第231話 コルテレ到着

 

 てな感じで、弥生の末。

 レオナルドとレナに見送られて、ジェラルド、ナルミさん、ディアス、ラウトと共にソーフトレスとコルテレへと発つ。

 持っていく石晶巨兵クォーツドール地尖チセンと量産型の気焔キエン

 地尖チセンはジェラルド、気焔キエンはナルミさんが乗っている。

 ナルミさん、操縦できたの……と思うだろ?

 俺も思ったよ。

 でもそもそもナルミさんが研究塔を造ってるので、操縦も最低限はできるらしい。

 戦うのは無理って言ってたけど。


『ヒューバート』

「あ、はい? なんですか、ディアス」

『徒歩で行くのは面倒なので、石晶巨兵クォーツドールたちを抱えて飛んでもいいだろうか?』

『賛成』

「え」


 ——と、いうディアスとラウトのお願いにより、地尖チセンは一号機に、気焔キエンは飛行練習も兼ねて俺が運んで飛ぶこととなった。


『ソーフトレスとコルテレはミドレ公国のさらに西だったか』

「うん。そう」


 ラウトの言葉に頷く。

 ちょうどミドレを通り過ぎたところだ。

 ソーフトレスとコルテレは、かつて西方諸国と数えられていた国々である。

 ミドレよりさらに西にあり、元々はそれなりの広さを持つ同盟国同士であった。

 今は亡き西方諸国の多くの国々は、滅びるその瞬間まで戦争をしていたらしい。

 だが、千年前軍事国家であったアスメジスア基国を祖とするのであれば、ある意味その血が正しく受け継がれている——のかもしれない。

 そうして上空を飛ぶこと約八時間。

 おそらく俺の飛行が下手くそでとても気を使われたと思うが、なんとか森林が見え始めた。


「ここがコルテレか」


 ザクザクと結晶化した大地クリステルエリアの地面が波打っているのだが、多分森林続きだったのだろうな。

 コルテレからさらに北西がソーフトレス。

 森林を進んでから、今度は山。

 緑が豊かな国だなぁ。


『なるほど。ダイグロリアの名残が残っているな』

「そうなんですか?」

『ダイグロリアは海沿いで、海産物の他に海風から土地を守る山が多かった。……どう思う、ラウト』

『残っているだろうな……』

「な、なにが?」


 ディアスとラウト——元アスメジスア基国国民にしかわからない会話やめて!

 気になるんですけど!

 怖いんですけど!


『ハニー・J・ヘリス……ダイグロリアの都市長だった女が、山に大量破壊兵器を秘密裏に製造して隠していた——という話があるんだよ』


 二人の代わりに教えてくれたのはナルミさん。

 え、つまり、俺たちが今見ているあの山?


『待て。熱源反応が多数。山を跨ぐ前に一度降りよう』

「あ、は、はい!」


 ディアスの提案にゆっくりその場に着地する。

 ナルミさんに「へえ、上手く降りられたじゃない」と褒められた。

 や、やったぁ!

 上手に着地ができたぞぉ!

 じゃ、なくて!


「えーと……」

『熱源反応って、[索敵]魔法で感じるこの人間の反応?』

「うん。でもちょっとそれだけじゃないんだ。ごめん、ジェラルドちょっと待ってて」

『うん、待ってる』


 石晶巨兵クォーツドールと魔法ではわからない、熱源反応探知。

 ギア・フィーネだと人間かロボットかそれ以外とか、色々わかる。

 山の向こう側は多分軍のキャンプ地になっているみたいだ。

 難民ではない、と判断した理由は馬の反応が多いため。

 難民ではこれほど多くの馬の反応は感知できないだろう。

 それに、山の中にも見張の兵のような反応が点々としている。

 それによると山の中は十階建ての建物のようになっていて、その中も人が歩き回っているみたいだ。


「ディアス、これって俺たちの存在も向こうにバレてる可能性ありません?」

『どうだろうか? 現代人がこの規模の施設を使いこなせるだろうか?』

『さぁな……ルオートニスの技術力を思うと、不可能に思うが』

『そう? 私は可能性があると思うよ。腐ってもアスメジスア人の末裔だろう? 認めるのは癪だけど、アスメジスア人とカネス・ヴィナティキ人は優秀だからね』


 なるほど。

 基本スペックがジェラルドばっかり的な感じか。

 それは、ヤバいな。

 それなら確かにこっちの存在がバレてる可能性もあるのか。うーん。


『ギア・フィーネは感知されていないかもしれないけれど、石晶巨兵クォーツドールはバレてるかもよ』

「無視して進みますか」

『それもそうだな。どちらか片方に肩入れするつもりはないのだろう?』

「はい。俺の目的はあくまで両国に休戦してもらい、石晶巨兵クォーツドールへの技術提供と和平条約の締結ですから」

『ならばもうトニスとの合流地点に行くか』

『そう、だな……山の中というのが気になるが』

『まあな。だが、使いこなすにもエネルギーが足りないだろう。今は気にすることはない……はずだ』

「も、ものすごく含みのある言い方だなぁ。ここの兵器ってそんなに危険なの?」


 二人の様子がなんとなく不穏。

 もし使えるのなら、なんとかしておいた方がいいのかな?

 戦争で使われたら危ないかもしれないし?

 でもなんとかできるかな?


『そうだな。危険なものだ』

『衛星兵器だからな』


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