ルーナとレッド

@ss9

第1話 追われる姫さまと赤髪の少年

 ハァハァ……どのくらい走ったのかしら……宰相の追手に追いつかれてしまい、必死で逃げたから……アンナは無事かしら……囮になると言って私を逃がしてくれたけど……あなたがいなくなってしまうなんて嫌だからね!ちゃんと無事で生きていてね!


 そこから、私は、力尽きるまで昼夜問わず走って逃げた。今の自分がどこを進んでいるのかも分からずに……


 必死で逃げていたから気づかなかったが、ずっと休まずに飲まず食わずで逃げていた私の体は、急に力が入らなくなり、倒れてしまった。


 倒れた私は、薄れゆく意識の中で、命をかけて逃がしてくれたお父様とアンナに詫びる。


 ごめんなさい!おとうさま!アンナ!あなたたちが命をかけて逃がしてくれたっていうのに、私は、こんなところで死んでしまうみたい!親不孝な娘でごめんなさい……どうか生きてください!ってあなたの言葉も守れなかったわ……アンナ……こんな家臣のお願いも叶えることができない無力な姫でごめん……ね


 そんなことを思い、私の意識はなくなった……


 眩しい朝日が目に当たり、目をはます。


 「うっ……なんだ……夢か」


 気がつくと私は、いつも見慣れた自身の部屋のベッドの上にいた。


 「はぁ……なんだか怖い夢を見たような気がするわ……」と窓の方を見ると、すっかり外は明るく、兵士たちが朝の稽古をする声が聞こえてきた。


 「寝汗もすごいかいてしまったのね」と部屋を出てお風呂の準備をしに行く。


 お風呂の準備をしに行く途中で侍女に見つかってしまい怒られた。


 「姫様!身の回りのことは私たちがやりますから御用の際は、呼び鈴で鳴らして呼んでくださいっていつも言ってるではありませんか!」

 「ごめんなさい…朝早くて、寝てると思ったし、自分でできることは自分でしたいのよね」

 「それでは、私たちの仕事がなくなってしまいます」との侍女のいつもの一言で、「じゃあ、お風呂の準備よろしくね」とお願いして部屋に戻る。


 侍女にお願いしてから、部屋に戻り、姿見の前に行く。


 「寝汗も相当かいたみたいだけど、寝癖も相当ひどいわね。朝食の前に、綺麗にしなくちゃ」とお風呂の準備ができるまで、ベッドの脇に置いてあった、昨夜の読みかけの本を手に取り、続きを読み始める。


 私が読んでいる本は、主人公が世界を旅する冒険のお話。


 物語は主人公が世界でまだ見つかったことのない遺跡を発見したところで、侍女がお風呂の準備ができたと呼びにきた。


 とてもいい展開なところだったが、お風呂の時間を長くとって朝食の時間に遅れたら、お父様に怒られてしまうと思い、本に栞を挟んで、お風呂に向かう。


 体を洗うくらいは自分でしたいからといつも侍女にお願いして1人でゆっくり入るようにしている。


 「やっぱり、お風呂は静かに入るのが1番だわ」


 お風呂で汗を綺麗に流して、寝癖を直す。汗がベタベタして気持ち悪かったから、スッキリしたわ!


 お風呂を出ると護衛のアンナが迎えにきてくれる。


 私は、護衛のアンナを伴ってお父様の待つ食堂へと向かう。


 「おはようございます。お父様!」と私は、大好きなお父様に挨拶をする。


 「今日も朝から元気だね。おはよう」と優しく返してくれるのが、私のお父様!私を産んで死んでしまったお母様に代わり、公務も忙しいのに、合間を縫って会いにきてくれる優しいお父様!本当に大好き!!


 私が席に着くと、食事が運ばれてくる。


 給仕たちが、料理の乗ったお皿をテーブルに並べていく。


 料理が揃うと、食事ができることへの感謝の気持ちを神様に伝える。お祈りをする。


 お祈りをすませて目を開けると……そこには、剣によって刺されて倒れたお父様の姿があった。


 「えっ……お…とう…さま?……お父様!?しっかりしてください!!」と私は、お父様に駆け寄る。


 「アンナ!お父様が!」と私の隣にいるはずのアンナは、宰相に剣で刺されていた。


 「姫様!お逃げください!」とアンナが倒れながらも宰相の足を掴んで抵抗する。


 どういうことか理解できない私は、その場に座り込んでしまう。


 「姫様!」とアンナの声が聞こえるが、動くことができない。


 なんで?どうして?あのお父様の事を長年支えてくれた優しい宰相が……私の大切なお父様とアンナを……これは……夢?


 と私が固まっていると、剣を持った宰相が、私の近くまで来てなんの躊躇いもなく、私めがけて振り下ろす……


 「はっ!……」と私は、目を覚ます。


 目を覚ますと全身に筋肉痛のような痛みが走る。体を確認してみると、手や足に枝のようなものでできた擦り傷がいっぱいあった。


 辺りを見渡すと、私はベッドの上におり、ベッドの近くには、暖炉と食事をするテーブルと椅子があった。


 室内は、壁と床が石造りで屋根が木で造られている誰かの家と思われるとところだった。


 状況が掴めず、混乱していると家のドアを開けて、赤い髪をしたそばかすが特徴的なひ弱そうな少年が外から入ってきた。


 少年は、私が目を覚ました事を確認すると、「おはよう」と優しそうな笑顔を作り、挨拶をしてくれた。


 つづく……

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