第241話 『ダイエット・サルビア』と温泉の快進撃!

体験型商売である『ダイエット・サルビア』が誕生して一週間――。

女性達はゆっくりではあるものの、40分キッチリと運動をこなし、その後数名のお供を連れてマリシアの温泉へ入り、体の疲れや余分な汚れをシッカリ落としつつデトックスし、更に温泉から上がると、『肌が蘇る』と謳われるフェイシャルエステを入念にして、ネイルで指先を美しくし、最後にドレスを着て化粧を行うまでのフルコースは、とても人気が出ましたわ!

マイナス5歳は若返るという謳い文句は貴族女子の心を揺さぶり、キャンセル待ちを望む貴族が後を絶たなくなりましたの。

とは言っても、先に契約を行った方が優先なのは当たり前で、せめて温泉がはいれなくても運動が出来ないのかという問い合わせが相次ぎましたわ。

それもこれも、一カ月で美しいスタイルを手に入れた方がそれなりの人数いるからでしょうね。

特にBスタジオの方々のスタイルは目を見張るものがありましたわ。


美しさに磨きのかかった貴族子女は、婚約者から愛を囁かれ、婚約者が溺愛してくると更に評判になり、何故早く予約を取らなかったのか悔やんでいる貴族女性も多くいるのだとか。


結果――アラーシュ様の元へは、もっと人員を増やせないのか。

もっと応募人数を増やさないのかと言う問い合わせが殺到。

ですが、アラーシュ様には「これ以上の人数を増やすことは今は考えていない」と言う返事をして頂いてるため、待ちきれない貴族達が大勢押しかけることになりましたわ。



「ですから、フェイシャルエステまでのフルコースは無理ですわ。それに人数も今でギリギリです」

「そこを何とかできないかしら?」

「申し訳ありませんが、現在満員の状態で無理で御座います」

「もっと増やせないの!?」

「満員の状態で御座いますので今すぐは無理かと」



対応する店員さんが哀れに思う程、貴族女子は詰めかけていましたわ。

そう言って叫んでいる女性の隣を、フェイシャルエステまでした女性達が優雅に歩きながら去って行くと、今度は「今なら開いているんじゃないか」と詰め寄る貴族女性達。



「トレーナーにも休む時間は必要ですので」

「でも!!」

「あまりしつこく言われるのでしたら、出入り禁止となりますが?」

「――分かったわよ!!」



最後には「出入り禁止にするぞ」と脅せば貴族女性達は渋々帰っていく事が多い。

今回の体験型商売は大成功と言って過言ではないでしょう!

それでも一日60人捌きつつ、それを月の曜日から土の曜日までギッシリ入れているのに、まだ貴族女性が入りたがるなんて……ナカース王国の貴族の多さには驚きますわね。


そうそう、私が最初に対応したフランダーシア公爵夫人は、子宝の湯に入って一カ月経たぬうちに子宝に恵まれたことから脱退しましたが、直ぐに新しい貴族が入っていますわ。


この子宝の湯の評判も凄まじく、不妊に悩む貴族女性が多く訪れているのもありますわね。

だからと言って増やす訳にも行かず、職員にも一日の休みと言うのはとても大事ですもの!




それから更に一か月後――。

『ダイエット・サルビア』に通っている貴族女性とは価値のある女性である。


と言う噂も流れ始め、自分の価値を上げたい貴族女性は後を絶たない。

けれど満員で入れない。と言うお預け状態が続く中、体験型の似たようなお店が幾つか出来はじめたものの、フェイシャルエステがどのようなものなのか理解できてない経営者によって、出来ては潰れ、出来ては潰れを繰り返している様子。


せめてダンノージュ侯爵家との繋がりを持ちたい商売をしている貴族達はアラーシュ様に近づいた者も多いそうですけれど、『商売をしているのは私ではなく、孫のカイルとその妻、リディアである』と一刀両断され、繋がりを持つ事がとても難しいのだそうですわ。


