侯爵令嬢は今日もにこやかに拒絶する

プロローグ


 ああ、うるさい。

 うるさすぎて、イヤになる。


 周りに集まる少女達に、表向きは優しく微笑みながら、第二王子カイエンは内心ウンザリしていた。


 兄である第一王子のグレインは、母親のせいで、自分が王太子になれると思っている。


 実際は彼の母親は位のない側妃だから、王位継承権など持てないのだが、王妃である母親が許したために、王位継承権を持っている。だが末席。五位だ。


 彼が成人するまでに、自分を含めた四人が亡くならない限り、第一王子グレインが王太子となることは無い。むしろ、王族ですらなくなるのだ。

 しかし、まともに教育を受けようとしなかったグレインは、その事を理解していない。


 今日のお茶会とて、自分カイエンの妻となる令嬢達と、側近となる子息達を選ぶために、歳の近い七歳から五歳の者達が、爵位に関係なく集められているのだ。

 それなりの爵位の令嬢となれれば、王籍を抜けても情に厚い自分カイエンの母である王妃が、グレインを気にかけてくれるだろうが理解していない。


 まあ、私としては有難いな……。


 王位継承権のないを取り囲んでいる者達は、誰が王となるのかという貴族としての最低ラインの常識を、持っていないと自身らの行動で示してくれているのだ。

 必要のない者達を除外するにはちょうど良かった。


 問題はベッタリとくっついて媚びを売ってくる令嬢達だ。


 目 が 怖 い 。


 幼いながらも女は女。獲物を狙った肉食獣の目付きである。

 ハッキリ言って、こんな恐ろしい令嬢達を妻にと選びたくはない。


 どうしたものかと悩んでいたカイエンだったが、彼はこの茶会で妻となるに相応しい唯一の存在に出会ったのであるーーーー。




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