第10話 14歳と16歳(レイモンド)

 アリスはますます綺麗になっている。

 お義父様が亡くなり僕も辛いけど領主の代理をジョルジュさんに頼んだ。


「学園でしっかり勉強をしてきます…。まだお義父様を殺した犯人が見つかってないから身辺に気を付けてほしいです。


 アリスのこともよろしくお願いします」

 と頭を下げるとジョルジュさんは


「やめてください坊っちゃん…。本来なら私が頭を下げるところですよ…。アリスお嬢様に本当のことを言わないでいいのですか?坊っちゃまが犯人だと疑われております」


「いいんだよ…。もし犯人がこの屋敷にいるのなら警戒するだろうしアリスにこのまま勘違いしてもらって構わないよ…。僕はどの道嫌われてる。僕を好きな人なんていないんだ…うっ…げほっ…」


「坊っちゃま!発作が!!」


「はぁはぁ…大丈夫。少し取り乱しちゃった。大丈夫大丈夫!」

 と振る舞うと


「アリスに挨拶してくるよ…」

 と部屋を出てアリスの元に行く。


 学園に行く前に僕はアリスにプレゼントを買った。人にプレゼントなんて…とも思ったけどこっそり街へ行って蒼くて綺麗な僕とアリスの瞳の色に似た石のペンダントを見つけたんだ。


「喜んでくれるかな?」

 明日から離れ離れになり寂しい。


 アリスにペンダントを渡してみた。


「これ…アリスにあげるね…」


「これは?」

 と聞かれて


「とても強いおまじないをかけたネックレスだよ…無理に外したら死んじゃうかも…僕以外がアリスに触れようとしたら死んじゃうかも」

 そんな風に言って恐ろしい呪具だと思わせる。もしアリスの命を狙うものがいても手を出せない様にする為だ。


 ごめんねアリス。とても困った顔をしてる。


 僕は翌日学園に向かった。

 とても寂しいけどしっかりしないと。お義父様の為にも犯人を探さないと!

 それから毎週アリスに手紙を書いて安否の確認をしないと…。

 でもどうしても言葉では言えない気持ちを書き綴りアリスに想いを伝えてしまう。ほとんど恋文みたいになりアリスはきっと不気味に思うかもしれない。それが周囲へ伝わり犯人にも伝わればしばらくは動けないかも。料理のチェックはジョルジュさんに頼んでいる。


 僕は早く夏季休暇にならないかと思っていた。その前の試験で1位を取り僕は少し話題になってしまう。しかしクラスにいた王族の王子様…リーゼルグ・マイン・ゲルトシュレイン様に目をつけられた。

 金髪碧眼で、容姿に優れており、女生徒達から羨望されているのに数点で僕に追い越され僕は放課後にこっそりと人気のない場所に連れられて方足を折られた。


「ううう!!」

 と痛みで気を失いそうになった。


「俺より目立つなんて許さないよ?お前…自分をなんだと思ってる?」


「…うう…僕は…ご…ごめんなさい!リーゼルグ様の邪魔はしません!!」

 王族に逆らおうなんてことはできない。僕が我慢したらいいことだ。


「ふぅん?わかってるようだね。醜いレイモンド…。俺を怒らせるなよ?君の家なんて簡単に潰せるんだからさ」

 と言われる。

 それから僕はひっそりと生きる。陰で王子様にたまに嫌がらせやストレスの吐口に殴られたりしても耐えた。教師達は見て見ぬふり。当たり前だ。僕は元々人に好かれるタイプではない。

 これが普通なのだ。

 だから流す涙もない。普通なのだ。僕の世界では当たり前のことだ。


 ようやく夏季休暇になりアリスに会えるけど松葉杖で怪我した足を見たらアリスは心配するかな。

 優しい彼女なら心配してくれる。それが嬉しいと思える。それだけで良かった。


 それにジョルジュさんとの手紙の報告でようやく犯人を割り出す事ができた。彼女は既に首にして憲兵に引き渡した。


 だから安心して家に帰った。


 案の定足を見て驚いて心配してくれた。使用人達も驚いていたけど。

 アリスは僕の前髪が長いせいで目をつけられたので髪を切ろうとしてきたけど断ってしまった。ごめんね。僕は取り乱した。

 もし切られてしまったら…僕を守る視界がなくなる。人の目が怖い。僕は…臆病なんだ。ごめんね。


 ジョルジュさんが代わりに領主の仕事をしてくれていたので報告を受けたり、課題を終わらせた。

 怪我であまり動けなくて辛かったけどこの家にアリスがいると言うだけで嬉しい。

 心が暖かくなる。


 ようやく怪我が良くなる頃には夏季休暇も終わり頃だ。


「ね、ねえ…何か欲しいものある?アリス…」

 ある日そう聞いて見た。だってまた離れ離れだ。何かあげたい。


「べ、別にありませんわ…」

 と言われてしまう。僕の事まだ疑っているよね。


「そ、そう…もうすぐ夏季休暇が終わっちゃう…。足の怪我でろくにアリスをお膝に乗せられなかった…悔しい。だからせめてプレゼントでもって思ったんだ…」


「そんなこと…気にしなくていいのですよ…」

 と言い、名案が浮かぶ。そうだ!アリスに僕の髪の毛の一部を持っていてもらおう!実は前に僕もアリスの髪を知らないうちにこっそりともらった事があるんだ。ごめんね。


 僕はハサミで少し切りそれを木箱に入れてプレゼントした!僕の髪をアリスに持ってて貰いたい!


「こ、こここここれ僕の一部を君にあげる!!僕の可愛いお人形アリスへ!愛を込めて!」

 とそれを渡した。


「あ、ありがとう…ございます…お義兄様…」

 と言われ僕は照れる。アリスと離れていても一緒だ。これで僕の事少しは思い出してくれるかな?


「えへへ…うふふ…」

 と口元を歪めて笑った。


「ねえアリス…学園に戻る前の最後の休暇日はずっと僕の側にいてくれる?」

 とお願いした。


「え?ず、ずっとって!?」


「言葉通りだよ。僕学園で一人ぼっちなんだ。とても寂しいんだよ…お願い」


「わ、わかりました…お義兄様…」

 僕の我儘にアリスは付き合ってくれた。

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