影の薄い俺が学校一の美少女を助けた結果〜え、なんで俺に気づけんの〜
吉奏輝
第一話『彼女との出会い、そして始まり?』
「今日来てないのは……葉山か」
「先生俺いますよ」
「ぬわっ!」
(いつものこととはいっても、窓際の席に座ってんのに気付かれないとか本当に影薄いよなあ俺)
俺こと
信じられないかもしれないが、俺の気づかれないエピソードは数え切れないほどある。
例を挙げると。
その一、小学校の頃かくれんぼをしていた時に気づいたらかくれんぼが終わっていて、一時間以上隠れ続けていた。
(みんなに至っては俺が参加していたことすら忘れていた)
そのニ、中学校での体育で、バスケの授業の時本当に幻のシック◯マンみたいな行動をしていた。
(具体的には俺のことをマークしていた相手が俺を一瞬で見失ったりした)
その三、同じく中学校の中間テストの際、危うく欠席扱いにされるところだった。
(後のテストからは俺個人に対しての出席を取るようになった)
などなど俺の気づかれないエピソードは止まることがなく、文化祭編や体育祭編、修学旅行編などもある。
改めて振り返って見ると本当ひどいなこれ。
さてそんな俺が通うこの高校には俺の影が薄いスタイルと真逆と言える、めちゃくちゃ目立つ人たちが三人ほどいる。
どうでもいい話だが、個人的に俺の存在感はこの三人に根こそぎ奪われたのだと思っていたりもする。
話が逸れたが、そんな三人の紹介をしよう。
一人目、
ニ人目、
そして三人目、
その容姿は、眉目秀麗、才色兼備、容姿端麗など、これらの言葉は彼女から生まれたと言われるほどである。
なお、赤井齊藤両方からの同時アプローチに全く靡なびかないことから、恋愛に興味はないとか男嫌いとか日夜様々な憶測が飛び交っている。
まあ、この三人に関して言えば同じクラスではあるが全く関係はないため、たいして気にしていなかった。
あの日までは。
俺は運動が嫌いというわけでも苦手というわけでもない。むしろ自分で決めた量を自分のペースでやる分には好きな方だ。ランニングとか筋トレとか。ただ、学校の体育のような義務化された運動は嫌いなんだけど。
そんな俺は、決まったコースを走るのではなく、気分によって走るコースを変えている。
だって嫌じゃん?同じコース走り続けるとか。
とまあそんな感じで走っていたわけなのだが、そのコースにある公園で俺は、偶然その場面に出会わしてしまった。
「ねえ君。すっごい美人だねえ。どう?俺等と楽しいことしない?」
「そうそう、ついでに言うと、キモチいいかもねえ?あははは!!」
「……お断りします。もう帰りますので」
「まあまあそう固いこと言わずにね?」
「ちょっとお兄さん達と遊ぶだけだからさあ!」
「……大声で叫びますよ」
「叫んでもいいけどここら辺あんまり人来ないし。…いても見て見ぬ振りすると思うよお?」
「……っ!」
そこには、学校一の美少女こと高瀬魅依が見るからに不良な二人組に絡まれている姿があった。
まじですかー。ガチでテンプレじゃん。やばいよやばいよ。
って、このまま助けないと本気でヤバそうだし。
……ここは俺の本気を見せるしかないようだな!
