第13話 おまけの、テクニック!


 僕とボーくんは仕事もないし、毎日ヤマジュンパーフェクトで遊んでいた。


「うれしいこと言ってくれるじゃないの。それじゃとことんよろこばせてやるからな」

 それをわざわざイケボで言うから、僕は爆笑する。

「ちょっ!  ボー、やめろって。腹痛い!」

「やりますねぇ~」

「はははっ!」


 すると後ろにいたローリーさんが怒り出す。

「二人とも! もう、ここは職場だって言ってるでしょ!」


 だが、僕とボーくんはお構い無しに、名セリフで遊び出す。

「あのさ。ヤマジュンの読み上げを録音して、ニコニコにあげたら、面白いと思わない?」

「ああ、『精神障がい者がく●みそテクニック読んでみた』みたいな?」

「そうそう。そんな感じであげたら、おもしろいと思うんだよ」

「いいねぇ」

 僕と彼が結託しようとしていると、ローリーさんが怒る。


「二人ともダメですって! ここは職場ですよ!」

「え、でも、ローリーさんのニコニコ動画におすすめでサムネイルが出てきたら、クリックしませんか?」

 僕がそう言うと彼は苦笑する。

「お、押しちゃいますね」

「なら、やりましょうよ。ここで」

「ブラック過ぎる! ここは一応福祉事務所なんですよ! 俺が上の人に怒られますよ! やるなら、裏でコソコソやりましょう」

「えぇ、つまんない……」


 そんなこんなで、作業所はヤマジュンパーティーになった。


 僕はボーくんと毎日、博多に向かって。

「「イキスギィ~」」

 とか連呼して。


 金持ちの運営の幹部たちが来た時に、ヤマジュンを見せつけてやろうと、事務所の目立つ所に置いておいた。


 ある日、通所すると、その棚になくなっていた。

 僕は腹を立てて、ボーくんに叫ぶ。

「ボー! 目立つ所に置いとけったろ!」

「俺じゃないよ……」


 すると熟田さんが申し訳なそうに、僕に頭を下げる。

「すいません、味噌村さん。来賓の方が来たので、私が隠しました」

「あ、そうでしたか……」


 だが、また僕とボーくんは懲りずに、もっと目立つ入口あたりに置いておいた。

 その度に熟田さんが、あとで隠したとかどうとか……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る