東堂兄弟の5分で解決録7〜兄の誕生日〜
涼森巳王(東堂薫)
バースデーゲーム
八月八日。パチパチの日。
猛の誕生日だ。
前日になって、とつぜん、蘭さんが言った。
この麗しい青年は僕ら兄弟の友人。同居してから三年めに突入。
「僕と競争しませんか?」
「へ?」
また、蘭さんが変なこと言いだしたぞ。
僕はのんびりゴロゴロしてるのが一番なんだけどな。
「競争って?」
「明日、猛さんの誕生日でしょ?」
「うん。焼肉して、ケーキ買って、プレゼントあげるんだよね?」
「そんなのつまらない! ふつうすぎる」
いや。ふつうでいいんだけどさ。
しかし、蘭さんは僕の意見なんて聞いてくれる人じゃない。
嬉しそうに目を輝かせて、ポッケからトランプみたいなカードをとりだした。夏バテなのに、元気だな……。
「こんなの作ってみました!」
見れば、誕生日、おめでとうと書かれた、バースデイカードだ。
ただし、ずらりと二十枚ほど。色は白、黄色、赤の三色。大きさは黄色が名刺サイズ。白はその半分ほどで、赤は黄色の倍だ。
「なにこれ……」
「猛さんにバースデイカードですよ」
「いや、それはわかるけど」
僕が聞いてるのは、なんで、こんなに枚数があるのかなってことだ。
よく見ると、それぞれのカードには、蘭の花のイラストと、カエルくんのイラストが描かれてる。
どうやら、それが、蘭さんと僕をあらわしているらしい。
つまり、白十枚、黄色三枚、赤一枚がワンセット。ワンセットずつを僕と蘭さんが手札にするってことのようだ。
蘭さんは説明する。
「白は小さいから一点ね。黄色が十点。赤は五十点。これをね。明日一日で、猛さんに何枚、渡せるかで競うんです」
ううっ、また、めんどうなことを。
「そんなの朝イチで、ポイッて渡せばすむことじゃないの?」
「ダメ。それじゃおもしろくないでしょ? ルールを作りました。一度に渡していいのは一枚。ただし、猛さんにカードを渡したって気づかれないように渡さないといけません」
「つまり、『はい。猛ぅ。誕生日、おめでとう』って、渡しちゃダメってことだよね?」
「そうです。猛さんに見せずに、かつ、必ず手渡しです。または、体のどこかにくっつけるのはアリ」
なるほど。そういうゲームか。
「それで、あさっての零時になったとき、合計点の高いほうが勝ち」
「勝ったら、何かあるの?」
「誕生日ですからね。猛さんのお願いをなんでも聞いてあげることにしましょう」
「わかった」
というわけで、わけのわからないままに、わけのわからないゲームが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます