第七話 悲鳴

【炎の領域、惑星第十三号】ここは先ほどの大戦より少し離れた場所だ。

 連続した丘が自然の障壁を形成している。障壁の中にはピラミッドのような形をした祭壇がある。祭壇全体が金属でできている。階段の高さはおおよそ1メートル。階段の十層ごとに踊り場があり、合計九つの少し広い踊り場が設けられている。各踊り場は同じ面積で四つの方向に八つのトーテムが均等に置かれている。

 また、各トーテムの前にリザードマンの司祭が立っており、彼らの土色の厚い手にほぼ同じ厚さの古き本を持っている。司祭全員はマントを着ているので顔全体は見えないが、口角が異常に上がっていて、邪悪な笑顔を浮かべながら呪文を唱えている。

 祭壇の頂上では平たい足場があり、ドムの側近となる四人のファイア・ドルイドが恐ろしい笑顔でさらに大きい声で呪文を唱えている。彼らの目は詠唱の影響を受けてすでに破壊の黒い霧に置き換えられ、彼らの精神も徐々に狂っている。

 その四人ファイア・ドルイドの前は祭壇全体の中心で、この場所のすべての魔力が集まる場所だ。その上空には非常にゆっくりと成長する黒いエネルギーボールがある。

 

 祭壇の下にいくつかの要塞が祭壇を囲んでいる。最大の要塞は少し離れている。要塞のホールにドムは玉座に座り、生き物の皮のような濃い黄色の古き本を読んでいる。その本は、裏返されると蛇が舌を出し入れするように数本の火が舞う。

 本の内容は次のように記録されている。


「コルナー歴元年、リザードマン部族と牛頭人身のタウレン部族や他の獣人部族と連盟を結び、コルナー族として融合した。そして25年、初代炎帝・オルカ・ドムは氷の領域への侵入を開始し、70年続いた第一次氷と火の戦争は最終的に氷の領域の初代氷帝・ノールグラスに撃退された。オルカ・ドムも封印されてしまった。101年後、ノールグラスはコルナー族に暗殺されて死んだため、氷の領域は宣戦し第二次氷と火の戦争が始まった。約150年に渡り戦争が終わり、コルナー族は勝利を収めた。領土問題は創世帝・トリー・ルシウスに調停され、コルナー歴3280年まで大戦はなかった。3281年、封印されていたオルカ・ドムはやがて逆世の悪魔に解放され、氷の領域に対する復讐の戦をはじめた。惑星系と惑星系でのワープができるようになり、わずか6年間で第三次氷と火の戦争に終止符を打った。オルカ・ドムは氷帝・ポールトル・ノール・グラカノールを倒し、氷の領域の軍団を撃退した。しかし、3288年光帝・ぺラルド・カルロ・パーリセウスの援護により初代氷帝の魂と力を継承した新氷帝・ポールトル・ノール・グラシューに敗退し、約三個の星系の領土を失ってしまった。3289年、滅世帝・ソロムネスは三つの軍団を率いて塵世に侵入した。ソロムネスはドムに破壊の力を与え、その後、トリー・ルシウスに加勢し、光帝・パーリセウスを殺すためだった。3291年に、ソロムネスは敗北し、パーリセウスに闇の領域の果てしない深淵に封印されました。トリー・ルシウスも同年パーリセウスに殺され、守護神に忠誠をささげたパーリセウスは創世帝になった。」

 

 ドムは古き本を読み終えた後、隣の戦士に手渡したあと、嘲笑した。

「彼らが犯した唯一の間違いは、われを再び封印しなかったということだ。そして今回派遣したグラシューはわれに負けた。ハハハ、時代は再びわれわれのものに属する!」

 それからドムは激しく笑い、両方のひじ掛けを強打し、獣の骨や革に作られた玉座から立ち上がり、要塞から出て目の前の祭壇を見つめる。笑いの中に狂気が満ちている。

【氷の領域、ノール星】グラシューはアイス・ドラゴンの胸から出た後、宮殿の前にいる2人のアイス・ゴーレムがゆっくりとドアを開けた。片方の膝にひざまずいて「ゴー!」と地鳴り、地面が揺れた。


