第30話 部屋にニーナが来たが

 食事を終えたので部屋に向かっていたが、部屋の前までニーナも一緒に来ていた。


「アタイもすぐに部屋に行くから、時間的にチュー位しか出来ないぞ!」


「頼むからアイリーンをからかわないでやってくれ!」


 ハイハイといった感じで手を振りながら、ニーナが離れていったので、アイリーンと俺は取り敢えず部屋に入る。

 ニーナのからかい様に2人共ため息をついてしまう。


 先程はあまり見ていなかったが、改めて確認すると部屋はこんな感じだった。


 シングルベッドが3つある。

 1人分多いが、ここしか空きがなかったのだろうか?


 この宿の1階には、男女別の大浴場が有るとの事で各部屋に風呂はない。

 そもそも風呂は一般家庭にはなく温泉宿か高級宿、貴族の屋敷位にしかないのだが、勿論俺達は知らない。


 部屋は12畳程でかなり広く、中には2人で使える机が1つと、4人掛けのテーブル、椅子が4脚、クローゼットがある。


 収納からアイリーンの荷物を出し、渡してあげた。


「わーっ!改めて見ると広いお部屋で綺麗ですね!あっ!レオン、見て見て!ほら、窓から・・・」


 彼女ははしゃいでいた。色々有って今迄気の休まる事が無かった。

 いや、宿でしっかり休んでいたが、レオンの中ではそうだ。

 平和ボケしているので、そもそもあの状況下で随分温い行動をしていたが、本人達は十分警戒した悲壮な逃亡生活をしていたつもりだった。


 レオンの中では、アイリーンは隣国に入った事により、緊張の糸が切れてはしゃいでいるのだろうなと思う感じだ。


 お兄さん思い切って窓の外を見ながらアイリーンの肩に手を回したんだ。

 思わず見つめ合い、良い雰囲気になった。


 バーン!


 お約束!といったタイミングで扉が勢いよく開き、確認もせずにいきなりニーナが入って来た。

 俺達はハッとなり離れてニーナを迎え入れた。


「おや?ひょっとしたらアタイはお邪魔だったかい?にししし!」


「いえ。窓から町の様子を眺めていただけですよ。それよりその荷物はどうなされたのですか?」


 流石のアイリーンも、今回はニーナを軽くあしらった。


「何を言っているんだい。アタイの部屋を引き払い、この部屋で寝るのに決まっているだろ?やはりお邪魔だったか?」


「お、お邪魔じゃないですよ。ただ、聞いていなかったから驚いただけですよ?」


 お兄さん頭が痛い。嫌な予感しかしないんだよね。


「レオン、ほら何をやっているんだい?さあ風呂に行くぞ!」


 俺も疲れたのもあり早目に風呂に入ってから寝たかったので、取り敢えず3人で風呂に行く事に。


 入り口で別れたが、風呂に入る前に念の為ニーナにだけ告げた。


「言っておくけど、もしも性的にアイリーンに何かしたら俺達はニーナの元を去るからね」


「融通が利かないねぇ。まったく冗談も通じないのかね?つまらない奴だな」


 ニーナはため息をついた。


「お堅いねぇ。女同士で乳繰り合う趣味はないから心配すんなって」


 ニーナは呆れた感じだ。


 それとアイリーンから、シャンプーや石鹸を小分けして小さな容器に入れているのを渡されたが、遠慮せずに好きに使って良いと言っていた。


 俺は風呂に入りながらふと思う。

 アメニティについてだけど、貰ってしまって良かったのかなと?旅行用の容器にシャンプーとリンス、ホテル等に有る小さな個包装の石鹸を渡されたのだ。

 昨日は部屋に風呂がありこれを使ったが、アイリーンの分は?となった。

 ひょっとして忘れ物をよくする友達の為に用意した予備があり、それを渡してきたのかな?その辺はしっかりしていそうだよね。

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