XXIII

 マジか⁉ まさか、本当にしたんじゃないだろうな。


「うん……」


 アホォオオオオオ! やったんかい!


 嘘だろ。俺にそんな黒歴史に近い出来事があったのか。記憶にない。


 また、視点が変わり、ソファーの様子がはっきりと分かるように見える。


 幼い俺と皐月さんの唇が重なり合い、あれは舌も入れているのではなかろうか。


 二人は激しいキスを交し合い、お互いに体を抱き合う。


 ——って、こんないかがわしい記憶があってたまるかぁあああああ!


 頭を抱える俺は、激しくこの記憶を消したりたいと強く願う。


 誰が好き好んで、こんな記憶を見ているのやら、恥ずかしくてしょうがない。


 だが、場面は再び変わり、次はリビングではない。


 今度は、一体、どこなんだよ。


「皐月ちゃん、早く入ろう!」


 と、俺の声が後ろから聞こえてくる。ふと、振り返ると、裸姿の俺が風呂場の扉を開ける様子だった。


 ぐはっ! もう、やめてくれ! これ以上、俺に心の傷を負わせるな!


「ちょっと待って、陣平君!」


 と、幼い俺の後ろを追って、タオルを持った皐月さんが入っていった。


 とりあえず、俺も風呂場に入ってみる。扉を開けずとも、俺の体は透き通って、中に入れるらしい。夢だから、これくらい当然か。


「ほら、しっかりと、体洗うの!」


「え~、しっかり洗ったよ」


「洗うのが早いのよ。ほ~ら、こっちに座って」


 そう言われるままに、幼い俺は、プラスティック容器の台に座り、皐月さんにきれいに洗われている。


 そして、それが終わると、俺が先に風呂に入ると、皐月さんが後から入り、俺の後ろに座って、両手で俺の体を包み、抱きつく。


 大胆すぎないか。もう、これって、男女の子供っていうよりかは、行っている所まで行っている男と女にしか見えない。


 確かに誰かと一緒に、風呂に入った記憶はあるが、それは栞とか、母さん、父さんくらいの記憶でしかない。


「ねぇ、皐月ちゃん」


「なーに、陣平君」


 と、顔だけを振り向く俺に皐月さんは、ニコッ、とほほ笑む。

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