 グラシューは怒りを持ってドアに入った。廊下にいるホワイト・エルフは片膝をついて氷帝に挨拶したが、グラシューは彼を無視し、護衛の司令官からルーンが輝く氷の欠片を取り、最上階に直接テレポートできるゲートを開いた。

 この状況を見てエルフたちは互いにささやいた。

「氷帝は失敗したであろう……」

「創世帝に何か命令されましたか?」

「嫌な予感しかしないな。」


 グラシューは玉座に座り、手で髪を整理して玉座を叩いた。そうするとホール内に足音が鳴り響き、豪華な青い鎧とローブを着た男が玉座に向かって歩き、玉座の前に跪いた。

「氷帝、お戻りになりましたね」

 しかし氷帝は変わりなく冷たい表情で氷蓮の執行官・アルシェ・アクファを見ている。

「アクファ、礼はいいからもう聞きたくない」

 アクファは軽く微笑んだ。

「獣たちとの戦い、お疲れ様でした。魔力が回復したらまた…」

 グラシューは激怒した。

「ドムは一度倒した相手だ、取るに足らない獣に過ぎないが奴はまだソロムネスの力を持っているとは!」

「なんですと!ソロムネス?あり得ないです、前回の大戦ではソロムネスが封印された後、悪魔の大軍は魔力の繋がりを切断され、エネルギーの根源も失い、その結果自ら滅んだのではないですか。ドムのような少量の破壊の力しか与えられなかった者も自然と体内から消えると創世帝様がそのようにおっしゃったはずですが…」

 珍しく感情の起伏が激しくなったアクファは長い間口を開けて言葉を失った。

「いずれにせよ、ドムにはまだ破壊の力がある。余はドムなどに恐れないが、どれほど固い氷でも砕け散る、どれほど鋭い斬撃でも破壊の黒い霧を斬れぬ。効果があるのは強力な光属性の魔法か幻属性にしかなく。よってこれからは光帝たちに任せると大帝が言った。」

 しかしアクファは急いで言う。

「それだけでは十分ではないです!」

 グラシューは冷笑した。

「余は世に置いて最強の領域の帝王だが、光帝・カルロ・ジックも攻撃力においては塵世一位か二位を争う者だからな。何せよ光の力は最も貫通力が強くスピードが速い…」

「しかし、逆世の悪魔がいると光帝だけでは足りないです!」

 アクファは話した後突然身体が震えた。

 グラシューは眉をひそめた。

「逆世の悪魔?ゲートはもう閉じられたはずだが?」

 アクファは心の恐怖を抑え、震える声で言った

「今は確かに逆世から塵世に到達するゲートはすべて閉じられましたが、前回の大戦が始まる前に、逆世から来た悪魔たちはコルナー族と契約を結び、オルカ・ドムを封印から救いました。塵世からゲートを開く方法は恐らくその時契約を結んだコルナー族の司祭たちが教わったはずです、そして破壊の力さえあればゲートを開けることが可能になるでしょう。創世帝様は恐らく存じないと思います。」

 話した後、彼はひざまずきました。ひざまずいて、自分の体をコントロールすることができない。

 グラシューはその話を聞いたあとショックを受け、立ち上がった。

「そうか!そうだった!滅世帝・ソロムネスほどの力を持つものでなければ、本来強大な悪魔を宇宙と宇宙の間に構築されたゲートに通らせないものだったが、二つの宇宙に両方の破壊の力で共鳴させれば可能になるか。ましてや向こうにもっと強い破壊の力を授けられた者がいると…」

