第125話 皆で食べる、安い、美味い、早い! 【牛丼定食】の破壊力。
夜、皆さんが帰宅してからと言うもの、それぞれの報告は驚かされるばかりでしたわ。
まずはカイルから。
アラーシュ様への報告を済ませると、その足でナカース国王陛下の元へと向かい、その日の内に技術派遣をお願いしましたの。
土地は既に購入したと告げると、国王陛下が出すはずだったお金は、別のサルビア案件に回す事となり、明日にでも技術者を派遣することが決まりましたわ。
そこで、解体をして貰っている間に森から木を伐りだし、空き地に持っていく作業が始まるのだそうですの。
樵も雇ったそうで、明日わたくしの箱庭に入れる限定のブレスレットを作る事になりましたわ。
これで焼肉屋に一歩近づきましたわね!
次に王太子領で商売をしているレインさん達からのご報告でしたわ。
王太子自ら問題ある貴族を集め、彼らを一斉検挙すると、鉱山送りにしたそうですわ。
仕事の速い王太子で今後は安心ですわね。
これで王太子領の治安悪化も少しはマシになるのでしょう。
わたくしも明日からは王太子領のお店の改造に勤しまなくてはなりませんわね。
最後にライトさんから、尋問の話を聞きましたわ。
ライトさんの年齢で尋問をするのは大変だったのではないかと皆さん心配しましたが、彼は笑って「心配しなくとも大丈夫ですよ」と言って下さいました。
また、裏の繋がりを教えて頂き、これはアラーシュ様にカイルが近々話に行くようですわ。
尋問内容については、書記官が後ろで書いていたようなので、今後は憲兵達が動き回る事になるでしょう。
また、行き場を失った彫金師や付与師がサルビアに押し寄せる事も視野に入れ、彼らの商品が如何にサルビアの品物に劣るかをシッカリみて貰う必要があるだろうと言う事でしたわ。
そしてわたくしから。
米が手に入った事で新しい商売が出来るようになったこと。
そして、娯楽の為に子供用ピアノとオルゴール、蓄音機をロストテクノロジーで作った事。
更に――。
「今日の夜は、そのお店で出すメニューの看板ともなります【牛丼】ですわ。【牛丼セット】で販売する時の品を皆さんにお出ししてみましたの。是非食べてみて下さいませ」
「これが」
「牛丼定食……」
「牛丼に味噌汁のスタンダードなセットですわ! 後はホウレンソウの御浸しをお付けしましたの!」
皆さん恐る恐るでしたけれど、一口食べると目を見開いてますわね。
そうでしょう、そうでしょうとも!!
牛丼とは正に、米と肉の共存体制!
旨味のある出汁も加わりご飯も肉も進むと言う画期的なご飯でしてよ!
ですが皆さん無言でかき込んでらっしゃいますわね。
途中途中で水を飲んでいらっしゃいますが、余程美味しいのでしょう。
「ハスノ、牛丼好き」
「ナナノ、味噌汁美味しい」
「私はこのホウレンソウの御浸しだったかな? 何とも良い味がするね」
「出汁の旨味がシッカリでてますの。美味しいでしょう?」
「ああ、これなら幾らでも入りそうだよ」
「牛丼おかわり!!」
「俺も!」
「私もです!!」
「今度はツユダクにしてみます?」
「「「ツユダクとは?」」」
「ご飯に汁を多めに掛ける事ですわ」
「「「お願いします!!」」」
ふふふ、普段大人しいタイプのライトさんですら牛丼の虜ですわね!?
味の染みた肉にこの旨味タップリの汁はたまらないでしょう?
ご飯にもその汁がたっぷりと……。
「本当に、こんなに美味しいとは思いませんでした」
「この牛丼の他に、豚丼と言うのもありますのよ。焼き鳥丼に親子丼もありますわね。全てお値段はリーズナブルで、美味い、早い、安いがモットーの食事ですわ」
「これなら忙しいけどガッツリ食べたい仕事をしている奴らもシッカリと食べられるな」
「カフェに飲食店に米専門店となると、住みわけが出来ていい。そこに最上級の焼肉な」
「焼肉にもこのご飯があると、また食事が進むんですのよ?」
「ああ、米とは偉大だったんだな、リディアが何時も欲しがっていたのが良く解ったよ」
「ご理解して頂けてよかったですわ。それとこちらはお昼に皆さんとで食べた【肉じゃが】なんですけれど、如何かしら?」
「シンプルに芋と肉と玉ねぎかい?」
「ええ、わたくしも食べてみましたけれど、とっても美味しいんですのよ」
そう言うと一人、また一人とお皿に肉じゃがを取り分け、一口食べると「ん―――!」と叫んでいらっしゃいますわね。
「凄い、味染みが凄い!」
「これは美味いねぇ!」
「ご飯が欲しくなります!」
「この様に、肉じゃが、牛丼と言ったものは、【和食】と呼ばれていて健康にも良いんですのよ? 特に太りにくいとされている料理ですの」
「そいつはいいねぇ」
「ハスノ、もう和食しか食べない」
「ナナノも」
「でも、米が美味しく感じるのはおかずが魚の時ですわね。今度作ってみますわね」
「焼き魚なら冒険者なら食べ飽きてるんじゃないのか?」
「あら、煮魚と言うものが御座いますわ」
「「「「煮魚」」」」
「骨は出来るだけ取っておきますから、食べやすいと思いますわ」
こうして皆さんとで和食の話や牛丼の話、更には新しい店の話もして盛り上がり、あっという間に寸胴鍋二つ分の牛丼が消えましたわ。
やはり牛丼とは正義でしたのね。
新たな正義の誕生ですわ!
