第6話 プレートアーマー

「そもそも貴方、何者なのですか?」


 シェリーは腕組みをして伝令に問う。

 本人は自覚していないが胸の大きさがポンチョ越しにわかってしまう悩殺ポーズのひとつだ。


「これは失礼した、我はマーチャンのおさを努めているシャンベルと申す」


 シャンベルはシェリーの瞳を見て返答する、紳士の心得があるらしく、シェリーの艶めかしい姿に動揺する事なく応えた。


「装備から伝令にしてはおかしいと思ってましたが…。

 まさか、マーチャンの最高権力者だと言うのですか?

 私達が二人でSランクというのを貴方が信じられない様に、おさが抜け出して伝令役をするなど信じられません。

 もしそうだとして、今頃指揮系統が混乱してたりしないでしょうね」


 シェリーは言葉に踊らされる事無く冷静にシャンベルの発言を分析する。


「信じられない気持ちは分かるが、いざ戦となれば我の出る幕は無いのだ。

 我の職業は先ほど申した通り商人なのでな、戦は息子のブルゴーに任せている」


「あれ?血路を開いたのでは?あとブルゴーさんの職業をお聞きしても?」


 シェリーは冷たく執拗に問う。


「と、年寄を苛めるでない!

 先程それは言葉のアヤだと申したではないか。

 我は立派な武装をまとってはいるが、戦ではなんの役にもたてん。

 聖教の神官をしているブルゴーとは違い我はただの年老いた商人なのだ」


 シャンベルは途端に言い訳がましくなった。

 シェリーの言葉が冗談では無いと雰囲気から察し、攻められる理由に心当たりがあったからだ。


「年齢は関係ありません。

 言葉のアヤとはいえ嘘をつくような人をどこまで信じられたものか。

 土下座もやり慣れてる感じがするほど動きが凄く滑らかでしたよ?

 重装備のプレートアーマーでその動き、本当に商人なのですか?」


「グッ」


「商人の息子が神官というのも嘘臭いですし」


 言葉に詰まるシャンベルは白旗をあげるしかない事を理解する。

 まして頼みの綱がシェリー達しかいない状況なのだ、何としても信頼を取り戻す必要がシャンベルにはあった。


「よもや見栄を張るためについた嘘でここまで信用を無くすとは…。

 我が全面的に悪かった。勘弁してくれぬか。

 血路を開いたという事以外には嘘をついておらぬ」


「そう言われましても。

 何か身分なりの証拠となるような物は無いのですか?

 長ということはそれなりのアイテムを所持していてもおかしくはない」


「グッ」


「貴方の誠意をまずは形で見せてもらいましょうか」


「…我などより余程商人に向いているな。どうだろう、息子のヨm」


『!!』


 フィノの身体がふらりと揺れた。

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