 アクファの話に基づき推理したグラシューは自分の考えに恐怖を感じ、少し自分が落ち着くように黙った後続いて話す。

「余はすぐに風の領域に行き、すべての力を団結させなければならない。それから闇の領域に行ってソロムネスを封印している現地に防衛の陣地を強化する。今光帝はすでに創世帝からの命令を受けただろう、ドムのところに彼が勝手に止めに行けばいい。」

 ノールグラスはグラシューの体から離れ、姿を現す。

「落ち着きなさい!若い氷帝よ。まずはその情報を創世帝に言いなさい。創世帝が知っていれば待機はしない。」

 グラシューはそれを聞いて笑いながら話す。

「創世帝に報告?つまり龍の領域のドラゴン軍団(ドラゴン・ナイツ)の救援を要請するか。もう手遅れだ、それに彼らが助けに来るとは思えない。私たちは隠された光軍団に通知する必要があります。命令を受けた光帝は今のところ炎の領域に向かっているだろう。彼らのスピードであれば、すぐにでもゲートを見つけられるだろう。ゲートの呪文を止められるかどうかはわからないが、余はまず肝心な封印の防衛を強化すべきだと思うぞ。」

「それは独断で、ひょっとしたら滅びの道に歩むかもしれんぞ。」

 ノールグラスは警告をしたが、グラシューの顔を見て考えを変える意思が見えないためそのまま無言に立つ。

 アクファはお礼をしたあと、グラシューに話を掛ける。

「氷帝、幸いなことに、闇の領域も同盟国となり、私たちは光、風の領域と同じく彼らのメイン星に直接テレポーテーションができます。光の領域は私が行き、炎の領域にあるゲートを探し出すよう頼みます。ただ一つ心配しているのは雷の領域はこの状況の中でどういう動きをしますか?彼らはかつて滅世帝・ソロムネスの重要な衛兵でした、彼らを先行に抑制しますか?」

「それについて、アクファ、心配する必要はない。創世帝はすでに雷帝・モールソ・ノギを支配した、雷の領域も安定している。」

 

 一方、光の領域。

【光の領域・ソル星】メインスターには、完全な防御システムを備える都市がある。街の中心に巨大な広場があるのは不思議だが、この広場は計り知れない程度の魔力が氾濫している。

 ここは隠された光の街、創世帝の宮殿よりは半分以上小さいこの城は、光を抑えており、侵略されたときだけ誇らしげな光を放つ。


 突然、城から巨大な光を放ち、まるで太陽のようにこの都市を照らす。

 5本の光線が城から飛び出し、徐々に空に広がる魔法陣を取り囲んだ。魔法陣から3体の姿が徐々に表れ、アクファとポールトル族の外交官たちだった。そしてほぼ同時に上空にさらに5体の光が現れた。

 5人の真ん中の男は金色の鎧と白色のローブを着ている。来者は光帝・カルロ・ジックに違いない。一見、創世帝かと思うほど輝いているが鎧の模様は少し違う。目立つ赤い髪は夕暮れの空のようだ。

 光帝は先に質問した。

「氷蓮の執行官・アルシェ・アクファか、光の領域で何か御用があるか?」

 アクファは速い口調で状況を話した。

 カルロ・ジックは話を聞いた後頷く。

「状況を把握した。ちょうどさっき「龍の両翼」として誇る「刀剣翼」が来た。創世帝からの命令を受け入れ、もうすでに炎の領域に行く準備が整えている。話を聞いた限りドムは必ずゲートの場所にいる、ということだね。ならばゲートとドムを同時に破壊しよう。」

「これは喜ばしい情報です、光帝様。貴殿の光の力であれば必ずやドムの残りの破壊の力を突破し、獣の凶行を止められるでしょう。ではいきなりですが、私はここで失礼します。」

 話が終わったあと、光帝一行もアクファ達も光となり同時に空に飛び上がった。そして何秒後、地上から無数の光が宇宙に向かって打ち上げられた。

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