いや、言ってみただけです。はい。
つっても彼女を助ける以外の選択肢はないわけで。
これはすぐ助けないと俺の学校での居場所がなくなってしまうなあ、とかどうやって助けようとか若干現実逃避気味な思考のまま彼女達まであと三メートルぐらいのところまで来た。
(うん、気づいてないわこの二人。なんなら高瀬さんも気づいてないし、こういう時は自分の影の薄さに感謝するんだよなあ)
「ねえ、ちょっといいじゃん!俺等と楽しいことしようよ〜」
「……い、嫌です!」
(クソだなこいつら。まじで吐き気がして来るんだけど)
と、内心嫌悪感でいっぱいだったためか。
俺は一切の遠慮なく、背後から片方の男の股間を蹴り上げた。
「なあいいだ、フギャっ!!」
「「……え?」」
気色悪い悲鳴をあげて男がうずくまる。
そしてもう一人の方も驚いているうちに股間に蹴りをお見舞いした。
「おい何が、ギャンっ!!」
さて、ミッションコンプリート!!あとは、
「さて、高瀬さん逃げるよ!」
「…え?ええ?」
彼女はまだ呆然としていたが、股間を蹴っただけなのでこいつ等はすぐに復活して来ると思うので、余裕のない俺は、
「お手を拝借」
「え?ちょっと待っ」
「失礼!」
彼女の手を取って走り出した。
この時の俺は、奇襲がうまくいったことに安心していたり、彼女の手が思った以上に柔らかく内心めっちゃ動揺していたりと、端的に言えば焦っていた。
ただ、そこはこの俺。昔から誰にも気づかれなかった為に傷ついてきた俺は、感情の制御が得意なため、一切表情に出さず(多分)走り続けた。
そして不良達が追ってきていないことを確認し、そこでようやく彼女の手を離し彼女に向き合った。
そして、
(うわめっちゃ美人やないかい!まつ毛長っ!肌綺麗!)
改めて高瀬魅依という存在の美しさを痛感していた。それと同時に、生き物としての格の違いを。
(これはあれやな。下手に関わらん方が絶対にいい。今日のことは恩とか関係無しに忘れてもらった方がいい。だって俺存在感皆無、影が薄いことが取り柄?のモブだぜ?そんな俺がこの人と関わったら俺霞むどころか絶対消される。存在感もそうだが、周りから物理的にも)
と、俺が謎の決意をしていたら、
「ええっと、葉山さん、ですよね。同じクラスの。本当に助けてくれてありがとうございました!
このことでお礼がしたいんですけど、よろしいですか?」
と切り出してきた。ていうか俺の名前知ってたのね。
俺、とっても嬉しいですよ!
「いや、お礼とか、その、いいです。ただの、その、自己満足なんで」
「でも」
「いや、その、ほんとに、その、大丈夫ですから」
「……なんでカタコトなんですか?」
(あんたが可愛すぎて緊張してるんだよおおお!!)
当然、そんなことを面と向かって話せるわけがなく、
「はは、なんで、ですかね。ああ、本当にお礼とかいいんで、じゃあ、気を付けて、帰ってくださいね」
速攻で帰ろうとしたのだが、彼女はそう簡単にはいかなかった。
「あの、家の近くまででいいので送ってくれませんか?ほら、女の子一人だと危ないでしょう?」
く、上目遣いに甘えた声、だと!?こ、こんなの卑怯だ!これに耐えられるやつなんて男だと絶対誰もいないだろ!
「……分かりました。それで、家はどこなんですか?」
「実は……」
「実は?」
「家、すぐそこなんです……」
「……俺、帰っていいですか?」
「だ、駄目です!本当に怖いので送ってくれませんか!お願いです!」
よく見ると彼女は確かに震えていた。
まあ確かに危うく襲われそうになったらそら怖いわな。
はあーーー。しょうがない。
「じゃあ行きましょう。それで、家はどこなんですか?」
「はい!ここを真っ直ぐ行って、」
嬉々として説明し出す高瀬さん。
何故かはわからないが、こうやって彼女が笑顔を見せてくれるなら、もう少しだけ一緒にいてもいいような気がした。
その道中。
「一体いつからあの人達の後ろにいたんですか?全く気付きませんでした」
「ああ、俺は、影が薄いですから。こうやって話してるから、気づけているだけで、多分、普通は気づかれないんですよ、俺」
「へえ〜そうなんですか……影が、薄い……なら…あ!」
彼女のリアクションを見るに家に着いたのだろう。
「ここが家です。その、葉山さん。何から何まで本当にありがとうございました!」
歩いて数分、彼女の家に着いた。
いや本当にすぐ近くだったな。
「いや、お礼とか、大丈夫だから。じゃあな、高瀬さん」
「はい!それではまた明日会いましょう」
「ああって、ん?また明日ってどういうこ」
バタンッ!高瀬さんはもう家に入ってしまった。
え、何?
また明日って何?
明日から、何が始まんの?
こうして彼女との出会いがあり。
この日から。
彼女との関係は始まったのだった。
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