81『【3D配信】登録者数40万人記念枠!…40万人!?!?!?【オンライブ/宵あかり】part2』

 目の前では、スタッフさん達が手際よくこれから行われるらしいツイスターゲームの準備をしてくれている。今のうちにこっちは心の準備を…と言いたいところだが、どうやらゲームの準備はそこまで時間がかかるものではなさそうだ。

 赤青黄緑の丸が並んだ大きめのマットと、それに色と手足を指定するルーレットが運ばれてきてオレ達の目の前にセットされ、一瞬で準備は完了してしまった。


¥800

【ガチでツイスターゲームじゃん】

¥3,000

【エッッッ(未来予知)】

【永遠さんが勝手に言い出しただけかと思ったらマジで草】

【準備がスムーズなあたり完璧初めから予定されてたやつなんだよなぁ】

【ご満悦な永遠さんと複雑そうな宵の対比すき】

¥1,000

【この調子でどんどん3Dを生かしていけ】


 配信画面を見てみれば、そちらでもちゃんとツイスターゲームのマットやルーレットが再現されて映っていた。背景もいつの間にやらトレーニングルームのようなセットに変わっている。背面の壁一面が鏡張りになっていて、3Dアバターの背中がきちんと映り込んでいるというこだわりぶりである。…フェスの時も思ったけど、こういうところめちゃくちゃしっかりしてるなオンライブ…。見る側としては大満足だが、やる側としては順調に逃げ道が塞がれているようでちょっと複雑だ。今からでも見る側ってことになりません? ダメですかそうですか…。


『あかりはツイスターゲームやったことある?』

『い、いえ初めてです…というか本当にやるんですね…?』

『もちのろん。ちな私は前にさくらとやったことある』

『えっ』


 そんな面白そうな配信あったっけ…? 一度見たら絶対忘れないと思うんだけど…それともアーカイブにないだけか? えっものすっごい見たいんだが??

 そんなオレの表情を察してか、永遠とわさんが更に続ける。


『あれはまだ私と桜が出会ったばかりの頃だったから動画にはしてない。あの頃は3Dアバターもなかったし』

『出会ったばかりの頃にツイスターゲームを??』

『親睦を深めるのにこういうゲームは良いってネットで見た』


¥2,000

【ネット知識か〜〜】

【摂取する知識が偏りすぎだろ!】

¥5,000

【インターネットやめろ】

¥10,000

【ありがとうインターネット】

【コメント真っ二つで草】

【どっちなのだよ】

¥1,966

【ツイスターゲームは親睦深めるのにバッチリです!いかがでしたか?】

¥500

【ネットは広大だわ…】

【本当にそれ以外の選択肢はなかったんですかね…】


『実際、二択でかなり迷ってツイスターゲームにした』

『…ちなみに二択のもう一方は…?』


 聞きたいような聞きたくないような感じだが一応聞いておくことにする。もしそっちの選択肢の方がマシならまだゲーム開始前だし、そっちに変えてもらうことも可能かもしれないからな。まぁこの準備の良さからすると望み薄だけど!


『ローション相撲』

『』


¥7,000

【ロ ー シ ョ ン 相 撲】

【ええ…】

【宵絶句してて草ァ!】

¥2,500

【体張るタイプのお笑い芸人か??】

¥1,000

【オンライブはアイドルとお笑い芸人、両方の性質を併せ持つ♡】

【思ったよりヤバいの出てきたな】

¥200

【仲良くなれるかなぁ!?言うほどローション相撲で仲良くなれるかなぁ!?】

【もういっそローションツイスターゲームやれ】

【宵を熱湯風呂にぶち込め】

¥5,000

【リアクション芸人宵あかり】


『誰がリアクション芸人だよ!?』

『あかりはツイスターゲームよりローション相撲の方がよかった?』

『えっ?? い、いや…つ、ツイスターゲームの方が…』

『ならよかった』


 薄く、けれど確かに微笑む永遠さんの姿は、こんな状況でなければ尊すぎて崇めたくなるくらい絵になっていたが今はそれどころではない。だってツイスターゲームだよ?? どう頑張ったって…というか頑張れば頑張るほど相手のか、身体に触っちゃうかもしれないやつじゃん! オレが触られるのはまぁ仕方ないとしても、触っちゃうのはちょっといろいろヤバいと思う!


