたようで、他のクラスから大地君を見にくる子もいたし、気軽に話しかけている子もいた。私はそんな気軽に話しかけるようなタイプじゃないから、遠巻きにそれを見ていた。
「ねぇ、大地君って、何部だったの?」
「剣道部」
「ねぇ、大地君って、彼女とかいた?」
「いた」
「えー! じゃあ遠距離?! 今、遠距離なの?」
「うん」
この時、私はまず一回目の失恋を大地君にした。そうか、東京に彼女がいるのだと他の女子の会話を盗み聞き、一人重苦しい気持ちで、彼女が病気で死にそうな恋愛小説を読んでいた。大地君が転校してきて三日目のことだった。
しかしその後、東京の彼女とは別れたそうで、その噂は大地君を取り囲んでいた女子の会話で、私の耳にも入ってきた。同じクラス。狭い教室。本を読んでいても、そんな話題はすぐに聞こえてくる。ふわりと風に揺れたカーテンが、私の心をくすぐった。
この時、私の胸はまたとくんと小さな音を立てて、萎んでいた大地君への思いは膨らんだ。大地君が転校してきて三ヶ月目のことだった。季節は夏。ちょうど夏休みに入り、会えない日々の中で私の大地君に対する思いは大きく膨らみ、私の心を包み込んだ。会いたい。偶然にどこかで会えないかなと、毎日思いを募らせた。
けれど、夏休みが明けると、大地君はクラスの中でも目立つタイプの女子と付き合い始めていた。夏休みにその女子がRINKで猛アタックをして、付き合い始めたということだった。この時、私は大地君への二回目の失恋をした。
そして今に至る。なんなら、その時の彼女とも別れ、春休みに
――そんな、ただ思っているだけじゃだめなんだよね。そんなことはわかってるけど。でも、私にはそんな行動力も勇気もないや。
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