「この牛丼……王太子領でも出せない?」
「今のところ焼肉屋で手いっぱいですから、その内出したいと思いますわ」
「じゃあ、焼肉屋が終わったら牛丼屋だね」
「米専門料理店サルビア!」
「俺はね、王太子領にも酒屋作って欲しい。んで、角打ち作って欲しい」
「イルノさんはお酒が好きですわね」
「いや、もう正直ダンノージュ侯爵領はパラダイスだろ!? 何で王太子領でも商店街作らないのってくらいさ!」
「それは、既にそちらに商店街がありますもの」
「角打ちが欲しいなら仕事が休みの時にダンノージュ侯爵領に行けば良いじゃないか」
「黙れ、甘党レイン」
「甘党と言えば、リディアがダンノージュ侯爵領に甘味処作るらしいぞ。甘いお菓子や飲み物が沢山らしい」
「リディア嬢、一つ提案なんだが、」
「焼肉屋が先ですわ」
「まだ何も言ってない……」
しょんぼりする雪の園メンバーを他所に、わたくしは笑顔で次の商売を考えますわ。
確かに王太子領にもあって損はないけれど、まずはダンノージュ侯爵領に作って、そこで研修をした方々が王太子領で先輩として指示をすると言うのは、大いにありですわね。
それに、ネイルサロンもダンノージュ侯爵領に欲しい所ですし、色々考える事は沢山ありますわ。
そう言えば――。
「カイル、そろそろ布製造所と石鹸工場から連絡はきていませんこと?」
「ああ、布製造所では残り50セットになったらしい。石鹸工場はあそこだけで王太子領とダンノージュ侯爵領の石鹸は賄えるまでにはなってる」
「早いですわね」
「人数が人数だからな、それに皆やる気が凄いらしいぞ。それに早めに依頼を終わらせて次の大口依頼を手に入れたいじゃないか」
「確かにそうですけれど」
「【ほっかり肌着】は王太子領では売れて来てるぜ。あっちはそろそろ季節が変わるからな。それに合わせて【ほっかり布】で作った【ほっかりシリーズ】が欲しいって言う話も出始めているから急いだほうが良いのは確かだぞ」
「むむむ……。布製造所をもう一つ作るべきかしら……でもそれだと困りますのよね」
「ああ、そう言えば王太子領の宿屋グループからの大口依頼があったんだった」
「「え」」
「【ガーゼシリーズ】の【ほっかりシリーズ】版が欲しいと言う案件なんだが、どうする? まだ返事はしていないのだけど、一先ず450セットだそうだ」
「カイル……工場増やしましょう」
「そうだな……増やすか」
「ガーゼシリーズもほっかりシリーズもだが、数年使えば買い替えもあるだろう? 特に宿屋は買い替え率が高いらしいからね。大体宿屋は一年に一回は買い替えしているらしい」
「直ぐには用意は出来ないが、まずは工場を増やしてからになると連絡をしておいてくれるか?」
「わかったよ。あちらもサルビアのオーナーは忙しいって知っているからね。無理は言わないだろうさ」
「助かる」
こうして、急遽工場を増やすことのなりましたわ。
まだまだ没落貴族女性は多いのですから、何とかなるかしら?
少なくとも、最初は裁縫スキル持ちと検品組を雇って、その後すぐに調理師スキル持ちやウエイトレスにウエイターを雇う準備をしなくてはなりませんわね。
でもわたくしも暇ではないし……今回はカイルにお願いしましょう。
「カイル、今回はわたくし店の内装工事がありますから面接はお願いしても?」
「分かった、工場やタウンハウスも何とかしてくるよ。新たに雇う裁縫師は100人規模で大丈夫か?」
「ええ、それで行きましょう」
「分かった。後はハウスキーパーと調理師を少しだな」
「本当にサルビアを見ていると、商売の大変さを身に染みて分かるよ」
「特にオーナーと副オーナーの忙しさは私たちの比ではないな」
そんな声が聞こえてきましたけれど、わたくしたちの頭の中は今後の予定が一杯で、返事をする暇がありませんでしたわ。
気合を入れて準備しませんといけませんわね!!
カイルに負けず頑張りますわよ!!
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お越しくださり有難うございます。
本日も一日三回更新です。
誤字が多いと思いますが宜しくお願いします。
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