第226話 足がかりになる為の店作りと、マリシアの涙と。
こうして始まった王都での商売への活路。
アラーシュ様に話したところ、「体験型は実に結構。今までにない商売になるだろう」とお褒めの言葉を頂き、「何時頃人は育つか」と言う問いに、せめて半年はかかる事を告げると、半年後に大きな屋敷をダンノージュ侯爵家で購入することが決まりましたわ。
また、その足掛かりとして子供向けの店を最初にオープンさせることを告げると、アラーシュ様は満足げに頷いておられましたわ。
子供と言うのは貴族でもそうですけれど、お金が掛かるものですわ。
特に貴族ならば教育、習い事、ドレスや靴等多岐にわたるでしょう。
そこは前世とあまり変わりは無いのかしら?
また、屋敷の半分は、わたくしたちの商売の売り上げから出すことになりますが、元々が儲かっている為に大きな痛手などには一切なりませんでしたの。
金銭関係に関してはライトさんがキッチリとしてくださっていた為、有り余るほどの金貨があった事に、こちらが驚いたほどですわ。
「毎日黒字って最高ですよね」
そう言って微笑むライトさんの笑顔は、とても幸せそうでしたわ……。
赤字にならない様に気を引き締めなくては!!!
そして、美女三人には王都での洋服関係専門として今後は活動して貰う事になりましたの。
といっても、売るのは専業の方を雇うとして、貴族用の子供の服を大量に作って貰う事にしましたわ。
無論、デザインは大量に作っておいたので見せると、今までにない華やかなドレスに――。
「身も心も踊り狂うわ!!」
「こんな愛らしい服を作っていいの!? 作っちゃうわよ!」
「お坊ちゃんの服もまた良いじゃない!!」
と、概ね好評だったことにホッとしましたわ。
私の考えた子供服と言うのが――前世流行っていた少女たちに絶大なる人気を博したアニメの衣装だったり、男の子向けには同じように前世流行ったアニメの衣装をイラストにしてだしたのだけれど、どれも了承を貰えて良かったわ。
やはり煌びやかな服装と言うのは目を引くのよね。
そう言えば――……一つ確認をしなくてはならない事があるわね。
そう思い、久しぶりにブレスレットを使ってカイルに話しかけると、驚いた様子だったけれど話をすることが出来ましたわ。
「カイル、アカサギ商店で聞いて来て欲しい事があるの。反物と呼ばれる布地はないかしら?」
『分かった、丁度今から話し合いだから聞いてくるよ』
「助かりますわ。それがあると衣装が更に広がりますの」
『そんなにか? 分かった、手に入ったら全部買い取りでいいのか?』
「ええ、高額な物でも構いませんわ」
こうして、わたくしは前世の祭りや祝い事の日に着ていた、『浴衣』『着物』を思い出したの。
男性なら『着流し』『甚平』『作務衣』とあるわね。
これを着こなした貴族なんて早々居ないんじゃないかしら?
確かにこの世界にある【当たり前のドレスや衣装】と言うのはよく目にするけれど、『和服をアレンジ』と言うのは聞いたことも無いわ。
そう、花魁風なんてのもあるし、太夫のような衣装だって珍しいわ。
そんな事を考えながらも、今度は彫金師及び付与師の元へ向かい、図案を手に説明しながらオルゴールと共に渡すと、彼らは頷いてオルゴール付きの宝石箱や、宝石付きの化粧箱を作ってくれることになりましたわ。それに髪留めや手鏡もお願いできたことでホッとしたわ。
貴金属や宝石に関して、彫金師に勝る物はいませんし、付与師には子供向けの付与アクセサリーを頼んだことで、まずは一安心ね。
「後は子供向けの化粧品だけれど……」
無論無添加でしか作らないけれど、色付きリップは色合いをピンクからオレンジ、赤系をメインに多めに作り、アイラインやチークなんかも作って、軽く白粉程度の抑えるのがベストよね。
洗顔に関しては専用のものを使えば直ぐに落ちるようにしておけばいいし、子供用の洗顔は泡タイプのものにしましょう。
後はそうね……ニキビ肌に悩む子供も多いと思いますの。
ニキビが嫌で家に引き籠るなんて、あってはならない事ですわ!
ニキビの為の洗顔やケアー用品も一式作るのは大事ですわね!
