第47話 ドロップアイテム

 スーっと地上に向けて降下していたのだが、残り2m位の高さで突然背中の重みと人の温もりが消えた。


 ニーナはウッヒャーと半ば叫びながら飛び降りたのだ。

 おいおいおいおい、この高さって下手をしたら骨を折るぞ!ああそうか。回復術が得意だから、死ななければ自分でなんとかなるから無茶が出来るのか。


 ニーナは早く早くと急かせる。いや、そうではなかった。早く来いではなく、早く岩をしまえ!と喚いている。目をキラキラさせているんだよね。


「ほら早く来いよ!お・た・か・ら、お・た・か・ら!アタイに見せてお・く・れ!」


 ドロップが楽しみらしい。まるで小さな子供が新しい玩具を楽しみにしているみたいだ。20代半ばから後半のはずだけど、まるで子供だな。うん、不覚にも可愛いなと思ってしまった。歳下に見えたりした。って中身は俺の方が上か。


 あの無邪気な笑顔は反則だよ!

 コホン、地上に降り立った。

 するとニーナが俺の手を引っ張り、岩に触れさせた。


「ささ、は・や・く!」


 アイリーンと2人してはははと苦笑いをしていた。


「なんかニーナさんって時々無邪気で子供っぽいところがありますよね!」


「う、うん。不思議な人だよねー。って、はいはい、今やるから、慌てない、慌てない」


 そうして岩に触れながら収納と念じると、その山のような巨大な岩はパッと消えた。


「何度見てもすっごいですよね!岩じゃなくて、あれはもう小山ですよ!あっ!早速行っちゃいましたね」


 ニーナはスキップしながらドロップアイテム目掛け、目を輝かせながら駆けていった。大人の女性の無邪気な姿も悪くないな!さあて、俺も行きますか!


 アイリーンは積極的にドロップを掘りに行こうとはしなかったが、レオンはニーナが向かったのと違う方向に歩いているので、ぽつりと1人取り残される形になった。この場に1人というのが心細くなり、アイリーンは駆け出し、レオンの腕を取る。


「えへへへ。やっぱり来ちゃいました」


 ぷにっ!

 アイリーンの胸の感触が!

 毎度思うんだけど、この胸の感触はわざとなのか、意図せずなのか、よく分からない。でも全力で堪能だ!うん。やっぱり最高!ってそうじゃない。胸の感触も大事だけど、今はドロップを回収だ。


 俺が掘った分には大したのがなかった。魔石と魔鋼鉄のダガーばかりだ。魔石はサイクロプスのよりも一回り小さかった。ニーナの方は何かの首飾りをゲットしていたな。


 俺の方にニーナがテケテケと駆け寄り、首飾りを俺に見せ、Vサインをする。


 俺はニーナに駆け寄り、腕を伸ばした。


 ぷに。ニーナの胸に手が触れ、柔らかな感触が手に伝わるでもなく、ドン!っとニーナを突き飛ばした。ニーナは「えっ?」と唸り、何で?といった顔をしながら尻餅をつく形で後ろへ転げる。


 そして俺は、横っ腹を殴られて吹き飛んでいく。 


「ぐふっ!」


「なっ!?アタイが気が付かなかっただと?」


「キャー!栃朗さん!」


 ニーナは唖然としながらも剣を構え・・・られず、懐から予備武器のナイフを取り出した。

 アイリーンは悲鳴をあげ、つい本名が出てしまった。


 1匹だけオーガが死んでおらず、偶々窪みで怪我のみで立ち上がったオーガがニーナに襲い掛かり、栃朗は叫ぶ余裕すらないままニーナを突き飛ばしたが、ニーナと位置が変わった為、オーガの攻撃をまともに食らってしまった。そして地面を転げ、頭を打った事により気絶した。


 アイリーンは風魔法を放ち、ニーナはトントントンとオーガの脚や腕を伝うと頭上を超えてジャンブし、そのまま脳天にナイフを突き刺した。そしてそのまま持ったナイフを捻り、頭を抉る。


 オーガはフラフラとなり、やがて倒れていった。

 するとぽふっと音がして霧散し、魔石とショートソードをドロップした。


 因みにニーナがオーガに刺したナイフはなくなっていた。

 周りを確認するも、他に魔物の気配はしなかった。


 魔物に武器が刺さったままだとその武器が落ちてくるか、レア度が高い武器としてドロップされる事が時々ある。特にランクの高い魔物程レア度の高い武器に変貌する確率が高くなる。時折そうやって武器のランクが上がるのだが、武器の種類が変わったりする場合がある為、高ランクの武器を刺さったままにするのはリスクがそれなりにあるのだ。


 ショートソードがグレートソードやロングソードになったら、レア度が上がったとしても殆どの者は扱えなくなる。逆にそれを狙い、投げナイフ等を止めを入れる直前に突き刺したままにしたりと。

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