第32話 エグス。

群馬 豪の説得も虚しくエグスの元に到達をした。

エグスは群馬 豪を見て「豪!帰ってきた!お帰り!フィーデンに会いたい!」と言う。


群馬 豪は笑顔で頷いて「外の情勢がわかった。とりあえずスターク共を外に放てるか?」と聞くとエグスは「いいよ。簡単だ」と言って力を使うとユータレスの外にはいつも通りスタークが現れた。

外はもう朝になっていて、普段よりは少し遅いが無事にスタークは出てきた。

これで群馬 豪が無事にエグスに会えたことが外の皆にもわかった。



「エグス、ここを出よう。満足をし…フェルタイした今ならエグスは外に出られる。私達も一緒に脱出する」

「本当か?フィーデンを探せる!」

喜ぶエグスに群馬 豪が「ああ、そしてもしかしてだがフィーデンが居る土地を見つけたかもしれない。共に行こう。だがお願いがあるんだ」と言う。


「何だー?豪のお願いなら聞くぞ?エグスとずっと遊んでくれたから豪はフィーデンの次の友達だ!」

「助かる。それじゃあ外に出よう。明日もスタークの放出を頼むな」


「おう!」と言ってニコニコとするエグスは後ろをついてくるだけの小台 空を見て訝しんだ顔で「お前は嬉しくないのか?」と聞く。


小台 空は「僕はあなたをリーブス姫に渡します」と言う。

エグスが何かを言う前に群馬 豪が「小台!エグスは限界だ!これ以上追い詰めてどうする!?もうエグスは外に出してやるんだ!1箇所に永住する神では無いんだ!」と詰め寄る。


小台 空が「嫌だ!僕はリーブス姫にエグスを渡して男になるんだ!」と言った瞬間、群馬 豪は正拳突きを放って小台 空を気絶させると「残念だ」と言って放置して行く。


一度振り返ったエグスが「豪?いいのか?」と聞く。

群馬 豪は振り返らずに「構わない。エグスを外に出しはしたいがこの土地から出したくなかったそうだ」と言った。


「やな奴だ。じゃあいいや!」

「ああ、行こうエグス」


エグスを連れた群馬 豪が戻ったのは出発から2日目の夜の事だった。

こんなに早く戻ってくると思っていなかった戦場 闘一郎が「寝てないのか?」と心配すると群馬 豪は「いや、キチンと二度寝た。多分時間の流れの問題だな」と言う。

その顔に無理は感じない。


「小台は?」

「最深部に転がしてきた。出てこられないようにエグスに頼んで直通はやめてもらった」


やはり説得は出来なかった事に戦場 闘一郎が「悪かったな」と謝ると群馬 豪は「いや、私こそ説得を失敗した」と言った後で話を逸らす目的で「それにしてもあの縄梯子は見事だな」と壁に掛けてあった縄梯子の話をした。


「ああ、スターク共には色の概念が無いが奴らに誤情報を与えて黒色に引き寄せられるから罠に使いたいと教えて黒い染料を貰ってそれを縄梯子に塗った。夜はまず見えない。ところでエグスは?」

「ここにいる。エグス、私の仲間、君を外に出してくれる。共にフィーデンがいるかも知れない所まで行く仲間だ」


この言葉に「豪の仲間!フィーデンに会いたいからよろしく頼む!」と言ってドアの影から現れたのは小学校一年生くらいの少女だった。

戦場 闘一郎は目を丸くして「え?この子が…」と言うと群馬 豪が「ああ、エグスだ。どうした?」と言った。


「いや、情報を貰っていなかったから勝手に成人女性をイメージしてしまっていた。とりあえず一度中に入ってくれ」

皆幼女の姿をしたエグスに驚き言葉を失う。

セオとワオは涙を流して五体投地を始め、今日も打ち合わせとして呼ばれていたプリンツァは会えて嬉しいと挨拶をした。


エグスは頂上人のプリンツァを見て「プリンツァは青くないな。なんでだ?」と聞くとプリンツァは「私のひいお婆様がこの人達を表世界にお返ししてしまった罰です」と説明をした。


