第167話 いきなり転ける!
俺は右足と右手が同時に動いており、その状態で謁見の間に向かって先頭で進む。
俺の後ろはドレス姿のシャルルだ。
しかし、いきなりシャルルが転けて、俺の背中を押す形になった。
俺は押し出される形で、おっとっとっ!となり前に向いて倒れていく。
後で聞いたが、みっちゃんが前をよく向いておらず、シャルルのドレスの裾を踏んでしまい、それでシャルルが俺の背中に倒れ込んだ。
幸いニーナがキャッチしたので、シャルルが床に体を打ち付ける事はなかった。
しかし俺の時間は走馬灯のように遅く感じた。
今ならマトリックスのネロがしたように、ピストルの弾を避けられるぞ!といった具合だが、俺が無様に転けている最中なのは変わらない。
しかも半回転しており、そのままだと背中を打ち付ける。
そして見えたのは、天井からシャンデリア?が何故か落下している様子だ。
その下には王と多分王妃?と年頃の娘?と側近とかがいたはずだ。さっき中を見た時にちらっと見えたのだ。
そのままだと間違いなく激突してしまう。
咄嗟の事だったが、飛翔でシャンデリアが落ちる所に向かって飛び始めた。
ぎりぎり間に合うはずだ。
手前にいる王と思われる者とその側近の男性を突き飛ばし、階段から落とした。
そしてそのまま王妃?と思われる女性と、その娘と思われる王女と計2名の女性をキャッチし、その場から飛んで退避した。
すると先ほどまで国王や女性達がいたところをシャンデリアが落下した。
ドーン!ガラガラガラ!と衝撃と物が割れたり破壊された音が謁見の間に響き渡った。
勿論俺が突き飛ばした当人達の悲鳴もだ。
悲鳴が聞こえるという事は死んではいない!
俺の行動もそうだが、周りの者の驚きようはその比ではない。
俺は取り敢えず天井すれすれに女性2人を抱えて飛んでいたが、降りられそうなスペースを見つけ、そこに降下していく。
2人の女性は何が起こったか分からず戸惑っていたが、俺がcatchした時に短くキャッ!と悲鳴をあげただけだった。
俺は着地するとすぐさま衛兵に囲まれた。
取り敢えず手を挙げるしかなく、そうして大人しく縛されようとしたのだ。
だが、そうすると王妃と思われる女性が大きな声を出し始めた。
「何をしているのですか!見ての通り彼は私達の命の恩人です!感謝こそすれども、槍を向けるなど言語道断です!!今すぐ引くのです!」
そうして兵士を下がらせると、王妃と思われる女性とその娘は俺の前に片膝をつき、臣下の礼を取ってきた。
「流石勇者様!というしかありません。何故あのような物が落ちてきたのかは今は分かりませんが、私達のみならず、陛下に万が一の事があったやもしれません。私達の命を救って頂き感謝いたしますわ!」
母親の方は流石!と思うようにもう落ち着いていたが、娘の方は恐怖からまだすすり泣いており、頷く事しかできなかった。
「えっと、取り敢えず怪我とか大丈夫ですか?もし怪我をしてしまっていたら、ニーナが治してくれますから!」
そうするとニーナが慌てて駆け寄ってきて、助け起こされている国王にヒールを掛け、気絶している側近へ治療し、その後起こしていく。
国王も打ち身程度で命に別状はなかったらしい。
そして娘さんの方はショックから今は言葉が出せないらしく、俺に何度もお辞儀をし、手で涙を拭っていた。
いや、泣いているからか言葉を出せなかっただけ?
俺は収納からハンカチを出しそっと涙をぬぐってあげ、ついでにティッシュで鼻チーンをしたが、きょとんとしていた。
だが、彼女は誰に何をされているのか分かると真っ赤になっていた。
王妃は30台後半で、銀髪の髪を後ろでまとめた高貴なザッツ・マダムだ。
大人の色気漂う物凄い美人さんである。そして王女の方も15歳前後だろうか。
まだあどけなさが残るが、この子を巡って決闘が行われたとしても不思議ではないほどの顔面偏差値である。
俺は女の涙に極端に弱い。
王女だが、容姿だけであればシャルルと遜色のないレベルだ。
つまり物凄い美人さんだ。
そうするとシャルル以外の皆が駆け付けてきた。
流石にシャルルは走れないのでゆっくりと向かってくる。
流石に邪魔だよなと思い、俺は取り敢えず玉座の方に行き、落下したシャンデリアなどを収納していくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます