第6話

智美のテンションが急に高くなった。

睡眠時間は明らかに短くなって動き回り、またあるときは私に暴言を吐いてくってかかってくる。

なるべく刺激しないように立ち回る私。


「智美、不安定で苦しくない?私は有給を取ったし、一緒に臨時受診しよう」


私は病院に連れて行く。

どうやら、内服薬のおかげで軽い躁(軽躁状態)で済んでいるらしい。少しお薬を追加された。


「食べて、飲んで、寝て、ゆっくり休んでください」


と先生に言われた。


そして、智美は少し落ち着いた。


しかし…。今度は性的逸脱がやってきた。

連日連夜、智美が私を誘うのだ。

性的な意味で。

手を変え品を変え。


私が部屋にいると、


「美穂ちゃん、入ってもいい?」


入れたい欲求と、入れてはいけない欲求が交錯する。入れたら、まず間違いなく襲われる。


リビングでも、料理を作っている私を後ろから抱きしめる。


智美のためにじっと待つ私と、限界を迎えて滅茶苦茶にされたい私の、2つの私がいる。


智美はこう言う。


「もうね、待てないの。私は美穂ちゃんの気持ちも知っているし。問題ないでしょう?」


智美は私の手を握る。


「…、料理中だから危ないよ。それに、病気の時は良くないんだよ」


智美は聞いていないみたいで、手を恋人握りにして私の手を舐める。

私は料理の手を止めた。


私はもう限界だった。

智美が私の唇に激しいキスをし、私もそれを受け止めた。


行為中も私は自分から手を出すことはなかった。全て受け身にした。


なるべく声をあげずに頑張ったが、息遣いや身体の反応は隠せない。

なるべく無抵抗で乗り切った。


あとで智美は後悔するだろうから…。


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