「んー?でも太郎に言っておいたぞ?エグスの力だと呼ぶことは出来ても送れない。送ると死ぬぞ?」

「それでも…皆それでもと故郷を目指しました」


「んー…フィーデンに会えたら送ってもらおう。フィーデンは呼ぶ時に殺しちゃうけど送る時は失敗しない」

「はい!お願いしますねエグス様」


とりあえず15日分の食料と水を用意して屋敷での最後の夕飯を食べる。

ここでエグスが桔梗と勝利を見て目を輝かせる。


そして横に居る群馬 豪に「子供か?これは子供か豪!?」と聞く。


「ああ、そこの玉ノ井と草加の娘の桔梗と梶原と宮ノ前の息子の勝利だそうだ」

「可愛いな!そうか!お前達も故郷に帰りたいんだな!エグスに任せろ!フィーデンに頼んでやるからな!」

見た感じ歳の差がそう無い風に見える中でエグスが姉のように振舞う姿に群馬 豪が「なんだ、エグスは子供好きなのか?」と聞く。


「こんなに可愛いならユータレスも直通にしてたぞ!」

「何?本当か?」


「おおう、桔梗!抱っこをさせてくれ!勝利もだ!本当だ!こんなに可愛いなら後100日は我慢できたな!」

こうして抱かさって笑顔の桔梗と勝利、その笑顔を見て更に笑顔になるエグスを見ながら梶原 祐一と玉ノ井 勇太が「マジかよ」「新発見だな」と言った。


「すまないエグス。俺の名は戦場 闘一郎。質問させてくれないか?」

「構わないぞ」


「この先、エグスがここを旅立つとユータレスとコルポファはどうなる?」

「ユータレスは徐々に閉じて行く。だが今はまだ閉じない」


「それは時間や距離の話なのか?」

「違う、人を残してきた。アイツが居るとユータレスは閉じない」

この会話でユータレスに置き去りにしてきた小台 空の顔を思い浮かべる。


「小台空か…。その場合、この国はどうなる?」

「普通ならエグスが旅立って3日で加護なんかが消えるけどアイツが出るまでは徐々に消えて行く。そして加護が空になると無理矢理ユータレスが閉じてアイツは外に放り出される」


何となく先が見えた戦場 闘一郎が「貴重な情報をありがとう。助かった」と言うとエグスは「いいぞ。それにご飯が美味しい。ありがとう闘一郎」と言ってパンを食べる。


戦場 闘一郎は厨房で自分の用意したご飯を食べるエグスをソワソワと見守るセオとワオに視線を向けて「いや、それはセオとワオだ」と言うとエグスは厨房を見てセオとワオに「ありがとう!」と言った。


「いえ!光栄です!」

「食べてくださってありがとうございます!」

セオとワオは本当に嬉しそうに涙を流してお互いに「良かった」と言っていた。



夕食後、普段通りの時間に灯りを消す。

プリンツァは下山途中に合流する手筈にして一度帰宅をさせる。

「寝静まったら脱出だ」

「プリンツァに開けさせないのか、門はどうする?」


「破壊する。破壊の理論値は導いている。火炎弾で熱して氷結弾で急激に冷まして雷撃弾を撃ち込む」

「音が出て騒ぎになるな」


「ああ。後は脱出までは出た所勝負で兎に角門を突破する事と、最悪はユータレスからスタークを出してもらって陽動する事もありだ」


この説明に群馬 豪が「エグス…もしもの時は頼む」と言うとエグスは手をあげて「おう!」と言った。

だがここで待ったをかけたのは梶原 祐一で「なあ、デリーツとかって戦えないんだろ?スターク出しても混乱はするけどコルポファの全滅とかはあまり見たくないぞ」と言う。


言っている事は間違いではない。

戦場 闘一郎は「それでは脅迫と牽制に使おう」と言い、群馬 豪は「そうだな。だが目的は生存だからいざとなれば使おう」と言った。

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