第10話 回想 起きたら……。



「ふぁ〜」


「ふぁ〜、じゃないですよ‼︎」


 起きてすぐというのは眠気をよく感じる。


 だから、俺が欠伸をするのは不自然ではない。


 なのでオウランに問うてみる。


「どうした?」


 ーーと。


「12時過ぎてますよ‼︎」


 時計を確認してみる。短針はぴったり12の数字を指し、長針は1の数字を指している。


「5分だけだろ」


「5分間、このか弱い私が一生懸命起こそうとしてたんですよ‼︎」


「そうだな」


「労いの言葉の一つもないんですか‼︎」


 考え込んで一言、


「あぁ、ありがと」


 と言えば。


「心がこもってません‼︎」


 可愛い、オウランを見てついいじりたくなったのでもう一回そっけなくしようと思いーー


「はいはい、恩に着ますよ」


 投げやり気味に答えてみれば、


「ムキィ〜」


 羽をバタバタさせ、嘴を噛み合わせ、キチキチと音を鳴らしているオウラン。


 かっ、可愛い。


「かっ、可愛い」


「なっ」


「あっ、つい口が滑った」


「口が滑ったじゃありません‼︎ どういうことですか‼︎」


「思ったままを言ったんだけど?」


「……」


 羽を交互に交差させ体をふるふると震わせるオウラン……可愛い。


「オウラン、可愛いよ」


「ちょっと待ってください、オウランってなんですか」


「君の名前だけど?」


「なんでそんな名前なんですか‼︎」


「オウギタイランチョウを略してオウラン」


「もっとカッコイイような名前はなかったんですか‼︎」


「思いつかなかったんだもん」


 ふざけて答えればーー


「口元がにやけてますよ……。はぁ〜」


 もうダメだというような嘆息をしながら返答をしてきた。


「この人、いつまで生きてられるんだろう」


「どういうことだ?」


「これからあなたの力にあやかろうと接触を図ってきたり、そのせいで命を狙われたりすることなんて日常茶飯事になるんですよ、と言いたいんです」


「……全能なのにか?」


「全能と不滅は違います」


「……それなら自分に干渉して不滅の肉体を手に入れて」


「それでも滅びるときは滅びますよ」


「万が一のための肉体を用意しておいてそこに滅びる直前の魂を転写するとか……」


「よく思いつきますね」


「そっ、それなら、相手からの精神攻撃への無効とか…」


「病気はどうするんですか?」


「あっ、それも入れるか」


 ……なぜだろう。


 急遽、俺の人外改造計画が始まってしまったのだが……。


「あなたはとっくに人外ですよ」


「思考を読んだ⁉︎」


「あなたと私は魂が繋がっていると言ってもいいのです。思考や記憶を読むなど造作ないですよ」


「さっきは記憶だけって言ってなかった?」


「記憶読めるんですよ」


 あの現実逃避の思考も全て読まれていたのだろうか。


 恐ろしくて口に出せない。


「読んでましたよ」


 ギャァァァァァァァァァァァッッッッ


 もう終わりだ。


 さらば、俺は(社会的な)死を迎えるようだ……。


「鳥に発情するなんて冗談の一言で片付けられると思うので大丈夫ですよ」


「言わないで……。より一層、むなしくなってくる」


 どうすれば良いのだろう。


 考えていたって仕方がない。


 このオウランに筒抜けの思考をどうにか––––


「今の全能の能力では無理ですよ」


 な、ならいつかはできると?


「いつかはできますよ」


 それなら、俺の人外改造計画を始動させて、おウランに筒抜けの思考をどうにかする一歩を踏み出そうか……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る