第192話 新しい商売の草案と、ファビーの温泉で売る商品作り

その日、わたくしはアイテム倉庫の前で困っていましたの。

理由はそうね……大量にあるアイテムボックスや直ぐに売れるものではないアイテムの在庫の多さかしら。


売れるものはバンバン道具店サルビア等で売ってはいるけれど、大量に余ったアイテムボックス、テント用品の入ったアイテムボックスを前に、わたくしは一つの案を考え出しましたわ。


大型テントは100個単位で作り、小型の簡易テントセットは既に500を越えましたわ。

これを使った新たな商売、出来ないかしら?

となると、欲しいのはアレですわね、アレ。

そして商売とするならアレもしたいですわ。


そう思ったら作るのがわたくしのやるべき事。

『キーパージャグ』の大量制作ですわね。

年二回の行軍で、休憩所で飲むならコレがあると便利ですわ。

キーパージャグと言えば、幼い頃の夏場の運動を目的としたドッジボール等の際に、大人が持ってきていた記憶がありますわ。

結構な容量――8リットルは入る保冷も出来る優れもの。

売れなかったら売れなかったときに考えればいいですものね。

一つは余分に作って、ロック達の住む部屋に夜置いてきましょう。

それに冒険者や男性なら直ぐに取り出せるでしょうし。


そう思い、素材用アイテムボックスを手にして作り出すと、懐かしい感じのキーパージャグが出来ましたわ。

これも計100個作ったとして、売れるなら売る、売れないなら貸し出す方向で行きましょう。


そう――わたくしが考えた新たな商売、それは【レンタルショップ】ですわ!


ランクの低い方はアイテムボックスを手にする事も難しい。

冒険者レベルの低い方はこういったアイテムを使う機会すらないと言うのは大問題ですものね。

それに、アイテムボックスがあれば冒険者としての活躍も素晴らしくなりますし、本当に欲しいならポイントを貯めるか、もしくは購入と言う手もありますもの。

汚れ防止の付与も施せば何とでもなりますしね。

盗難防止としては、借りる際の魔法契約書と、もし奪われた際には、アイテムボックスが壊れる仕組みにしましょう。それも魔法契約書に書いておけば大丈夫ですわ。

庶民向けのレンタルサービスは今のところ案が出ませんけれど……まずは期間限定でやってみるのもアリですわね。

無論、テントなどの貸し出し案としては行軍が行われる時期に限りますけれど。



「と言う事で、レンタル店を期間限定でもやりたいとは思ってますの」

「アイテムボックスはそんなに余ってたのか」

「ええ、フォルが練習で作っている品が大量に」

「すみません、中々レアが出来なくて」

「分かりますわ。わたくしも大量に作りましたもの」

「一応一部は販売しているんだけどな、中々手が出せないアイテムなのは仕方ない」

「でも、アイテムボックスをレンタルなんて凄いじゃないか。アイテムボックスがない間はどうしても売り上げも落ちるからね。特にダンジョン外で活動している冒険者には喜ばれると思うよ」

「まぁ、まずは来週頭オープンのファビーの日帰り温泉が成功してからですけれど、進捗はどうですの?」

「はい! もうほぼ終わりました! フォルが頑張ってくれたおかげです!」

「色々考えて、バスタオルやタオルを忘れた方には販売もしようかと。無論別途お金は頂きますが」

「それでいいと思いますわ。他に男性が忘れて困るものって何かしら?」

「髭剃りだろう?」

「だな」

「ではフォル、髭剃りも忘れた方の販売用に作ってくださる?」

「分かりました」

「わたくしは女性用の化粧水と乳液を作りましょう。こちらは一応サービスで身支度の為に置かせて頂きますわね」

「ありがとうございます!」



そう言うとわたくしとフォルとでアイテムを作り始めたんですけれど――。



「待ったリディアちゃん、それ、箱庭の温泉で使ってる奴だろう?」

「ええ」

「ボクも箱庭で使っているボディーソープやリンスインシャンプーを作りましたが」

「ボディーソープは良いんだよ。問題は化粧水や乳液だね。効果が高すぎるんだよ」

「効果が……ですか?」

「そう、一度使うと病みつきになっちまうよ? 売ってくれって言う客も多く来るんじゃないのかい?」

「そうですわねぇ……。売ります?」

「売っちまおうか」

「ではファビー。あなたの温泉で売っても良いかしら?」

「はい! 売り場は作っておきますね」

「なる程、温泉宿限定の品にすればファビーの宿屋の」

「評判も上がりますわ!」

「有難うございます!!」



そう、わたくしの作る箱庭産の素材で作る化粧品は高価が高く、そして美しくなることから男性女性問わず人気が高い。

箱庭に住むお婆様達も、温泉後は肌の手入れに使っているほどで、最近は小じわも少なくなったと喜んでいましたわ。

また、わたくしがフォルに教えたボディーソープに関しては、お肌に使っても問題のない程のボタニカルなボディーソープ。

無論、リンスインシャンプーもボタニカル商品でしてよ!

