第六話 『夜のお話(そういうお話じゃないよ?)』
「大輔〜、ご飯よ〜、どこ〜」
「母さん俺後ろにいるんだけど」
「うわっ!ごめんね大輔〜、あ!ご飯できたわよ〜!」
「うん、聞こえてたから分かってる」
この少々間延びする特徴的な喋り方をしているのが俺の母親の
容姿は家族の贔屓目抜きでも十分綺麗な方だと思うし、四十代という年齢の割には大分若く見られることが多い。性格の方は、うん。なんというか、喋り方で察してくれ。
そしてご覧の通り実の母親ですら俺を見つけることは難しい。
ぶっちゃけ今までで俺をすんなりと見つけた回数は数えるくらいしかない。
あー、慣れてるよ?慣れてるけど、慣れてるけどね?
………シクシク(泣)
き、気を取り直していこうじゃないか!
晩飯のお呼びがかかったのでリビングに移動していく。ちなみに俺の家は普通の一軒家だ。
席には既に父が座っていた。父の名前は
その姿は、えーと。ヤクザだなー、いや顔怖すぎかて!
まあ実態は仕事熱心且つ妻と子供を愛するバリバリの愛妻家で普通に良い父親であるのだが。あと仕事はリーマンである。ヤクザではない!
なお、父も俺を見つけることはなかなかできない。
母も席につきご飯を食べ始める。
……なんか父さんがチラチラ見てくるんだが。……俺はノンケだぞ(錯乱)!?
「大輔、お前。いいことでもあったか?」
「??」
なんだなんだ、どした父さんよ。普段飯食ってる時はただあまり喋らず食べるーーより詳しくはそこに美味そうにとつくーーだけなのに話しかけてくるなんて。ていうか良いことあったかってそんなふわっとした質問の意図がわからないんだけど。
「いや、なんだ。雰囲気明るくなってるっていうか」
「え、まじか」
ちょっと待て。雰囲気明るくなってるって全然そうなる心当たりないんですけど。
なんだ?今日何があったっけか……。
「ああ。……まさか、お前…!」
「え、何」
「やっと友達出来たのかっ!!」
おいおいおい。言うに事欠いて何言っとんじゃい!俺にだって友達の一人や二人いますけど!
……実際は深夜のニュース番組の名前と同じ人数なんでなんも言えないんすけど。
ていうか、
「流石にそれはないぞ父さん。一体誰が俺に気付けて友達になれるとおも…」
自分で悲しくなることを言いながらふと自分に気付ける完璧美少女のことが頭をよぎる。
正直に言おう。
葉山さんとの関係性はよくわからない。いや関わってまだ二日しか経ってないから分かるも何もないと思うのだが、今まで女子と関わった事のない俺でも彼女の距離感がおかしい事は分かる。
うーん。向こうは単純に恩人として接しているのだと思うが、この距離感は友達と言って良いんじゃないか?
あくまで俺の考えとしてだが。
「なんだ、急に言い淀んで。はっ!やっぱりお前!」
「うーん、どうなんだろ。でも仲良く?してくれてる(まだ二日だけど)人ならいるけど……」
「「なんだとっっっ!!!!」」
いや、うん。驚くのは分からなくはないけどね?
実の両親が高校生の息子に仲良くする人が出来たぐらいでそんな驚くなん…はい俺のせいですね。
「いや〜!本当に良かったわ〜!」
「ああ全くだ!めでたいしこれは久々に飲んでも……」
「だめよ剛毅さん〜。あなたまさか、この前の事忘れたとは言わせないわよ〜?」
「あ、はい」
おうおう、完全に父さんが悪いけど相変わらずこういう時は母さん怖いし父さん立場ないな。怖い顔が見る影もなく怯えてるし。
ちなみにこの前の事とは。
父さんが会社の人と飲みにいったのだが、帰ってきた時馬鹿みたいに酔っ払っていたのだ。そして御察しの通り、玄関に思いっきりリバースしちゃって。
次の日、本気でキレた母さんが、
「あら〜。そんなにお酒好きならご飯もお酒だけで良いわね〜?」
とか言って二日間朝食も晩飯も本当にお酒しか出さなかったという父さんにはトラウマになった出来事の事である。あと父さんの戻したものの処理は俺が丁寧にやりました。いやだって本気でキレた母さんずっとウフフ〜とか笑ってて怖すぎたんだもん。
「……ご馳走さま。部屋に戻るわ」
と絶賛キレ中の母に告げると、
「待って〜大輔」
「な、何?母さん」
え、怖ーーーーー!!
キレモードの母さんは本気で怖いからやめて欲しいんですけど!なに、何言われ…
「……よかったわね、大輔」
……母さん。
「それとその仲良くしてくれてる子は女の子なのかしら〜!もしそうならうちに連れてき…」
「部屋に戻ります!」
アアアアアもおおおおおおおお!!!!
これだからうちの母親はああああああ!!!!
感動を返してくれ全く!
おまけ
「あなた〜?冷蔵庫に入ってる瓶は何かしら〜?」
「いや違うんだ!会社の人にもらっただけで…」
「ウフフ〜しっかりと、お話し合い。しましょうね?」
「違う待ってくれ!話を、ギャアアアアア!!」
「あー、父さんまたなんかやったのか。これで通算113回目、いい加減学習しろって………」
葉山家の日常は続いてく……
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