XVI
私は、お兄ちゃんの看病をしたまま、いつの間にか眠ってしまった。
ああ、体が重たい。体が熱い。体が苦しい。
そう感じながら、俺は意識がもうろうとする中、生死をさ迷っているようだった。
あの後、どうなったんだっけ? 確か、ソファーに倒れたまま、意識を失ったような気がする。でも、頭がひんやりとして、体の方は涼しい。
俺は、ようやく目を覚ました。
薄暗い部屋の中で、エアコンが効いているせいか、体が少しだけ楽になっている気がした。
顔を横に向けると、ここは俺の部屋に間違いない。いつの間に移動したのだろうか。
右手を動かそうとすると、何かに固定されて、動くことができない。
その方を見ると、床に座って、布団に寄りかかっている栞がいた。
額には、ぬるくなったタオルが置いてある。どうやら、一晩中看病をしていてくれたらしい。
「全く、頭が上がらないな……」
俺は、気持ちよさそうに寝ている栞を起こさずに再び眠りについた。
× × ×
翌朝——
まだ、体の調子が良くなかった。これは完璧に治るまでは学校を休まないといけないな。
「う、うん……。もう、朝……?」
ようやく目を覚ました栞が、目を擦りながら、小さな欠伸をした。
「よう。やっと目を覚ましたらしいな」
俺は、寝起きの栞に話しかける。
「あ、お兄ちゃん、おはよう……。体の方は大丈夫なの?」
「それなんだが……。体の方はよくないな。体はだるいし、まだ、熱があるっぽい……」
「それじゃあ、今日は学校にお休みの連絡入れておくね」
「ああ、頼む」
「それは別にいいけど、お兄ちゃん、とりあえず、服だけでも着替えない。まだお風呂は無理だろうから……」
「そうだな。下着も変えた方がいいか?」
「そうだね。昨日、履いていたものだし、汚いから変えてほしいかな」
「分かった。ほら、もう六時過ぎているから、お前は飯でも食って学校に行ってろ」
俺は優しく栞に言った。
だが、栞は返事をせず、こっちをじーっと見つめてくる。
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