第112話 求めていた人材確保!

――カイルside――



「カイルさん見つかりました! 陶芸師と建設師と炭師の方々が見つかりました!」

「本当ですか!」

「直ぐに面接を行いますか?」

「ええ、直ぐに!!」



思いがけず求めていた人材が見つかった様だ。

しかも全員神殿契約をしてくれるのだと言う。

直ぐに面接しなくては勿体ない事案だろう!!

急ぎ商業ギルドへと戻り、息を整えてからドアを開けると――求めていた人数分の建設師、陶芸師、炭師の人たちが佇んでいた。

しかも――全員女性だった。



「遅くなってしまい申し訳ありません。サルビアのオーナーカイルと申します」

「不遇スキルの我々を雇っていただけると聞いて……」

「今では建築士といっても建設するものも無く……」

「あの……私は炭師なんですが、本当に宜しいのでしょうか……」

「全員、是非我がサルビアに欲しい人材です。何よりも先に欲しい人材だったんです。皆さんは神殿契約を結んで頂けるとの事で、是非全員雇いたいと思います。また、あなた方の職場は箱庭になりますが宜しいですか?」

「箱庭……ですか」

「ええ、我がサルビアの箱庭師の箱庭には、沢山の方々が住んでいらっしゃいます。住人も増え、新たな建築が必要だったのです。そこで、今後も人が増える、もしくは新たな場所を買い取って作る事を考えた際、建築士がいた方が良いだろうと言う事になりました。もし仮に建築士で力仕事が厳しいと言うのであれば、現場を取り仕切る事で円滑に回す仕事でも構いません」

「大変ありがたい申し出です」

「女性の建築士とはどこに行っても弾かれるもので……」

「雇っていただけるのでしたら、なんでも致します」

「では、まず建築士の三人は神殿契約書をシッカリと読んでサインをお願いしますね」



そう言うと、三人の女性建築士たちに神殿契約書を手渡し、次に陶芸師に向きあった。



「お二人は陶芸師だそうで、あなた方には是非、先輩陶芸師たちと共に、今後沢山店をやることになっていますので、手分けして必要な食器類などを作って頂きたいのです」

「分かりました」

「どのような物でも作ります」

「時間が出来るようになれば、各々一品物の食器を作っても構いません。カフェで使いますし、場合によってはそれを売ることも出来るでしょう」

「「本当に有難いです!!」」

「問題が無ければ、神殿契約書を読んでサインをお願いします」



こうして、陶芸師二人に神殿契約書を手渡し、最後に炭師の二人に向き合った。



「お二人とも炭師としては、スキルはどのような感じでしょうか」

「村で毎日炭を焼いていたくらいで……」

「スキルは一般的な方と変わらないかと思います」

「では、即戦力ですね。現在箱庭には一人、男性で炭師がいるんですが、過労死しそうなくらい忙しいようなので、直ぐにお手伝いをして頂けると助かります」

「炭師が」

「過労死しそうなほど忙しいんですか?」

「ええ、今度作る焼肉屋は炭を沢山使いますから」

「分かりました」

「是非円滑に作れるようにお手伝いさせて頂きます」

「では、お二人にもこちらの神殿契約書をお読みになってサインを」



――こうして、無事欲しかった建築士が三人、陶芸師が二人、炭師が二人雇えることになった。

必要最低限の荷物は持ってきて貰っていた様で、直ぐに契約を済ませると神殿契約書をギルド職員に神殿に持って行って貰う様頼み、彼女たちを連れて箱庭へと戻った。

案の定、全員固まった。

せめて、陶芸師は先輩陶芸師に挨拶を、そして炭師も先輩炭師に挨拶をと思い、そのまま山へと向かい、まずは炭師のナーガさんのもとへと向かった。



「ナーガさん」

「はい!」

「この度、新たに入った炭師のお二人です。先輩として導いてあげてくださいね」

「女性ですか?」

「ええ」

「ですが、」

「女性と言えど、村では毎日シッカリ炭を焼いていました」

「スキルもそれなりにあります! どうか、ご教授をお願いします!」



有無を言わさぬ彼女たちの言葉に、ナーガさんは炭だらけの顔や手をそのままに、少し呆然とした後立ち上がると、「厳しくいきますが、宜しくお願いします」と告げ、彼女たちは大きな声で「はい!」と告げていた。

