第212話 サルトリーヌ国からの帰還者イリス

 目が覚めると・・・知っている天井だな。

 ここはクマーシャルの自室か?

 自室と言っても殆ど使っていない。


 今回は起きぬけに誰かとエッチな展開が待っている事もなく、1人で寝ていた。


 俺は放置されていたのだが、どうやら皆会議をしていて、部屋の中に声が聞こえてきた。


 ベッドサイドにあるコップに入っている水を飲むと、声のする部屋に向かう。

 ドアにはセレネが椅子に腰掛け足をぶらぶらしていた。


「主!起きたのだ!」


 俺はセレネの頭を撫でた。


「俺の護衛をしてくれていたのか?」


 セレネはうん!と一言返事する。


「いつもありがとうな!」


 セレネは俺の前を進み、皆のいる部屋に案内してくれた。


 そこには国王を始め、クマーシャルを治める重鎮達、アイリーンやシャルル等勢揃いだ。


 また、イデアさんの横にニーナがおり、反対側に見た事のない女性?がいる。


 俺に気が付くとその女性は俺の前に来ると片膝を付き手を頭から脇腹に優雅に持っていき挨拶を始めた。


「陛下におかれましては間もなく大陸を【長いぞ!レオンはそんな挨拶は苦手だぞ!】コホン。ニーナとは随分仲が良いのですね。申し遅れました。私はイデアの1番弟子をしておりますイリスと申します。我が師の名によりサルトリーヌ国にて異世界より来たりし少年少女を保護し、前程クマーシャルに帰還した次第です

 」


 首を下に向けてお辞儀をした。


「これはご丁寧に。貴女がイリスさんですか!ニーナとは姉妹弟子の方ですよね?おいニーナ、お前から聞いているのと随分違うじゃないか?礼節を重んじて素晴らしい!ニーナも少しは見習ったら良いのに」


 この部屋は屋敷で1番大きい部屋、つまりホールだ。

 テーブルや椅子が持ち込まれ、よく見ると高校生が全員いた。

 不良5人組は厳重に管理されており、後ろに槍を構えた兵士が待機して睨みをきかせていた。


「陛下、イリスさんとはこのあとお話をしたく思います。先を続けますわ」


 勿論シャルルがこの場を仕切っている。


 この後はサルトリーヌ国へ向かい、併合の話になるそうだ。

 既にクマーシャル〜トライデルまでが俺の配下に入り、残りはサルトリーヌ国とアーリバンだけになる。

 既に魔導通信で配下に加わる事が決まっていて、別に俺がいなくても大丈夫やん?と思ったりする。


 サルトリーヌ国に俺が赴けば王権移譲をし、俺が総督を任命して終わるらしい。

 まあ、これも慣れた。


 気にはなったのはテーブルに肖像画が置かれており、それで今までナニをしていたのかだ。


 そしてシャルルが1つの提案をしてきた。

 彼女の父親であるサルベル総督についてで、総督を息子の誰かに譲り、実質的な俺の摂政となり俺とシャルルの不在を補佐して貰う案を出し、それについて話し合っている最中だった。


 俺はツッコミを入れたかった。

 何故その会議を城ではなく俺の屋敷でするかなぁと。

 しょうもない話だ。


 それと並行し、サルトリーヌ国併合に間髪入れずアーリバンに向かう準備をしてもらっていた。


 また、高校生達をこの会議の場にいさせているかについては、俺がどういった立場で、自分達が俺の庇護下にある事を認識しつつ、天狗にならない為だそうだ。


 俺は1つ気になっている事があり、聞いてみた。


「特に総督に聞きたいが、何故どの国もあっさりと俺の配下に入っていったんだ?特に条件も言われず、こちらの出す話を全面的に受け入れていたんだよな」 


「それは簡単です。陛下が真の勇者と皆がその力から認めたからです。2国がそう認識すれば軍事バランスが崩れ、残りは加わらざるを得なくなります。サルベル国にて真の勇者認定をされた時点でアーリバン以外は入手したのと同じなのです。クマーシャルはミス・イデアがクマーシャル国王を説き伏せる事が分かっていましたから」


 俺はなる程となるが、今更クマーシャルにサルベル総督を飛ばしたのか理解した。


 代理に息子の誰かを指定したのだろうと、政治に疎いなとため息をついていた。

 ハァァア・・・

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