XXI

 俺はそのまま本棚のところまで持っていき、段ボールを床に置く。


 ガムテープをきれいにはがした後、段ボールの中を見る。


「………」


 中身は一見して、変なところはなく、普通に参考書などが入っていた。


 怪しいものは、入っていないな。皐月さんは、今年、受験生だし、当たり前か。


 俺は、せっせと、本棚に並べていく。


 あれ? この最後の方に置いてあるこれって……。


 俺は、段ボールの底にある一つの手帳に目が留まる。それを手にする。


 ちょっと、皐月さんには、悪いと思い、中身の方を確認する。


 おいおい……。これ、ちょっと、やばくないですか?


 手帳の中には、小さい頃の皐月さんの写真があるのはいいとして、それとは別に違う写真がたくさん貼ってある。


 これ、もしかしてじゃないけど、俺、じゃないですかね? よーし、ここは一旦閉じて、見なかったふりをしよう。


 手帳を閉じて、皐月さんの方を見る。


 皐月さんは、せっさと段ボールの中から私物を取り出しては片づけをしている。


「あの~、皐月さん」


 俺は、恐る恐る話しかけてみる。


「なんですか? 陣平君。何か、問題でもありました?」


「いや、問題と言いますか。これは、どうすればいいでしょうか?」


 俺は、手にした手帳を皐月さんに見せる。


 それを見た皐月さんは、様子が急に変わり、バッ、と立ち上がって、俺の方に襲い掛かってきた。


「えっ⁉」


 俺はその勢いのまま、皐月さんに押し倒されて、皐月さんは俺に覆いかぶさり、顔と顔の距離が近い。


「見たの……」


「はい?」


「だから、中身、見たの……?」


 やばい、ここはどう答えれば、正解なんだよ。恋愛ゲームの選択肢だったらどれを選べば、どのルートに行く。見たか、見てないか。その回答によっては、俺、殺されるのでは。


「み……みて……見ていないです……」


 俺はちょっと視線を逸らしてしまった。あまりにも鋭い眼光を見続けることができない。


「本当に?」

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