第2話 アルタイル星(彦星)人 ドリューン

「もしもし? 大丈夫ですか?」

 どう見ても東洋人には見えない。西洋人なのか分からない。しかし男である事は間違いない。男はバックを開け金属製の注射器のような物を取り出し、それを首に当てると赤い光を放った。暫くするとフーと溜め息を漏らした。なんと! しっかりした日本語でこう話した。 

「驚かせてすまん。君に危害を加えるものではない。安心してくれ」

「…………」

 安心しろと言われても得体の知れない人物、そして奇妙な形をした飛行物体から出て来た者に警戒せざるを得なかった。

「貴方は地球の人……それとも宇宙から来た人? 他の人も居るでしょう何故出て来ないの」


「訳は言えないが地球を調査に来た。私はアルタイル星から来た。アルタイル星は日本では彦星と呼ばれ、ベガ星は織姫星と言われているようだが。その調査船の乗組員だ。どうやら地球の細菌にやられたようだ。幸い他の乗組員は感染していなく無事だが、自分だけが地球の細菌に感染したようだ。このままで一緒に乗れば全員が感染する。仕方なく私だけが船から降りる事になった。他の者は、まもなく地球を離れ離陸する。私は細菌に感染し仲間ともう一緒に帰る事は出来ない。だから一人地球に残るように指令を受けた。助けて欲しい」


 そう言葉を発すると同時にその宇宙船は音もなく浮かびあがり、やがて星空の中に消えて行った。どうやら見捨てられようだ。無理に連れて帰れば全員感染し全滅する仕方がない処置なのだろう。

「ちょっと! ちょっと待って。アルタイル星人って人間じゃなく宇宙人のこと。それで……私にどうしろと?」

「もう私は、私の星に帰る事は出来ない。あの飛行船も二度と地球には立ち寄らないだろう。だから私はこの地球という星で死ぬか生きて行くしかないのだ。ちなみに私をドリューンと呼んでくれ」

「でも地球の細菌にやられたのでしょう。私は医者じゃないし助ける事は出来ないわ」


 するとドリューンは海外旅行などに使われる大型のバックからパソコンのような物を取り出した。だがキーボードは付いていない。十インチの程度の画面のような物があるだけだ。どうやらタッチパネルのようになっているらしい。だが画像がパネルの中ではなく放射状に淡い緑色の光が浮かび空間に画像が浮かび上がった。文字のようで絵のような物が見える。それを操作している。 

「地球には風邪という菌がある事が分かった。我々の星にはない菌だ。この菌の一種が私の体を脅かしているようだ。この菌を取り除く方法はないのか?」

「風邪? そんな菌なら風邪薬で治るわよ。それなら持っているわよ。でも人間じゃないから……効くかどうか」

「それがあるなら見せてくれ」

 佐希子は旅行中いつも最低限の常備薬は持ち歩いている。風邪薬もそのひとつだ。


つづく

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