男子禁制の『ダイエット・サルビア』に乗り込んできた男性も多く、追いかえされた男性たちは怒り、わたくしかカイルを呼べと叫び散らしていたようですが――。



「面会のお話はこちらには来ておりません」

「カイル様とリディア様は忙しい方々ですので、早々わたくしたちも会う事が出来ません」



と、言われては護衛騎士に追い出されているのだとか。

そもそも、この世界に「温泉」と言うものはとても少ない。

冒険者ですら一度体験したことがあるかないかの世界だったのに、今ではファビーの温泉のお陰で、庶民を始めとする王太子領とダンノージュ侯爵領では当たり前になりつつあったのですが――。



「何故温泉を王都にも出さないんだ!」

「不公平だ!」



とお怒りになる貴族も多く、「王都に出す場合、城の許可が必要になる」と伝えると、流石に陛下に直訴することは難しいため、地団駄踏んでいる状態なのだとか。

貴族専用の温泉もありますけれど、そちらは現在ほぼ国王陛下御夫妻専用ですものね。

けれど、猛者はいるもので――。

お忍びスタイルで王太子領やダンノージュ侯爵領に来て温泉を体験した貴族もいるらしく、それがまた素晴らしかったと噂になり、王都では「温泉に入りたい」と言う強い考えが溢れているのだとか。



そこで話し合いの結果、ファビーが王都に、日の曜日だけ温泉を開放することになりましたの。

冒険者用の温泉を男性用の温泉へ。

庶民用の温泉を女性用へ。

毎週日の曜日に温泉だけは体験できるとあって、あっという間に貴族達の鬱憤は発散しましたわ。

特に、週に一度だけと言うのが効いたのか、特別感があるとかで入りに来る貴族は後を絶ちませんの。


無論注意としては、おつきのメイドは一人だけにする事が盛り込まれており、貴族女性ならば着替えが簡単に出来る服装でお越しいただくことになりましたわ。無論化粧に関しても御着きのメイド一人にさせることを盛り込ませて頂きましたの。

化粧が剥がれても問題のない方はお入りくださいと言う事ですわね。


無論中での喧嘩や諍いに関しては、こちらは関与いたしませんと言うのもある為、貴族の矜持で平和と拮抗が保たれていると言う訳ですわ。


温泉で身も心も解れれば、後は勝手に帰ってくれますし、入館料も高めに設定しているのにお構いなしに入ってくれますし、お金を落としてくれるいい客ではありますけれどね。


無論、冬の行軍と夏の行軍では温泉は使えなくなるため、その間は貴族達も我慢して頂くことになりますわ。

それでも尚入りたいと言う方は、陛下に直談判して貰うように注意書きに書いている為、早々馬鹿をする方はいないでしょう。



こうしてあっという間に王都の貴族達を温泉と言う娯楽におとすことに成功した訳ですけれど、日の曜日までファビーには温泉を出して貰っている為、ファビーの給料は上げましたわ!


それから更に一か月後――。

どうしても子宝の湯に入りたいと言う女性の為だけに、マリシアも温泉を日の曜日に開けることになり、子宝に恵まれたい女性専用の日として、一日20組限定で予約を行い入る事が可能となりましたの。


子は宝。

子宝の湯で子に恵まれるのなら嬉しいですものね!

無論、マリシアの給料もアップですわよ!



――こうして、王都でもダンノージュ侯爵家の名と、『ダイエット・サルビア』の名は知らぬものが居ない程に定着したある日、アラーシュ様からお呼び出しがありましたわ。







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美は一日にしてならず。

とはよく聞きますが、実際そうだなーと痛感する年齢の私。

化粧はね、うん、大変なんだよ。

流行りすたりもあるし、化粧道具は季節の新作だなんだと出るし。

女性は大変だなぁ……。



何時も☆や♡など有難うございます!

とても励みになっております(`・ω・´)ゞ

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