第210話 城からの大口依頼を片す。
早朝、皆が起きだして動き始める頃、ヒイラギさんがカイルに何かを伝えているのが見えましたわ。今日一日の動きの確認かしらと思っていると、顔を真っ青にしたカイルが私のもとへと駆け寄ってきましたの。
「リディア大変だ!」
「まぁ、どうしましたの?」
「城からの大口依頼だ、ダウンジャケット50枚、一人用炬燵200台、足は長いのが良いらしい。それと大きめの4人が座れるタイプの炬燵を3台、温熱ヒーターを20台、オイルヒーターを200台……らしいんだが」
「………それは、買い取りですの? レンタルですの?」
「ダウンジャケットは買い取りで、コタツ及び温熱ヒーターとオイルヒーターは借りたいそうだ」
「では、リース契約しましょうとお伝えして頂けるかしら?」
「リース契約?」
「ええ、長期間お貸しする場合は、リース契約の方がお安くなりますの。そうですわね……小さな炬燵は一カ月のリース契約で銀貨20枚、大きめのは一カ月で銀貨30枚、温熱ヒーターは一カ月銀貨60枚、オイルヒーターは一カ月で金貨1枚でどうかしら? ヒイラギさん、これをお伝えに行って貰う事は可能かしら? あとダウンジャケットは買い取りで一着銀貨30枚でしてよ」
「お伝えしてきます」
「それで良ければ契約しましょう。何カ月契約かも聞いて来て下さいませ」
「畏まりました」
「数は揃った段階で直ぐに城に向かいますわ。受け取りは誰になるのかしら?」
「もし本日中に出来ると言うのであれば、アカツキに預けて頂けたらとは思いますが」
「全て纏めて持って行きたいですから、作るのに三日ほど頂けるかしら?」
「では、三日後に持っていくと伝えます」
「お願いね」
そう言うとヒイラギさんは直ぐに行動し、わたくしは隣で聞いていたフォルに顔を向けると、頷きあいましたわ。
「ボクは何を作ったらいいでしょう?」
「大きめのダウンジャケットを50着お願い。あとは時間があればオイルヒーターと温熱ヒーターかしら」
「分かりました。三日後までに必ず作ります」
「わたくしは炬燵を一気に作りますわ。今回は毛布なども全て作らねばなりませんから、ロストテクノロジーで一気に作りましょう。わたくしが作り終わったら直ぐに手伝いに入りますわ」
「分かりました」
「では、腹が減っては戦も出来ませんもの。ご飯にしましょう! カイルは新しい焼肉屋で雇う調理師さんを多めに雇わねばなりませんので、研修先は王太子領の焼肉屋で、実践でやって貰いましょう」
「分かった。直ぐに雇ってくる」
「今日から牛丼屋の研修も始まりますし、出来上がった牛丼などは、広告として牛丼屋近くで売りながらの宣伝になさってとも伝えてね」
「ああ」
こうして、わたくし達は食事を終えると、直ぐに作業に取り掛かりましたわ。
言われた数だけのアイテムボックスを5つ用意し、それぞれにリボンをつけてアイテム名を記入。ロストテクノロジーがあっても数が多ければ作るのも大変ですし、フォルはまだまだ修行の身。それでもプレゼンの為に沢山作ったのでスキルも上がり、MPも増えてはいますけれどね。
「さぁ! 一気に作りますわよ! 今回の大口依頼ガッツリ稼ぎますわ!」
「リース契約ですからかなり安くはなりますけど、数カ月借りるとなると大きいですからね!」
「サービスの加湿器もつけましょう」
「かしつき……ですか?」
「冬場に水を入れて蒸気をだす物よ。喉が潤ったりして風邪予防になるの」
「それは良いですね!」
「そうと決まればドンドン作りますわよ!」
「はい!」
こうして、午前午後共に二人でドンドンアイテムを作り続け、まずは炬燵の土台は出来ましたわ。後は上に掛ける布団は明日作る事にして、加湿器をリースしてくださるお礼にと、5台用意する頃には夕飯の時間でしたの。
無論その間にヒイラギさんがやってきて、その契約で良いとの事だったので契約書を渡して契約はもぎ取ってきてましたわ。
そして隣で作業をしていたフォルは、何度かの温泉を往復しながらも、オイルヒーターは殆ど作り終えた様子。
「ところでリディア姉、不思議な事があるんですが」
「どうしましたの?」
「MP枯渇で筋肉痛になりながら温泉にはいるじゃないですか。その後のMPの増え方が凄いんです」
「まぁ! わたくしの時もそうでしたけれど、フォルも箱庭の神様に祝福を貰ったんじゃなくて?」
「祝福を……ですか?」
「ファビーもそうだけれど、わたくしと離れたくないとか、わたくしの専属になると思った子には祝福を与えているそうなの。昨夜結婚指輪を付けた時に分かった事なんですけれど、箱庭の子供たちには祝福を貰った子供達がとても多いのよ」
「そうだったんですね……知らなった」
「それに、今日元スラムの子供達に話がありますの。夜になったら皆さん集まって貰えるように伝えて来てくれるかしら」
「分かりました。ロックに話して皆を纏めて来て貰っておきます」
「ええ、赤ちゃんたちは眠らせていて構いませんわ」
「はい」
こうして夕食時、皆さんが食卓で楽しく会話をしながら食事をしていると、レインさん達も現われ、賑やかな食卓になると、今日のポテトサラダが美味いとか、ハンバーグは正義だと子供達が騒いだりと、幸せな時間を過ごしていましたわ。
カイルも戻ってくると食事に参加し、ゆったりとした時間を過ごしつつ食事を終えると、ロックが元スラムの子供達を連れてわたくし達の元へとやってきましたわ。
「リディア姉とカイル兄から話があるって言われてきたんだけど。一体どんな話があるんだ? まさか俺たちを箱庭から追い出すとかじゃないよな? 違うよな?」
そう切り出したロックにわたくし達が「全く逆よ」と笑いながら告げると、カイルは立ち上がり、元スラムの子供達に向き合いますわ。
そして――。
==================
本日二回目の更新です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます