第11話

 それから、エリック王子と大臣、そして私も参加させていただき私の母国の元大臣達の処遇を考えて、適材適所に配置していただくことができました。中にはあまりいいポストを用意できなかった方をいらっしゃいましたが、元大臣達は喜んで与えられた仕事に専念してくださいました。


 1ヶ月。


 慌ただしい1ヶ月でした。

 たったの1か月。


「えっ?」


 私の前に情報通の母国の元大臣が血相を変えて私の家にやってきました。

 最初は何かやらかしてこの国に御迷惑をかけてしまったのではないかと思ったのですが、違いました。


「ですから、母国が・・・・・・滅亡しました」


 財政破綻。

 暴動。


 元大臣は多くを語ってくれましたが、私の耳には単語だけ残り、彼の話す内容はするりするりと右耳から左耳へと抜けていきました。なかでも驚いたのが、


「レオナード王子が逃走したですって?」


「はい」


「負傷者や、死者は?」


 友人も国には数多くいる。血の気の多い人は少ないけれど、万が一のことを考えると、嫌な汗をかいてしまう。


「安心してください。矛先はレオナード王子と後妻の方のみであり、その二人が逃げたので、無血開城にて負傷者等はおりません」


「よかったです」


 私はひとまずホッとしました。


「しかしですな、誰が統治していくかで・・・・・・」


「お嬢様っ」


 そんな話を元大臣としておると、使用人のデイジーがノックもせずに私の部屋に入ってきました。


「ごめんなさい、デイジー。今お客様とお話し中なの、後で・・・」


 私が返事をしている最中に、みすぼらしい男がデイジーを押し、


「どけっ」


「きゃっ」


 私の部屋に無作法に入ってきました。


「久しぶりだ、ヴィクトリア」


 入って来たのは、今まさに話をしていたレオナード王子でした。とはいえ、髪はぼさぼさで顔はやつれ、服も汚れていて、王子というにはあまりに可哀想なお姿でした。


「何用でしょうか」


 私は毅然と振る舞いました。


「俺のところへ帰ってこい、ヴィクトリア」


「はい?」


 急に何を言い出すかと思えば、自分の元へと帰れと仰ってきました。非礼を詫びて物乞いをしてきたのであれば、いくらかの食べ物と水を差し上げるくらいは、と思いましたが・・・・・・はぁ。


「お連れの方はどうされたのですか?」


 私がレオナード王子に尋ねると、王子は嫌な顔をされて、


「あぁ、あいつは駄目だ。本当に」


 と答えた。どうやら、金の切れ目が縁の切れ目。お金が無くなったレオナード王子に愛想を尽かせて、逃げてしまった郷様子でした。まぁ、逃げる方も、逃げられる方も、同じ穴の狢でしょうか。


 私は空気を換気するためにひとまず窓を開けました。

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