第23話 魔法石の使い方

星から来た銀に輝く英雄の必殺技スペ〇ウム光線


 俺の腕からは輝く光が放たれた。

 俺どの魔法石の力を使ってんのかな。自分でもよくわかんない。とりあえずルビー赤魔石青魔石サファイヤ緑魔石エメラルド黄魔石トパーズ、更に金剛魔石ダイヤモンド、一通り肌には付けている。そこからそれぞれの魔力が自分の体に流れ込んでくる。それを俺はスペ〇ウム光線のイメージで放っているのである。


 俺がインターネットの中でしか見たことのない、初代、親世代のそれは青白い光だったと言う。平成世代の俺の記憶では赤い光が多かった様に思う。その後も金色に輝いたり、虹色になったりイロイロしているらしい。

 それでも変わらない。クロスさせた腕から光線が出て敵をやっつけると言う、男の子の憧れ。

 子供の頃、一度はやるのだ。

 「か〇はめ波」と両巨頭。左右の手を上下にして叫ぶか、十字にして叫ぶかだけの違いの様な気も大人になった今ではしちゃうけれども。

 子供にとっては少し違うのだ。

 気合を入れてウリャッと叫ぶのが『か〇はめ派』。

 大人の余裕でクールにつぶやくのが『スペ〇ウム光線』


 でも現在の俺、力を入れて叫んじゃったけどな。

 だって憧れの大技がホントに俺の腕から出るかもしんない。そりゃー力も入るってモンだろ。


 そして、実際に俺の腕からは赤い光が発射され、七竈の魔物シアバーンに吸い込まれた。

 一瞬、シアバーンは動きを止めて、世界が止まったみたいに見えた。

 か、と思うと爆発する。魔物は粉々に砕け散った。

 後には木片だけが散らばっている。


 黒いコートを着た、ヤンキーみたいな男は口をバカみたいに開けて呆然としている。

 白いコートを着た、チャラ男陽キャな美青年は口をバカみたいに開いてアゴが下まで伸びている。



 クーは俺に飛びついてきた。


「イズモ、凄い凄い。

 あんなの初めて見た。

 アレは…………さすがの父でも驚くと思うわ。

 ……………………」


 すごく目をキラキラさせて興奮したフンイキ。 

 その顔を見たら、俺も興奮してきた。

 やったぜ、ホントーに出来た。土木作業用円匙地獄の炎熱光線シャベルヘルファイヤビームが出来たのだ。出来るんじゃないかなー、と思ってはみたし、だからこそやったのだけど。

 ホントーのモノホンのマジマジで出来ちゃったのである。


 いや、マジで、考えてみたらあの場面で星から来た銀に輝く英雄の必殺技スペ〇ウム光線と叫んでナニも起きなかったら最悪だったよな。

 

「ナニ……言ってるの? イズモ?」

 クーが凄く冷たい目線で俺を見て。

「アイツ、アッホやで。

 クー、あんなんと関わるの止めとき」

 とフェルディアッドさんが言って。

「ゴラ、キモオタ、表出んじゃねぇよ。

 地球の酸素がテメェのせいで減るだろ。

 一生引きこもっとけ、ボケ」

 とローフさんが言う。


 そんな事になる可能性もあったんだよなー。何も考えず勢いでやってしまった自分の蛮勇を褒めたい。


 見るとクーははしゃいでいたのに、少し難しい表情になっている。


「喜んでる場合じゃ無かった。

 だから、イズモ、今のは何なのよ?

 どの神に祈ったの?

 あんなの聞いた事も無い。

 あえて言えば光の神ルー様かしら。

 ルー神は世界の果てまで届く手をを持っていると言われているわ。

 その手で魔物を討ったの?」


「……ええと、正確には違って俺の知っている銀色でこの空の果てから訪れた正義の神様なのだが。

 まぁ、そのルーとやらの親戚程度に思っておいてくれればいいんじゃないかな」


 えーと、あれはどーゆー設定なんだったっけ。別の星系があって、そこの警備隊みたいな話だったかな。大人になってから考え直すとガッツリSFだったのかな、あの作品。


「……そう。ルー神は神々の中では若いけれど、力の強い神として尊敬されている。巨人フォモールの王、邪眼のバロールを討ち取った英雄とも言うね。

 僕も少しなら光の力を借りた事があるけれど、あんな風に使うのは初めて見た。

 やっぱりイズモはハンパでなく魔力プシュケーの使い方が上手いんだ…………」


 

魔力プシュケーの使い方。正直そんな事考えた事も無かったのだが、俺が日々魔力のコントロールをしているのは事実である。


 魔石の使い方なんて俺は最初まったく分かっていなかった。

 妖精少女パックが言ったのだ。

「これってば魔石なんだわさ。

 人間はコレを使って魔法が使えるなのよ。

 確か、赤魔石ルビーなら火の魔法。青魔石サファイヤなら氷の魔法だわさ。

 緑魔石エメラルドなら風の力で体が早く動かせるなのよ。

 黄魔石トパーズは体の力が強くなるんじゃなかったかしらだわさ」


 それを聞いて俺は試してみたのである。

 だって、本当に魔法が使えるって言うんだぜ。試してみたいじゃん。

 正式な使い方は妖精少女パックも知らないと言うので、自分で考えて試してみる。黄魔石トパーズを手のひらに握って、筋力強化ストレングスと唱える。

 キター! コレ! 間違いなく強くなっている気がする。

 俺は夢中でツルハシを振るって、掘りまくった。

 最初は腕の筋肉が強くなる程度の事しか考えていなかったが、徐々に使い方に工夫を加えていた。腕の筋肉だけ考えていた状況から、薄く全身に張り巡らせるようなイメージへ。

 緑魔石エメラルドと加えて、素早くかつ力強く動くイメージ。

 なんせ毎日坑道で、深夜も地下の場所で作業している。トライアンドエラーを繰り返し、惜しまず魔力を使う。

 どんどん魔法石は手に入っている。

 小さな魔法石だと使い過ぎると砕けると言う事も分かった。大きいのでも何度も続けて使うとヒビが入ったりするのだが、しばらく放置すると治っている。

 砕けるのは小指大のヤツね。有ってもジャマなので俺はパッと使ってワザと砕いちゃったりもしていたのだが、現在はルピナスが喜んで使うのでそんなマネは止めている。

 まー、そんな訳で魔法石と魔力をまったく惜しまず、朝から晩まで魔力を使いまくった。

 いつも運動している人間が自分の体の使い方が上手い様に、俺も魔力をかなり自由に器用に使いこなせる様になっていると思う。


 そんな訳で、特大サイズ魔法石の魔力をエイっと込めればあの位の破壊力は出せるかなー、なんて思ったりしたし。

 それで実際出せた訳である。

 スペ〇ウム光線が!


 クー・クラインはなんだかタメイキをついている。


「……あのね、ルー様の親戚って……

 はぁ、まぁ良いわ。

 ヒンデルさんが前に良く言っていたわね。

 この男は特別じゃから、考え過ぎん方がええぞ、って。

 その言葉が今になって良く分かったわ」

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