第114話

スカーレットが放った火の鳥と、バイオレットが放った死の炎がぶつかり合うかと思った時だった。その間に、銀色の光が輝いたと思ったら、そこに一人の影が現れる。



「ふははは、私の存在を忘れてもらっては困る。風よ、わが身に加護を与えん!!」



 隠ぺい魔法を解いたダークネスだった。彼は左右の剣にそれぞれの魔法を奪うようにして纏わせ、そのままアムブロシアへと飛ぶかかるようにして斬りかかる。



「はっ!! お前の攻撃なんざもう見切って……」

「それは私が魔法がつかっていない時の話だろう? 今の私は誰にもとめられぬ!!」



 そうして、いつの間にか身体能力を魔法であげていたダークネスとアムブロシアが斬り合ったように見えた。俺にはそうにしか見えなかったのだ。



「ぐはぁ……」



 一瞬あとにアムブロシアが血を巻き散らして、倒れる。しかも、それだけではない。彼の切り傷からは、すべてを焼き尽くす二種類の炎が燃え盛っていた。

 治療するまでの間、彼は体を焼き尽くす痛みにさいなまれるだろう。これで無効化したはずだ。そして、ダークネスが戦っている間にも俺たちはバイオレットの元に駆け寄ろうとして……



「「うう……」」



 すでに死んでいたはずのバイオレットの部下たちが立ち上がって襲い掛かってきやがった。バイオレットの闇魔法で死者をアンデッドにしたのだ。



「こいつらうざってええな!!」

「斬っても斬っても起き上がってくる!! なんなのよ、こいつら!!」



 動き自体は遅いがダメージが通っていないのか攻撃をしても攻撃をしても起き上がってきやがる。そして何とか細切れにした時に、バイオレットと目があって彼女はにやりと笑った。

 嫌な予感しかしない。



「影の腕よ、我に従え!!

「ヴァイス様!! アイギス様!! 私の背中に隠れてください。結界よ!!」



 それは圧倒的なまでの影だった。俺がつかっている初級魔法と同じなのにレベルが別物だった。まるで巨大な樹木のような腕がゾンビと化した部下を蹴散らしながら俺たちに襲い掛かる。



 くっそ、だから、こいつと真っ当に戦うのは嫌だったんだよ!!



 ロザリアが張ってくれた結界により、影の腕の攻撃を何とか防ぐことはできたが、ダークネスたちは大丈夫だったかと後ろを見ると、彼に抱きかかえられて赤面しているスカーレットが目に入った。

 こんな状況なのに、何ラブコメやってんだ?



「流石にこの程度じゃ倒せないか……それにしても情けないわね……」

「うがぁぁぁあ、ああ、生きているって感じがするぅぅぅ」



 バイオレットが影の手で握りしめているアムブロシアに軽蔑の視線を送る。どうやらあの腕はやつを助けるのが目的だったようだ。



「ちょうどいい、スカーレットよ、彼女に話したいことがあるのだろう?」



 俺たちの横におりてきたダークネスがスカーレットを地面におろしながらそんなことを言った。それに対して彼女は少し緊張して頷いた。



「え、ええ……」

「ふぅん、久しぶりね、一体どんなお話があるのかしら?」



 そうして、ゲームではおきなかった再会を果たしたのだった。




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ダークネスさん活躍!!




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