第13話 夜明け前の風

 夜明け前の風


永遠とわをめぐる風が

無辺の高みから

ふきおろしてくる

限りなくやさしく

たおやかに


おやめなさい

と彼女はたしなめるように首を振るのだ

(彼女のほおは冷たい)

ひざまずいてあなた一人のためだけに

祈りなさい

(彼女の微笑みは白い)

未来と過去を思うのをおやめなさい

私を想うのをおやめなさい


わたしは静かに顔をあげ

はるかの声に聞きいった

ためらいがちにうなずくと

彼女はもうわたしを抱いていた

かなしみの眼ででこういった

 「幸福しあわせになれるわ

  幸福しあわせにおなりなさい」

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