第215話 えせ小説

 歓迎を受ける立場としてはと言うか、主賓としては歓迎の舞踏会に参加しなくてはならず、引きつった笑顔でもにこやかにしないとだ。


 ここでもシャルルが色々仕切っている。

 俺に近付く者をコントロールしているんだ。

 俺はシャルルが心配だ。次に飛ぶ時はシャルルと一緒が良いなあ・・・

 しかし・・・俺に選択権はない。

 誰が決めたのか、一緒に飛ぶのが誰か直前に教えられるのだ。


 俺の周りには常にうら若く見目麗しい女性のみ近付く事を許されるようだ。

 俺の鼻の下は伸びっぱなしだろう。

 不思議だ。


 日本の感覚だと好きな男に自分以外の女が近付くのを警戒し、排除したりするだろう。


 そんな中、端の方で所在無さげに佇んでいる女性が目に入る。

 ため息を付き憂いを帯びた表情が気になる。


 一言で言えば地味だ。

 メガネっ娘のオタク女子がそうであるように、自己主張の激しい女性陣の中に埋没している。


 皆乳首が見えないのが不思議なくらい胸元が開けた服を着て俺に近付く。

 どこを見るか?やはり谷間につい目が行き、顔は覚えていない。


 だが、その女性は強烈に印象に残った。

 地味だが姿勢は綺麗で胸は服で自己主張していないが、他の令嬢と同じか少し大きいと思う。


 シャルルの眼鏡に適わなかったのか?

 俺は群がる女性達に失礼!とその場を離れ、給仕から飲み物を2つ受け取るとその女性のところに向かった。


 すっと飲み物を差し出す。


「ありがとうございます」


 よく見ると化粧が薄く派手さはないがちょっとおぼこさん?的なのがあるが、整った顔立ちだ。

 いや、お淑やかな感じで保護浴を掻き立てる。


「皆の中に混じらないのかい?」


「私なんて地味で、根暗なので陛下の前にとてもとても」


 俺はその手を引いてバルコニーに出た。

 どれだけ飲んだだろうか?

 酔っていたのも有るが、つい気になり人目を避けたくなった。


「確かにドレスは他の人に比べて特に胸元の主張がないけど、貴女の魅力を隠す事は叶いません。少しお話しをしませんか?」


 グイグイと主張してくる女が苦手だ。

 こんなふうにしている女は新鮮だ。

 俺が誰だか漸く分かり、驚きから手に持っていたグラスを落とす。

 中身は少し溢れたが、何とか床に落ちる前にキャッチした。


「へ、陛下・・・私なんてでも」


 俺はその唇を衝動的に求め、彼女は脱力し

 そこからは止まらなく・・・


 飛翔を使い自室に連れ込み・・・

 一夜を共に。

 それはとても甘美で・・・


 ゴチン・・・


「おいこら!これじゃあ俺が見境なく女を口説くような感じだろうが!」


 みっちゃんが俺の女性遍歴録と称して小説を書いていて、アイリーンのところに添削をしてもらいに来ていた所に俺が訪ねたようだ。

 慌てて隠していたので問い質していた。


 てへ♪と苦笑いをし逃げていった。


 俺は今晩の舞踏会について相談をしに来た。


「みっちゃんの小説じゃないが、シャルルは大丈夫だろうか?あの小説のようにやりかねなく、みっちゃんの小説の中に出てくる女性もシャルルがそのように振る舞うよう手回しをしていても驚かないんだけど、あいつ頑張りすぎるからさ。俺から言っても、無茶なタウンドリフトを止めるならもう少し自重すると言われるんだよ。返す言葉が出なくてさ、このままだと倒れるんじゃないかって思うんだよな」


「私も心配なのよ。それとなく注意をしておくね」


 結局舞踏会でデジャブが起こり、その女性を酔から口説き・・・

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