無償の愛が存在しない異世界で、本当の優しさを広めたい

しょう

この世界は①

季節外れの暴風雨に打たれながら、感傷に浸っていた。もうずいぶん前の出来事のような懐かしくもあるこの世界に来たばかりのころを思い出す。


 あれは冷たい雨が降る昼下がり、哀愁漂う秋の季節だった。




 何の変哲もない日曜日を過ごし、翌日の仕事の事を考え憂鬱な気分に浸りながらネットの掲示板を読んでいた。休日にやることといえば、ゲームか掲示板を読むこと、それか新作のラノベを読むくらい。彼女もいないし、遊ぶ友達もいない。そんなだらだらといつもと変わらない日曜日を過ごしている時だった。




 突然眩い光に襲われ、驚く暇もなく着の身着の儘しらない場所に飛ばされた。


 Tシャツにズボンだけジャージというおしゃれとは程遠い恰好だったが、パンツ一枚や全裸で飛ばされなかっただけ幸いだったと思いたい。


 俺のファッションセンスはどうでもいいとして、周りを見渡すとTHE・草原感あふれる場所に少しだけ盛りあがっている丘とも何ともいえない所にいた。




 現世にいたころ異世界転生や転移ものの小説を読み漁っていた俺は二つの答えに迷っていた。この時点でまず転生の線は消えている。成長過程で記憶を取り戻したという事もない。ただ、自分の姿を確認するすべがないため、もしかしたらこの世界の住人に魂だけが入っている可能性もあるが、まぁ今はこの点については置いておこう。


 前述の二つの答えだが、一つは、これが全く知らない異世界に転移されてしまったのかという事と、もう一つは俺の知っているゲームの世界に移転したのかという事だ。この二点の違いは今後の異世界人生に大きな影響を与える。


 知っているゲームの世界であれば知識をいかし、俺TUEEE何てこともできる。逆に全く知らない世界であれば、知識もなく武器もなくハード級、いやナイトメア級の難易度で生きていかなければならない。




「というか、こういう場合まず何か説明やらチート級のスキルや装備が貰えたりするんじゃないのか」


 ため息しかでてこない。




 別に落ち着いて冷静に分析し、この世界に順応しようとしているわけではない。というか、俺はホラーといった類のものは大の苦手で、学歴もなく生まれ持った天才でもなく、サバイバル知識に豊富ということもないごくごく普通な一般人だ。もしかしたら一般人以下かもしれない。これといった自慢できるものが何もない。そんな俺がこの状況にたたされたら吐き気と不安でパニックになりそうなのだが、無理やり冷静を装い自分をごまかすことにした。




 とりあえず現状を把握するには情報が何もないので、近場を散策してみることにした。


自分の腰あたりまで伸びた草が生い茂っているだけで何もない。腰より低い小型の獣や蛇などがいたらどうしようか。草に隠れてこちらの様子を伺っているのでは。こういうときほど嫌な想像ばかり浮かんで冷汗がでる。


 とにかくまずは水や食料と安全に過ごせそうな場所をさがすため少し遠くまで歩いてみることにした。




 快晴とはいかないが雨などは降りそうもない。こうして空を見ていれば自分が過ごしてきた地球とは何も変わらない気がする。




 もしかしたら、地球のどこか別の国に飛ばされただけなのではないかと希望をもったがそれはすぐに消し飛ぶこととなった...

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