第7話 お花を摘みたい!
多分今飛んでいる速度は30km/h位だと思うんだ。
もっと出せそうだけど、人を抱えた状態で制御出来るか分からないし、風圧から呼吸が苦しくなる筈だから抑えていたんだ。フルフェイスのヘルメットが欲しいです。
ようやく町が見えてきたのだけれど、敢えて1つ通り過ぎたんだ。城の近くだと追い付かれるかも?だからね。
「栃朗さん!栃朗さん!あれって町じゃないですか?あそこに行かないんですか?」
「城から近過ぎる為、追手に追い付かれて見付かる危険があるんだ。だからこの町は危険かなと思うんだよ。ひょっとして疲れた?」
瑞希ちゃんはそれはそれは残念そうにしていた。もじもじしているからひょっとしてもう腕が限界に来た?
「えっとね、そのね、そうじゃないのだけど、ううう。栃朗さんのばか!」
えっ?何?俺何かやった?まずいぞ?お尻を撫でちゃったかな?それとも抱っこする時に少し胸に触れてしまった事かな?オロオロオロオロ。
「瑞希ちゃん?ひょっとしてさっき胸に手が当たった事を怒っている?ごめんね。わざとじゃないんだ」
「そんなんじゃないもん。その、お花を摘みに行きたいの」
?何を言っているの?こんな時に花が欲しいって!ひょっとしてスキルに関係あるんかいな?
「瑞希ちゃんは花が欲しいの?ひょっとしてスキルに関係あるの?ただこの辺ってお花は有りそうにないよ?」
瑞希は愕然とした。この人はあかん人だったんだなと!見た目は中々格好良いのに・・・
「と、栃朗さん?真面目に言っていますか?」
「他に何があるの?顔色が悪いけど、ひょっとして酔った?お兄さん気が利かなくてごめんね」
「ち、違います!女の子がそう言ったらあれですよ!察して下さい!」
なんか必死だな?
「ごめん。分かんない・・・」
「彼女とかいないんですか!?嫌われますよ!」
「お兄さん、奥さんおったけどさ、5年前に交通事故でね・・・今は独り身なんだよ」
あっ!っと、デリカシーの無い事を聞いたと瑞希は唸る。しかし、本格的にやばくなってきた。
「栃朗さん?後生ですから直ぐに降ろして下さい!もう我慢できません!」
なんだろうと思いつつ、取り敢えず道から少し離れた平坦な所に向けて降下を始めた。
見るからにモジモジ度が半端なくなってきた。気分が悪いのかな?
「どうしたの?気分が悪いの?」
「お、おしっこがしたいの!ううう」
瑞希は本当に切羽詰まった状態になっていた。漏れそうだ。このままだと失禁して栃朗の手をおしっこで濡らしてしまう。
それだけは避けねばならなかった。やってしまったら女として終わると。
そうして地上に降りたが瑞希は呆然とした。何もない草原だからだ。
「ヤ、ヤバいよ!」
瑞希はモジモジしながら唸る。やばくて足踏みをし出した。
「後ろを向いているから、やっちゃって」
「ど、どうしよう!恥ずかしくて出来ないよう!」
俺は少し考えた。
ポンッと手を叩くと、徐ろに高さ1m前後の岩を何個か収納から出し、コの字になるように配置していく。
そしてカメラバックから敷物を出し、出した岩のコの字の反対側に掛け、飛ばないように重しとする小さな岩を置いた。
岩岩
岩
↑岩岩
この岩に右向きに敷物を掛ける
そしてコの字の反対側に石ころを置いて隠す。
「瑞希ちゃん、これが精一杯だけど」
瑞希はダッシュして中に入り、シートの重しとして置かれた三脚を置いて見えなくした。
すぐに小をしているシャーと音がし始めたので、取り敢えず口笛を吹いている。それは擬音装置なるものがないから、その代わりかな。
しかし間に合ったようで、一安心!もしスカートが濡れていたらどうしましょう!?
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