第107話 カイルの、大規模な大人買い。

――カイルside――


王太子領となったこちら側の商業ギルドへと向かうと、俺の姿を見た職員が急いでやってきた。何時も俺の担当をしてくれる人だ。



「ようこそお越しくださいましたカイル様」

「今回は色々と買いたいものがある。それに雇いたい人材も豊富だが良いでしょうか」

「無論です! どうぞこちらへ」



そう言うと違う個室へと案内され、中に入ると、どう見てもVIP室と言うかなんというか、あれこれ考えるのは止めにした。



「それで、今回色々と買いたいものがあるそうで」

「ああ、冒険者ギルド寄りの方に一軒、大きな店が欲しい。それと、一般市民が多く住むエリアにも一軒大き目な店が欲しいな。料理を出せるような大きな店だ」

「となると、広さ的にはどの程度のものでしょうか」

「広さは酒場くらいの広さがあると嬉しい。二階建てでなくてもいいが、出来れば平屋ではないか?」

「ええ、それくらいの広さになりますと二階建て三階建てが主流でして」

「では、二階建てでお願いします。冒険者ギルド近くだと三階建てで」

「それでしたら、元貴族のお店が幾つか御座います。冒険者ギルド近くに一軒と、こちらの庶民用の商店街近くに一軒ありますが、如何しますか?」

「その二つを買わせてもらいたい。中は綺麗なままなんだろう?」

「はい、綺麗な状態で保たせて頂いております」

「内装は今は仕事が無い奴らも多いと聞いた。両方一階に大きな厨房部屋を作りたいから水道関係を頼みたい。あとは厨房が見えない様に仕切り板を」

「畏まりました」

「それと、その店では肉を沢山使いたいんだ。貴族が少なくなって問題になった牧場をサルビアで契約したい。そちらも頼めるか?」

「それは何とありがたい!! 肉を卸す場所がなくて牧場も困っていたようなのです」

「じゃあ、牧場に現在肉にしたいけど困っていると言う場合は、時間を止めるアイテムボックスを渡すので、そちらに入れて貰えたら助かります」

「分かりました。伝えておきます」

「牧場まで行く時間がなくて、仲介料を多めに取っても良いから商業ギルドに頼みたい。良い牧場との契約を期待している」

「畏まりました。牧場は幾つくらい契約なさいますか?」

「そうだな……ダンノージュ侯爵領でも頼むことになるから、出来れば三つから四つ」

「嬉しい事です。是非お願いします」



焼肉関係は此れで良さそうだな……肉の確保も出来た。



「次は『サルビア布製造所』を作ろうと思っている。大きな倉庫がついているような工場が欲しいんだが、ありそうか?」

「御座います。商売に失敗した貴族様が沢山いらっしゃいますので」

「じゃあ、タウンハウスに近いエリアに大きめのはあるか?」

「二つほど」

「では、その二つを契約したい。一つは先に言った『サルビア布製造所』用なんだが、もう一つは『石鹸工場』を作りたいと思っている」

「石鹸……。私たちも使わせて頂いています。あれは実に良いものです」

「有難うございます。この王太子領でもダンノージュ侯爵領でも全員に広まるように作っていきたいので、消耗品ですし工場が欲しかったんですよ」

「なるほど、解かりました」



工場は何とかなった、一番のネックは雇用問題だな……。



「雇用問題だが、『サルビア布製造所』では裁縫スキルを持つ没落貴族を多数雇いたいと思っている。作るのはガーゼシリーズや寒くなってくる今からの時期の『ほっかり糸』なんかを使って作る、布製品が主だが、服も同じように作りたい。多くの従業員を雇う事になりそうだが、裁縫スキル持ちは今ここにどれくらい登録されている?」

「そうですね、元貴族の女性にとって裁縫スキルは必須といっても過言ではありませんので、100人くらいはいらっしゃるかと」

「うち、やる気のある者を厳選して雇いたいと思っている。面接はするが、後日纏めてやりたいと思っていることを伝えて欲しい」

「畏まりました」

「あとは手先が器用な者ならスキルは関係なく20人は雇いたい」

「分かりました。こちらもやる気がある方ですね」

「ああ。それと、商品の検品係りで30人、こちらは働けるのなら老人でも構わない。やる気があるなら雇いたい」

「分かりました」

「石鹸工場に関しては、力仕事になる。没落貴族の男性でやる気がある奴らを合計でまずは50人」

「50人も雇って貰えるんですか。男性が兎に角多くて困っていたんです」

「だろうな……仕事にやりがいを感じるような奴が欲しい。工場なんて嫌だと言う奴は要らない」

「畏まりました」



焼肉店で思い出した、言い忘れていた事があったな……。

数が多いと色々と忘れがちになっていけない。



「あとは、屋敷を追い出されたハウスキーパーと、調理師も雇いたいと思っている。ハウスキーパーはコチラで雇用する方々を、タウンハウスを買い取って寮として住んでもらおうと思っているんだが、その家の掃除を頼みたい」

「分かりました。タウンハウスも購入ですね」

「ああ、かなり多くなるが大丈夫か?」

「お任せください。大量にタウンハウスも売りに出ています。格安です」

「それは助かる」

「調理師は何人程雇いましょうか」

「料理屋でまず欲しいのは、調理師が各店舗で20人程。出来ればもう一か所店を用意している所なので、調理師は50人程いると助かる。あとは店内で働くウエイトレスやウエイターが各店舗で80人欲しい。またタウンハウス用の調理師も各場所5人、ハウスキーパーは洗濯や掃除が出来る者をタウンハウスの大きさにもよるが6人から10人は雇いたいところだ」

「カイル様」

「ん?」

「もし仮に、それらの殆どを元貴族で雇っていただけるのでしたら……」

「出来れば元貴族で雇いたいと思っているが、ウエイトレスやウエイターになりたいものは少ないんじゃないか?」

「いいえ、メイドとして働いていた者たちも多いので助かります」

「なら問題はなさそうだ。あとは見つけるのが難しいだろうが、建築士を3人、陶芸師と炭師を2人ずつ雇いたい」

「頑張って見つけてきます」

「出来れば建築士と陶芸師と炭師を早めに頼む」

「畏まりました」

「まず、一通りの計画をする為にも、場所の確保が先決だ。貴方は信用が出来る相手だと思っている。その信用を買って、従業員として雇う人数が住めるだけのタウンハウスの購入もしたい。仮に既に家を持って家庭がある者は別に住んで貰って構わないと伝えておいてくれ。独身寮として使いたいからな」

「畏まりました」

「で、トータルで購入する金額は幾らになる?」

「大型倉庫つきの工場が中古で早めに売り出したいので、各金貨100枚。店舗に関しても同じく金貨100枚。タウンハウスは一軒についき金貨30の所から50枚までのところですね……。タウンハウスが多くなりますが宜しいのですか?」

「構わない。サルビアは働く者たちの衣食住を重んじるからな」

「畏まりました。それですと、合計780枚の金貨となりますが」

「一括で良いか?」

「無論です!」



そう言うと、俺は鞄から金貨780枚に色を付けて800枚の金貨を手渡した。

担当者は「流石カイル様です」と言ってたが、稼いだのはサルビアの仲間たちの力あってこそだ。

彼らに感謝しなくてはならないな……。



「まずは先に言った建築士を3人、陶芸師と炭師を2人を先に雇いたい事と、工場と飲食店に関しては用意が出来る頃に面接を行いたい。面接は人数の多さから丸一日掛けて、3日に分けてやらせてもらいたいところだ。出来れば選別はそちらでもしておいてくれると助かる」

「畏まりました」

「建築士、陶芸師、炭師は見つかり次第、道具店サルビア経由で連絡をお願いしたい。伝える時は急務案件だと伝えてくれ」

「はい」

「その三つの職業の方々は、箱庭で生活して貰う予定だから、神殿契約が出来るかどうかも頼む。神殿契約が出来ない奴は雇えない」

「畏まりました」

「何分人数も多いが、頼みます」

「お任せください。毎日のように仕事が無いかと聞きに来る元貴族様が多すぎて、商業ギルドでも困っていた所なんです。本当に助かります」

「ああ、それとタウンハウスは出来るだけ」

「ええ、お店に近いように選ばせてもらいます」

「頼みます」

「では、直ぐにお店の改造を始めましょう」

「ああ、牧場ともよろしく頼む。アイテムボックスは後で届けさせる」

「畏まりました」



――こうして、大口の雇用契約が何とか進みそうだ。

工場に店も何とか手に入れることができたし、治安もこれで少しは改善するだろう。

店舗は工場が二つ、焼肉店が二つ、ジューダスの店はカフェにするから少し改造が必要だろうが、何とかなりそうだ。出来るだけ店内で食べるよりは、ダンノージュ侯爵領でやっている朝のモーニング方法で行こう。


雇いたい人数としては、裁縫師が100人、検品の人材が30人。手先が器用な人材が20人。

石鹸工場に男性でまず50人。

調理師は50人に、タウンハウス用に24人、ウエイトレスやウエイターが合計80人にハウスキーパーは24人程度。

ゴッソリと元貴族、または貴族の屋敷から追い出された料理人が手に入る計算になる。


問題は、誰をリーダーにするかだが、それは人材を見て決めても良いだろう。

その他大勢は沢山いるが、リーダーには向き不向きがある。

纏め上げ役と言うのは、いつでもどこでも不足するものだ。


あとは研修してどれくらい動けるようになるのかにもよるが、まだまだ時間がかかりそうだ。

そう言えば今日は朝からカフェの内容だった。

早めに帰らなくては昼のダンノージュ侯爵領で出しているランチ試食会に間に合わない。

そして夜は焼肉だ。一体どんなものなのか気になって仕方がない。

先に決めてしまったが、リディアは勝ち戦だと言っていたから大丈夫だろう。



――こうして、商業ギルドでの問題を片づけた俺は急ぎ箱庭に戻ると、ポカーンとしている雪の園メンバーと朝の露メンバーと遭遇したのだが……箱庭がレベルアップした事だけを告げると無言でうなずいていた。

さぁ、お楽しみの昼食会だ。

楽しみだな!!




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お越しくださり有難うございます。

本日も一日三回更新です。

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