第191話 ひとまず落着!

 

「陛下、反乱兵どもはすべて拘束、収容いたしました」

「うむ、あとは騎士団長に任せるとしよう……」

「はっ」


 いよいよ一件落着かな。

 エドワードを預かるのはマジで不本意な結果。


「俺たちも一度城の中で休ませてもらおう。技術者との話し合いはそのあとで」

「そ、そうですね」

「ヒューバートさま、おとうさまをなおしてくださるおいしゃさまは、いつきますか?」

「あ、その前にディアスに連絡しなきゃ。これからご連絡しますので、二、三日お待ちください」


 ギア・フィーネのスピードなら一日二日飛べば着きそうだけど、別にそんなに急いで来なくてもね?

 というか、ルオートニスから石晶巨兵クォーツドールで二週間走る感じで着くハニュレオって何キロぐらい離れてるんだろう?

 地球よりもこの世界は小さい?

 カネス・ヴィナティキ帝国は国土が一番広いって聞いていたけど、具体的な世界の広さがい未だに分からない。

 ソードリオ王には「国民が行き来するようになれば」とか言ったけど、交通手段とかも確保しなきゃいけないしね?


「レナ、ちょっとディアスに連絡してくるね」

「わかりました! わたしたちはこちらで待機しておりますね!」

「いや、ジェラルドと技術者は先に話を進めてていいよ?」

「そうですか?」


 レナ、なんでテンション上がってるんだろう?

 あ、ああ、ソードリオ王の治療の話になっていたからか。

 レナも大概“人を癒す”ことに、なんかこう、信念というか執念というか、その手の話大好きだもんな。

 とても期待に満ちた顔をしていたけど、まずちゃんとディアスが来てくれるかどうか。

 イノセント・ゼロに乗って、通信を開く。

 応答してくれるだろうか?


「ディアス〜、ディアス〜」

『なんだ?』


 意外とあっさり通じた!?


「えーと、かくかくしかじかでハニュレオの王様の治療をディアスにお願いしたいんだけど、今から来れない?」

『横着するんじゃない』

「う」

『だが、治療が必要な患者がいるのなら行くのは構わない。もう少し詳しい症状を教えてほしい』

「え? えーと……よく分からない。高齢者だから」

『むう……高齢者か。この時代の高齢者となると……』


 なんか色々しててくれてる。

 全然症状とか聞いてなくて申し訳ない。


「あ、あと」

『なんだ?』

「二号機の登録者と、共和主義連合国軍の“歌い手”、デュレオ・ビドロと会った」

『! ……生きていたのか』

「なんかもう、デュレオ・ビドロの方は人外だった」

『は?』

「俺もよくわからないんだけど、不老不死なんだって。何回も死んで、生き返ってるのを見た。ナルミさんの方が詳しいみたい。知り合いみたいだから」

『なるほど……? しかし、シズフがいるのなら細胞再生薬なども必要だな。用意に三時間ほどかかる』

「え? あ、うん?」

『座標はそのまま送ってくれ』

「う、うん?」


 よくわからないけど、すぐに来てくれるみたいだ。

 じゃあ、と通信を切ってから、椅子に体重を預ける。

 あ、そうだ。

 この機会にイノセント・ゼロにもサルヴェイションみたいな音声サポートを頼もう。

 えーと、どうやるんだろう?

 サルヴェイションの時は話しかけて、解析してもらって……。


「えーと、イノセント・ゼロ? 俺はヒューバート・ルオートニスというんだけど、できればサポートをしてほしいんだけど」


 ちょっと恥ずかしい気持ちになるなぁ!

 けど、このままみっともなく歩くのにさえ苦労し続けていると、レナに見放されそうだし……。

 いや、レナは本当に根気よく褒めてくれるけどさぁ!


『——、……ギ、——ピーーーーー——……』

「え、えーと、俺、あんまり操縦が上手くないから、補助的な?」

『……………………』

「む、無理かな? 戦うのも苦手だし、このままだとみんなの足手まといになりそうだし、っていうか、上手く操縦できなさすぎて、馬鹿にされるし。機体の性能を全然引き出せてないと思うんだよ。それが悲しいっていうか……、……あ!」


『現在地情報を取得しました。

 現在地情報より言語を共通言語に設定しました。』


 文字がモニターに浮かんだ。

 これ、サルヴェイションの時と似てる!

 かろうじて読める文字だ。

 これが千年前の共通言語。

 結構文字自体は変化してないんだな。


「えっと、現代語! 現代の共通言語にできない?」

『現在の共通言語に設定しました』

「さすが! えーと、音声ガイダンスとか、音声サポートとか、できない?」


『サポートガイダンスを開始します——機体の保有データと異なるため、相当の年月を休眠していたと推測。最新データへの更新に時間を要するものであるが、一部の解析データを応用し、人格データを引用。データダウンロード——インストールを開始』


 で、できるじゃんんん!

 その調子で、その調子で頼むー!


『人格データを、インストール完了したよ』

「!?」

『操縦サポートを開始するね。これまでの操縦データを基に、ヒューバートが苦手なところを補助するようにするけどそれでいいかな?』

「お——おう……?」


 なんか、想像してたより……サルヴェイションより、気安い……?

 いや、気安いっていうか、フレンドリーになったっていうか。

 え?

 人格データって、もしかして?


「もしかして人格データって、前の登録者の性格?」

『そうだよ』


 そうだったよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る