女の子は生理が始まる頃からニキビに悩み始めますもの……私も経験があるから分るわ。
男子も思春期に入ると悩みやすいと聞きますし、これはロングセラーになる予感がしますわ。
後は男性用、子供用アイテムとして、汗を拭うとスッとするウエットティッシュなんかも良いかもしれないわね。
汗を掻きやすい男児にこそ必須アイテムですわ!
女性なら油とり紙かしら? ちょっと和風なイメージのものが作りたいわ。でも花模様は必須よね。
それらを纏めてノートに書いたところで、昨日集まった女性達が集まり、休憩所にてまずはネイルの講習から始まりましたわ。
今回はわたくしも新しい店舗で忙しいと言う事で、急遽ヘルプで王太子領にあるネイルサロン・サルビアから三人のネイリストが集まってネイル講座が始まっているようですわ。
無論、道具は昨夜のうちに全て作っておきましたから、彼女達にはアイテムボックスと同時に渡してありますわ!
白熱したネイルのお話がされている中、フォルが訪れ、ファビーとロニエルも訪れ、弟子三人も訪れると、ノートに書かれたアイテムの多さにファビーはわたくしとフォルを交互に見ていましたけれど――。
「これは、錬金術で作れないんですか?」
「作っても良いけれど工程がとても長いの。それに子供が使うものならどうしても不純物を100%取り除けるロストテクノロジーが使い勝手が良いのよ」
「ボクは男子が使いそうなモノでしたら今は作れそうです。女性が使うものはスキルがまだ足りないようで」
「じゃあ、男子用はフォルに任せたいわ。それとフラフープはフォルにも作れまして?」
「はい、色も種類も豊富にあります」
「ではそちらも作っておいてくださる? 後は子供用も作っておいてくれると助かるわ。託児所でも使いたいし、箱庭の子供達用にも使いたいの」
「分かりました」
「それと、こんなものも作ってみたから子供達に遊ばせようと思いますわ」
そう言って鞄から取り出したのは――レトロな竹馬。
缶で出来たのと、竹製を作っておいたので、子供達が自由に遊べるでしょう。
「此処では馬は飼えませんから、代わりに竹馬と呼ばれるものと、その代わりとなる物を作りましたの。子供の運動機能を高めるアイテムの一つですわ」
「面白そう――!」
「転んでも下は砂地ですし、滅多な事では怪我はしませんね」
「そうね、わんぱく盛りが箱庭には多いから丁度いいかなと思ったの」
「仕事の合間にリディア様は子供達の遊び道具も作っているんですか?」
「そうよマリシア。子供の元気は原動力と言っても過言ではないわ。子供が元気なら悲しい事も立ち直れる力を貰えるのよ?」
「悲しい事も……ですか」
「人生は山あり谷ありですわ。偶に休憩所があるくらいで、良い事も悪い事も交互にやってくるの。悪い事が起きた時は、少し冷静になって、自分と物事や相手との距離を見るのも大事だったりするのよ?」
「自分と、相手との距離ですか?」
「そう、どっちが優れているかなんて、たいした問題ではないのよ。子供は全員先生だもの。それに気が付かない者、自分と相反する人と仲良くするのは無理な話だわ。私だったら切り捨てるもの。それに、人に対して上下と言うのは命に対して失礼ですわ。確かに貴族の上下関係は大切ですけれど、わたくしはそう言う世界は嫌いですの。人は平等で在れともいませんけれど、他人を見下す人間は大嫌いですわ」
「まぁ、リディア姉はそうだよね。ボクもだけど」
「私も見下されてきた方だから、リディア姉の気持ちわかるわ」
そう語るのは元スラム孤児だったファビーとフォル。
彼らは見下される事の辛さを誰よりも知っている。
そして、元スラム孤児だった子供達は全員……誰よりもその辛さを知っている。
「子供に対して、どっちが優れている、どっちが劣っていると言うのは無いの。劣っていても劣ってなくとも我が子。それを分からない親にはなりたくはないわね」
「……リディア様は理想の母親になりそうですね」
「そうありたいと思うわ」
そう言って皆にノートを見せていると、マリシアはホロホロと涙を零し始めたわ。
一体どうしたのかしら……。
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何事もレッツトライ! と言うのが私のスタイル。
リディアちゃんもそのタイプの女の子と思いますw
それに、誰かの悩みに共感しやすいのもリディアちゃんの良いところだと思いますが
皆さんはどう思われるでしょう。
作者的にはロキシーも大好きです!!
何時も☆や♡など有難うございます。
とても励みになっております!
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