第76話 ニーナとは?
商人ギルドでの支払いは多少の混乱があったものの、実にあっさりとしたものだった。
書類へのサイン等はニーナに任せた。いや、俺が読み書きが出来ない為に任せてしまった。支払いを済ませた後、権利書をジャックニクス氏が読んだのだが、所有者が俺になっていた。
俺がニーナをジト目で見ると、彼女はトイレに行くと言って逃げていった。
「ちょっとおしっこをしてくるから、後はヨロピコ!」
何だよヨロピコって!とため息をつきつつ、ジャック氏にある事を聞く事にした。
「ジャックさん、ニーナって剣聖って言われているようですが、有名なんですか?」
「えっ?レオン殿はニーナ様の事を知らないのですか?」
「えっと、多少剣が扱え、回復魔法の使い手だと思っているのですが、剣聖って言われているので、違和感が有るんですよ」
「失礼ですがニーナ様とかなり親しいようですが、剣聖様と言うのを知らないのですか?」
「強いのか?」
「はい。それはそれはお強く、剣の腕は大陸1番と言われており、各国の王侯貴族から王妃や正妻へと求められているも、全て断っていると聞き及んでおります。性格は少々癖のある方と聞いておりますが、あの美貌と回復魔法の使い手でもある故に、聖女様と呼ぶ者もおります。しかしあの御様子からすると、ニーナ様がレオン殿に惚れているのかと思われます。俗な言い方ですが、どのようにして聖女様を落とされたのか知りたい程でございます。もうお抱きになられたので?」
俺は首を横に振る。色々な意味でやらかした感があるな。
「いや、その、知り合ってからまだ数日で、確かに美人さんだけど中身おっさんですよ?有名人だとは知らず驚いたな。彼女の事はそういった対象じゃないんだよね」
「勿体ない。据え膳食わぬは男の恥ですぞ」
俺が乾いた笑いをしているとニーナが戻って来た。ついジャックさんと2人でニーナを見ていた。
「な、何だ?アタイがどうかしたのか?」
「ニーナって剣聖で、有名人なんだって教えて貰っていたんだよ。確かに強いなとは思ったけど、そんな感じがしなかったから意外だなって」
「アタイが剣聖だと何かあったかい?」
「ニーナに対して何か変えるとかは特にしないけどさ、出来れば教えて欲しかったな。仲間が有名人だと言うのを俺が知らなかったら、不審な目で見られるからさ。現にジャックさんは俺がニーナの二つ名を知らない事にかなり驚いたようだぞ」
「別にアタイから剣聖だの聖女だのと名乗った覚えは一度も無いんだぜ。周りが勝手に言っているだけだからな。お師匠様からは剣聖として自覚を持ちなさいって言われるんだけどさ」
「ニーナは俺とアイリーンから剣聖って扱われたいのか?」
「別にどっちでも良いぜ」
「今迄のままでも良いのか?他の奴みたいに剣聖様とか聖女様とかじゃなきゃ不味いか?」
「アタイは本当はそうやって呼ばれるのは嫌なんだ。ニーナって親からもらった名前があるからさ」
「いや、そうじゃなくてさ、俺はニーナはニーナだと思うんだけど、人前でニーナの呼び名を変えなくても大丈夫か?トラブらないかな?なんだよ」
「レオン殿、問題があるとすれば、ニーナ様を呼び捨てで呼ばれますと、あいつはひょっとして剣聖よりも強いんじゃないか?手合わせを願おうという感じの事が時折起こる位かと」
「じゃあ、じゃあ、アタイの事を聖女様って言って求婚しても良いんだぜ!したら即頷くから!」
最後のニーナの言葉をスルーし、俺達は屋敷に戻ったが、玄関先でメイド服に着替えた奴隸達が一斉にお出迎えするイベントもなく、執事の奴隷と、警護として戦闘奴隷が2名のみが玄関先にいただけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます