第50話  箱庭師は相変わらず引き籠り生活を送りなが激務な日々を送る。

ダンジョンの活性化は不安要素ですけれど、出来る限りの力で回復アイテムや傷薬、MP回復ポーション等も作りまくり、更には護符も力の限り作った結果、少々余りが出るようになってきたのでホッと一息を付けるようになりましたわ。

カイルの話ですと、三か所のダンジョンは随分と奥まで進んだようで、魔物も徐々に減りつつあるのだとか。

それでも、昔の王国時代には三つのダンジョンから同時にスタンピードが起きた場所。

何が起きるか分からない為、冒険者も、騎士様達も必死なのだとか。


聖水に関しては、国王陛下の命令で街の道具屋からも作れる者は率先して作り、朝一番に冒険者ギルドから派遣される方に聖水を渡す方法をとっていますが、回復アイテム等に関しては、道具屋は冒険者に寄り添うべきと言う判断がされた為、教会が一手に騎士団への回復アイテム等を作っていると言う話でしたわ。


建国記念日まであと三カ月。

それまでに鎮静化できなければならない為、多少の無理をしてでも鎮静化をしているそうですわ。


国が、騎士が、冒険者達がバタバタと忙しく動く中、身近で冒険者と接している国民は不安のようですが、貴族はと言うと、結構ノンビリされておられます。


既に劇団ヒグラシの上演が始まり、ダンジョン活性化による公演日数の短縮はあったものの、主要メンバーである50人の遠目から見ても分かる輝く爪に、潤った唇を見た貴婦人たちは、挙って何処で手に入れたのか聞き出したらしく、日夜ネイルサロン・サルビアには使いの方々が来ては透明グロスを購入していったり、サルビアでしか買えないアイテムを競い合うように買って行くのだそう。



「リディア様、宜しいでしょうか?」

「どうしたの? ナルタニアさんにダルメシアンさん二人が来るなんて珍しいですわね」

「はい、コロンの在庫がほぼ消えつつあるのと……」

「ネイルを売れと言う貴族が多くいらっしゃって」

「ああ……」



そう、今一番の問題は、手軽に自分たちでもネイルがしたいと言う貴族達からの要望の多さですわ。

毎回お断りしてますが、中々聞き入れない貴族もいらっしゃって対応に困ってしまいますわね。

その上、ネイリストを此方で用意するから修行させろと言う方もいらっしゃいますし、我が家のネイリストを買おうとする貴族まで幅広くいらっしゃいます。

さて……どうしたものかしら。



「ネイルは売りに出していない事を再度通達してくださる? 後は、予約を為さってくださいとも」

「それが、半年先まで既に予約が一杯なんです……」

「このままですと、一年先まで予約で埋まる事も視野に入れなくてはなりません」

「むむむ」

「そろそろ人を増やした方が良いと思います」

「俺もそう思います」

「そうですわね……今日皆さんが帰宅為さったら相談しますわ」

「「宜しくお願いします。あとコロンもお願いします」」

「あ、はい」



こうして、最近は午前は冒険者用のアイテム作り、午後はネイルサロン用のアイテム作りに励んでいる日々。

それにしても、そろそろ本格的に新しいネイリストの募集をしなくてはなりませんわね。

けれど、神殿契約までしようと言う方は少なく、やはり見つからないのが辛いところ。

何処かで多めに雇う事が出来れば違うんですけれど……中々見つかりませんわよね。

各種のコロンを大量生産しながら、今後の人員の見通しの立たなさに悶々としていると、作った端からナルタニアさんとダルメシアンさんがアイテムを取りに来ては売りに行っている様子。


お金が溜まったら次の店舗……なんて言っていた頃が懐かしいですわ。

今では人員確保に悩んでいるというのに。

どこかのタイミングで、ある程度折り合いをつけて確保すべきですわね。



それでも忙しい日々はある程度すると慣れるもので、相変わらずネイルを売って欲しいと言う声が多い中、ついに一カ月公演だった劇団ヒグラシの舞台も終わると、ネイリストの皆さんにも多少の余裕ができ始めたようですわ。


いくらレベルの高い三人の護衛がいるとしても、今ではネイリストと言うだけで価値がある存在になっている為、狙われる事も多いのだとか。

付加価値をつけすぎた気がしますが、これも身を守る為の手段……実家である公爵家にわたくしの存在が見つからない様にしなくてはならない為、皆さんには辛い思いをさせてしまいますわね……。



「劇団ヒグラシから、一カ月公演でも貴族達が押し寄せてきて、ネイルの情報や透明グロスの情報を教えてくれたお礼にと結構な額を貰ったらしくてね。こっちにも『お気持ち』とやらがきたよ」

「まぁ!」

「凄いんですよ! 金貨20枚入ってました!」

「まぁ!!」

「団長さん、幾らもらったのか知るのが怖いな」



あれからと言うもの、カイルの好きな女性捜しをしてますけれど、未だに誰が好きなのかハッキリ分からない日々を送っていますわ。

それでも、カイルなりに好きな女性と過ごした時にスムーズに動けるように訓練なさっているのでしょう。

最近はわたくしを膝の上に座らせて話をしていることも多くありますわ。

流石長男。

動きがやたらとスマートですの。



「それで、今日はリディアの方は何かあったか?」

「ええ、ネイリストを増やして欲しいと言う要望がナルタニアとダルメシアンから。それと貴族が大量にアイテムを購入していくみたいで在庫があっと言う間に無くなると」

「そろそろ本格的に新しい人員確保に動かないとな」

「そう言っている所で悪いんだけど、ちょっといいかい?」



わたくし達が話していると、今度はロキシーお姉ちゃんが手を挙げて申し訳なさそうにしてますわ。

一体どうしたのかしら。





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本日も安定の一日三回更新です。

宜しくお願いします。

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