第8話

というところで、予鈴がなった。

「とにかく、お弁当ご馳走様!! これで勉強も部活も乗り切れるよ! 

じゃあ、また、帰りね!!」

「うん……」

 今日は気恥ずかしくて、冴がクラスに戻った後に、萌依がクラスに戻った。


 いつもは、気怠さと眠気が襲う5、6限目も難なくこなし、放課後。部活が始まる。

「部活だー!!」

「冴ちゃん、気合入っているね」

「はい、部長、体が動かせるので!!」

「今日はとことん動かせるよ~。皆、模擬試合やるよ!!」

「「「「「はい!!!!!」」」」」

「はい、いつもみたいに分かれて~、試合、始め!!」


「「「「「お疲れ様でした!!!!!」」」」」

「あーしごかれた」

「今日、冴ちゃん、間食しなかったね。お昼いっぱい食べたの?」

「ええ、友人が美味しい弁当を作ってくれたのでね」

「へぇ、そのお友達と仲が良いんだね」

「1年から仲が良いんです」

「そっか~」

「あ、じゃあ、その友人が校門で待ってるんで、お疲れ様でした!」

「うん、お疲れ様!」


冴は急いで、自転車を押し校門へ行く。だが、萌依の姿はまだなかった。

「今日は私の方が早かったか~」

何して待ってようか。オススメされた本でも読んでいるか。ガサゴソと鞄の中を物色し、オススメされた単行本を取り出す。昼休みに別れる直前、「これオススメ!!」って急に渡してきたから何の本だろ?裏のあらすじを読んでみる。

「お待たせ~! あ、本、さっそく読んでくれているの?」

「うん、裏のあらすじ読んでた」

「面白いライトノベルだから読みやすいと思うよ~」

「そっか~。じゃあ、帰ろうか」

 冴は鞄に本をしまい、萌依と共に歩き出す。

「いよいよ、明日、カラオケだね」

「そうだね、冴の歌が聴ける~」

「私だって、萌依の歌楽しみだよ」

「そういえば、何時集合? カラオケ店はいつものところでいい?」

「朝8時にいつものカラオケ店に集合!! それでフリータイムで夜まで歌いまくるわよ~!!!!!」

「おわ~マジか。喉潰れそう……」

「持ち歌は増えた? 冴?」

「TwitterやTik Tok で調べたよ。かなり増えた」

「じゃあ、明日は、冴のワンマンショーで」

「いやいや、交代で歌ってくれないと、それこそ私の喉やられちゃうよ!?」

「冗談だよ。あたしだって、歌いたいし。下手だけど聴いてね」

「下手じゃないよ、可愛いよ。聴くよ」

「遅刻してくるんじゃないよ?」

「運動部では10分前行動が当たり前だから大丈夫だよ。萌依こそ、遅刻しないでよ?」

「あたしだって楽しみで30分前にはカラオケ店の前にいるかもしれない!」

「そんなに!?」

「なら、私ももっと早く来るよ、部活で早起きしているし、カラオケ店は24時間営業だし」

「あー早く明日来い!! 今日は早く寝よ」

「夜中に起きないようにね」

「じゃあ、また明日ね~」

「うん、また明日ね~」

駅につき、萌依は階段を上がっていった。


「~♪」

 冴は、家族にうるさいと言われない音量で歌を歌っていた。萌依が楽しみにしてくれている。クオリティにもっとこだわらなければ。歌で好きな人の気持ちを惹こうとしているところが動物の求愛行動みたいだ。だが、絶賛してくれていた。ならば、その気持ちに報いるのが恋人でしょ。音程を外してしまったところを何度も戻しては同じところ繰り返し歌う。本当、最近の曲は難しい。転調したり、1番と2番でリズムが変わったり、高音域が続いたり等々……。本当、私は何を目指しているんだろう。だけど、これだけは言える。目の前の好きな人の笑顔の為の努力は惜しまない。

萌依の笑顔が見たいんだ。その為に私は今、歌う。明日はもっとこれ以上の実力で臨まねば。萌依は何を歌ってくれるのかな。選曲が恋愛ソングばかりで可愛いんだよね。私は様々なジャンル歌うから十八番はどれ?と聞かれてもどれだ?ってなるけど……。萌依は、失恋したわけでもないのに、やたらと失恋ソングを歌う。けど、雰囲気が合っているんだよね。憂いを帯びたところにドキッとしてしまう。さて、練習もここまでにして私も早寝しますか。お休みなさい。


 ジリリリリリリリリリッ!!!!!

 目覚ましが6時に鳴る。いつもみたく気怠く手探りで止めるのではなく、ぱっちり目が覚めて体を起こし目覚まし時計を止める。今日はいよいよ、萌依とお出かけ、否、デート!!!!!

 お気に入りのシャツに、下はジーパンに着替えという理系男子みたいな恰好はいつものことだ。私はお洒落に疎い、もとい興味が薄い。萌依はどんな恰好で来るかな? 女子力高いから、きっとお洒落な恰好で来るのだろう。着替えたし、朝ごはん食べよ。

「お母さん、今日は萌依とカラオケ行ってくるから、昼飯と夕飯いらないよ」

「あら、そう、わかったわ。楽しんでおいで」

「はーい」

 今日、部活休みで良かったなぁ。顧問の先生がいないからまた筋トレやるかと思いきや、最近詰め込み過ぎてたから英気を養おうってことになって。おかげで、萌依と1日ずっと過ごせる。ゆっくり朝ごはんを食べてもまだ7時。遅刻したくないし、もう行きますか。

「行ってきます!」

「はーい、いってらっしゃーい!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る