『と、永遠さん、やっぱり…』

『負けた方は勝った方の言うことを何でも一つ聞く。もしあかりが私に勝ったら、あかりのためにソロライブでもソロ配信でも、ソロキャンプでもなんでもしてあげる。どうしてもと言うなら水着で揚げ物も可』

『や、やります…!』


【まーた即落ちしてしまったのか】

【こいついつも即落ちしてんな】

【お前さぁ…】

【負けた場合のことをまるで考えていない…】

【さっきまでの葛藤してた表情はどこ行ったんだ宵!】

【急に覚悟に満ちた顔してて草】

【勝つさ】

【手ぎゅっとしてるのかわいい】

【ソロキャンプは永遠さんがやりたいだけだろ!】

【だから無駄に体を張ろうとするな】

【ちょろ宵】


 気がつけば「やります」と声が出ていた。我ながらチョロいと思うがこれはさすがに仕方なくない? 推しがオレ一人のためだけにソロライブしてくれるって言ってるんだよ? そんなの誰だって見たいに決まってるだろ!


『そうと決まれば早速れっつぷれい』


 永遠さんに促され、お互いマットの端と端に向かい合うようにして立つ。オレ達に見えるよう中心に置かれたルーレットの隣には、いつの間にやらスタッフのお姉さんが立っていた。たぶんこの人が審判役ということなのだろう。


『初手は…左足を黄色』

『は、はい…』


 お姉さんが回したルーレットを確認して、お互いその通りに身体を動かす。相手と被りさえしなければ指定された色のどの丸に置いてもOKなので、とりあえず一番近い黄色に足を置いた。一方永遠さんは…


『ち、近くない、ですか…?』

『ツイスターゲームとはそういうもの。勝負の世界は日和見ではやっていけない』


 初手から真ん中を超えて、ほぼオレの真ん前まで来ていた。えっめっちゃいい匂いする…百々ももちゃやほのかちゃんとはまた違う、不思議なほんのり甘い香りだ。香水とか…出したりしませんか…?


『香水とか出したりしませんか??』


 …あっ!?


【は??】

【宵!?】

【草】

¥5,000

【言ってからあっ!?みたいな顔するんじゃない】

【だから脊髄で話すなとあれほど…】

¥1,200

【スイッチ入ってきたな】

¥200

【これぞ宵あかりだぁ…】

【美少女じゃなかったら許されない台詞】

【TSしててよかったな宵】


『私も同じことを考えてた。これはデカいシノギの匂いがする』

『そ、そうですよね! きゃ、キャラ香水とかも商品としてあるし…!』


 あ、危ない危ない…あんまりにもあんまりな発言だったが永遠さんも同意見だったようだ。よってこれはセーフ!


『次、右足を赤』


 永遠さんから距離を取るようにして足を置く。先ほどと同じく距離を詰めてくるかとも思ったが、永遠さんも同じくやや離れた位置の赤丸へ右足を置いた。とりあえずは一安心だ。


『次、右足を黄色』

『はい…っ!?』


 と、安心したのも束の間、オレの伸ばした足に跨るように、永遠さんが身体を動かした。身長差の兼ね合いで永遠さんの頭がオレの胸の辺りに当たる。いやだからちょっと近い! 近いですって!?


『ふへふあ…』

『く、くすぐったいので揺れないで、貰えるとっ…』


¥10,000

【エッッッッッ!?!?】

¥4,000

【宵が乙女の表情しとる!】

【エッチだ(怒)】

¥8,000

【その顔は好きになるからやめろ】

¥30,000

【これがツイスターゲームか!】

¥5,000

【無限に切り抜け】

¥2,000

【即アップしろ】

¥500

【ネットの海に広めろ】

【永遠さん溶けてて草】


『あかりの心臓の音が聴こえる…私の音も、聴く…?』

『っ…つ、次! る、ルーレット回しましょう! ね、次!』


 まっっったくこの最推しはよぉ…!! オレの叫ぶような懇願を聞いて、お姉さんがやや惜しむような顔つきでルーレットを回す。次は…左手を緑色!?