これなら上手くいくだろう。



「荷物は先に持って行きますか?」

「いいえ、ナーガさんと共に後で向かいます」

「これだけの炭小屋を一人で回すのは自殺行為です。直ぐに手伝います!」

「ありがたいです! お願いします!」



こうして、女性二人はそのままナーガさんに付き、炭師としての仕事を始めた。

その様子をにこやかに見送った後、二人の陶芸師を先輩陶芸師たちが入る場所へと連れて行くと――。



「陶芸師に女も男も無い。そこにあるのはセンスがあるか無いかだ」

「お前さん達のセンスはどんなモノかは気になるが、まずは皿とコップ作りを手伝って欲しい」

「お前さん達の美的感覚は後で教えてもらう」

「分かりました!」

「是非、お手伝いします先生方!」



どうやらこちらも上手くいきそうでホッとする。

最後の建築士の三人は山の木を見てウットリとしていた。



「なんて素敵な山」

「なんて素敵な木」

「これらの木材を使って家を作れたらどれだけ……」

「いえ、貴女方が使うのはここの木材です。図面が既に居住エリアに置いてありますので、是非一緒に行きましょう。後はどこにアパートを作ればいいか、長屋を作ればいいか等計算しながら作ってくれると助かります」

「「「了解です!」」」



こうして、居住エリアについて三人は暫く固まったままだったが、直ぐにハッとしたらしく、立っているアパートや長屋に作業小屋を見て、なにやら考えている様子。



「これは」

「色々やりようがありますね!」

「楽しみです!!」

「宜しくお願いしますね。図面はコチラになります」



そう言うと休憩所の棚に丸めていた図面を見せると、三人は色々専門用語を語りだした為、後は任せることにした。

すると――リディアが俺達に気が付きやってくると、既に陶芸師と炭師は働いている事、案内はまだできてない事、住民への挨拶もまだであることを伝えると、拡声器にして今回一緒に働くことになった方々が居る事や、既に働いているので夜に挨拶をすることを連絡すると、俺もホッと安堵の息が吐けた。



「お疲れさまですわね、カイル」

「ああ、やっとここまで漕ぎつけた」



――現在、『サルビア布製造所』と『石鹸工場』が稼働しはじめ、店の内装もこれから俺達でスタートする。

そして、出来るだけ王太子領にいる事から、ジューダスの所から定期的に人を保護することも出来るだろう。

そして一週間後には調理師やウエイトレスやウエイターを一気に雇い入れ、研修を少しだけ入れた後、一気にオープンへと向かわせることができる。


問題は調理師やウエイトレスやウエイターに、どんな人材がくるかだが。


昼食も忘れ、朝からひた走った俺は少し疲れが出ていたものの、今日だけは特別に休んではどうかと言われて苦笑いが出た。

確かにここ最近とても忙しかったこともあり、少しだけ休みが欲しかったところだ。

夜には各場所からの報告書も届く、それまではひと眠りさせてもらおうと決めた。

まぁ、その前に温泉に入って身体を休めてからだが――。



「カイル様、リディア様、宜しいでしょうか?」

「ん?」

「何でしょう?」

「今から木材の伐採などを行いたいと思いますが、許可はどうすれば宜しいでしょうか」

「ああ、それでしたらわたくしが一緒に行きますわ。木材や畑に関しては必ず通さねばならない相手がいらっしゃいますので、その方の紹介も致します」

「「「有難うございます!!」」」

「また、アパートや長屋は釘を使いませんが、大丈夫ですか?」

「「「最初に習うのがそのやり方ですのでシッカリ覚えています」」」

「では、向かいましょうか。カイルは少し休んできてくださいませ」

「ああ、そうさせてもらう。皆さんもあまり無理を為さらないよう頑張ってください。力仕事が必要でしたら、遠慮なく男性陣に声を掛けると良いですよ」

「「「はい!」」」



こうして、俺は一人温泉にゆっくり浸かってから夕方まで眠り、本当に最近は疲労困憊だったんだなと思いつつも夜には報告を聞くことになったのだが――思わぬ事が起きていた事に、俺は頭を抱える羽目になる。





=============

一番欲しがっていたスキル持ちをゲットだぜ!

これでブラック状態だった陶芸と炭師がホワイトになれる……。

頑張って欲しい人材集めようにも、いないからこそブラックになると言うジレンマ。

世のブラック企業は滅せればいいけどね!


いつも♡や★等有難うございます!

とても励みになっております!

頑張って一日三回更新出来るように頑張ります。

読者様が楽しんで頂けたら一番ですが、そうだといいな!

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