今では髪が潤いサラサラになると評判の一品ですわ!



「そう言えば、男性用とか売らないのか?」

「俺達も風呂上りに使わせて貰ってるけど、アレ気持ちいいよな」

「香りがとても良いね」

「では、男性用の化粧水も用意しましょう。これも気に入ればファビーの温泉宿でしか買えない一品にすれば、男性客も買うでしょうし。冬はしっとり、夏はサッパリ系を売れば最高だと思いません事?」

「「最高だな」」

「爺様達は身体にも使ってるからな」

「それで減りが早いんですのね……」

「悪い、俺達も使ってたわ」

「あれ、体に塗ると良い香りがして気持ちがいいんだよね」

「もう! 大容量で作っておきますわ!」



こうして、温泉には大容量の男性用化粧水を三つ用意することにし、従業員も品物を確認して貰う為に一人増やすことにしましたわ。無論女性も脱衣所の化粧水の残量を確認するべく一人追加することになりましたけれど。

更に化粧水やバスタオル等を販売する場所にも人を三人程入れて貰う事にして、これで大体は大丈夫かしら。



「そう言えばファビーは年二回の行軍については、大丈夫ですの?」

「ええ、一杯お金を頂けるなら大丈夫です」

「そうね、お金は大事ね」

「はい! ただ、炊き出し用の場所が少ないのが難点なので、オープン前にもう少し箱庭を練ろうと思います!」

「ええ、外にある休憩所の真ん中をもう少し炊き出し用に大きくすれば問題なさそうね。後はわたくしがナカース王と交渉しますわ」

「お願いしますね!」

「ええ!」



ファビーも自分の誇れる箱庭が出来たことで引っ込み思案な性格が治ったようですわ。

あれ程の素晴らしい箱庭を持っているんですもの、当たりまえよね!

そう言えばそろそろ、子供用の身体に塗る保湿剤も無くなる頃ですし、更に作っておきましょう。

温泉宿にも子供用で置いておくと良いかもしれませんものね。

安心安全アレルギーも出ないとなれば、使う方も多いでしょうし。

使う際には文字が読めない方用に、子供の絵を描いて貰っておけば大丈夫ですわね。



こうして、皆さんで夜の話し合いが行われる中、黙々とフォルと一緒にアイテムを作り、男性用、女性用とのアイテムボックスに加え、子供用のアイテムボックスにも保湿剤を沢山作ったところで本日の作業は終了!

今日も一日よく働いたわ!



「来週オープンも間近ですけれど、楽しみですわね、ファビー」

「はい!」

「それまでにやらないといけないことのリストだけど、カイルが既にガーゼとママの店の従業員をゲットしてきたことと、ネイルサロンの従業員二人を雇ったこと、聞いてたかい?」

「ま! では急いで中を整えますわ!」

「うん、明日までに中を整えてれると助かるよ。カイルは明日二つの領の宿屋及び、庶民が使う公民館ってところにファビーの温泉宿までの道を作りたいそうだよ。ファビーはカイルが昼に呼びに来たらお願いできるね?」

「はい!」

「で、あっちこっちにカイルが温泉宿のポスターを作って貼ってくるらしいから。宿屋でもポスターを貼ってくれるらしいし楽しみだねぇ。後はネイリストも6名こっちに連れてくるそうだから」

「人の出入りこそどうなるかは分かりませんものね。ネイリストの事は分かりましたわ」

「温泉に関しては、男性の日は青の暖簾。女性の日は赤の暖簾を用意してます」

「なら大丈夫そうだね。ウッカリ女性の日に男性が入ってきても追い出せるようには一応しておいておくれよ?」

「はい! 設定は任せてください!」



箱庭の良い所は、任意で色々細かく決められる事ですものね。

知っている箱庭師の方が少ないんじゃないかしら?


何はともあれ、明日は急いで二つの店を作らねばなりませんわね!

明日は朝から急いで二つの店を作りますわよ!!





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本日二回目の更新です。

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