『よいしょ』

『え、えっと…』


 永遠さんが後ろ手で緑を触る。オレはと言えば、遠く離れた方の緑へ逃げようとしたが体勢的にキツく、楽な方へと逃げた結果、永遠さんに覆い被さるような格好になってしまった。


(だ、大丈夫…平常心平常心…!)


 これも勝負に勝つ為だ。一時の羞恥のために遠くへ逃げて、耐えきれず倒れてしまっては元も子もない! そう、これはちゃんと戦略的な意味合いがある、それはそれは立派な行為で…。


『…あかりに食べられちゃいそう』


 ブチッと、オレの中で何かが切れる音がした。


『永遠さんが…永遠さんが悪いんですよ…!』


 そうだ、そうだとも! そもそもの話全部永遠さんが悪い! 散々可愛い顔と最高の声で煽りやがって!

 配信前の生ASMRで永遠さんの弱点がその可愛らしいお耳であることはよーく分かっている。腕の力を徐々に抜いて何とか耳に口を近づけ…っ!


『…あっ』

『えっ? っむぐっ!?』


 自分の運動神経の悪さをすっかり忘れていた。そんな器用なことができるわけもなく、永遠さんの顔を胸で押し潰すようにして倒れ込んでしまう。


『ご、ごめんなさい! だ、大丈夫ですか!?』

『うぅ…』


 慌てて身体を起こして永遠さんの無事を確認しようとする。が、しかし…。


『あっ…』

『むみゅっ…!?』


 腕が限界を迎えていたらしく、もう一度永遠さんの顔を胸でプレスしてしまった。


『す、スタッフさん! た、助けて!』


 固唾を飲んで見守っていた、ルーレットを回す係をしていたスタッフのお姉さんに助けを求めて手伝ってもらい、何とか永遠さんの上から退くことに成功する。続けて永遠さんの方を確認して、お姉さんは沈痛な面持ちで首を振った。


『そ、そんな…永遠さん…!』


 慌てて駆け寄るも、永遠さんは既に──


【し、死んでる…】

【安らかな顔しやがって…】

【えっ?えっ??】

【宵の胸で満足死したか…】


『悔いは…ない…私の…負け…ガクッ…』

『永遠さんー!!』


¥8,000

【生きてるじゃねーか!】

【ガクッて口で言うな】

¥3,000

【セルフ効果音すき】

【宵迫真の叫び】

【宵も宵でノるな】

¥10,000

【さては仲良しだなお前ら??】


 すっかり場のテンションに呑まれて叫ぶ。てかスタッフさんも大概ノリいいね?? これまでも永遠さんの無茶振りに付き合って来たスタッフさんだからだろうか、かなり面白いお姉さんである。画面には映ってないのが少し残念なくらいだ。

 さて永遠さんだが、どうやらオレの胸のクッションのおかげで大事には至らなかったようだ。自分に付いてても重くて邪魔なだけだと思っていたが時には役に立つこともあるらしい。デカパイ感謝…! 


 …それはそうと、これ以上永遠さんが何かヤバいことを思いついてしまう前に、そしてオレが冷静なうちにさっさと撤退だ!


『じゃあ永遠さんも倒したことだしこれで終わるぞー。四十万人おめでとうオレ! 今日は本当によく頑張ったオレ!!』


【じゃなー!!】

【じゃな!!】

¥5,000

【どうやら格付けが完了したようだな】

【決着のつき方があんまりにもあんまりすぎる】

¥1,000

【永遠さんでさえ——!!】

¥900

【真の勝者は果たしてどちらなんですかね…】

【勝負に勝って試合に負けたな】

【勝ち逃げするな】

【激戦だったな…】

¥10,000

【今日は本当によく頑張ったにめちゃめちゃ感情篭ってて草】

【実際宵は今日よく頑張ったと思う】

¥50,000

【四十万人おめ!!!!】

¥50,000

【結論:どっちも超自由人】



この配信は終了しました


【3D配信】登録者数40万人記念枠!…40万人!?!?!?【オンライブ/宵あかり】

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宵 あかり

チャンネル登録者数 42.5万人

49,777 人が視聴中・〜分前にライブ配信開始

#アカリウム #オンライブ

普通にすごいと思う

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