「デートね。それはいいんじゃないかしら。私も急ぐとすれば、これが一番いいと思うわ」


 富山も犬伏の考えに賛成する。


 デートと言えば、恋人同士の男女がどこかに遊びに行ってイチャイチャするイベントだ。


 確か、恋愛ゲームでもデートイベントがあったがあれはあれで、刺激的すぎるイベントであった。もしかして、あれをやることなのだろうか。


 デートまでとは言わないが、今まで男女二人で一緒に外を出ると考えたら、妹の栞くらいしかいない。と、言っても主に栞の買い物が中心で、俺はそれの荷物持ちといったところだ。


 葵とのデートとなると、それはちょっと困るところがある。すぐに浮かび上がると言えば、どこに行けばいいのか、考えるだけで、選択肢が増えるのだ。


「デートですか……。私、そのような事とは、あまり縁がなかったものでして、何をすればいいのか、さっぱり……」


 そりゃそうだ。何せ、葵も今の様子から見れば、動揺しているように見えるし、真っ赤になっている顔が、いつものキシッ、としている表情ではない。今頃、彼女の脳内は、パンク寸前のパソコンのようだ。


「俺もデートはしたことはないが、妹の買い物ぐらいしか付き合ったことがないからな……。どうやって、デートプランを立てればいいのか……」


 お互いに仮の相思相愛だとしても、二人っきりのデートは恥ずかしいものである。


「そこは大丈夫よ。デートプランは犬伏ではなく、私が決めるから。こういうのは男子よりも女子の方がいいのよ。男子だと、面白くない場所に連れていかれるから」


 自信満々で私に任せておきなさいと言っている富山。過去の経験で、そういう実績があるのだろう。ここは無駄に聞かない方がいい。


「でも、俺たちにとっては、初めてのデートだぞ。それを他人に任せてもいいのか?」


 俺は、すぐにその意見に対して反論する。


「そうですね。これは私達二人で、考えた方が良いかと思うんですが……」


 続けて葵も富山の意見に疑問を抱いている。


 富山が考えてくれるのはありがたい。だけど、富山の計画通りにデートするのは、果たして、それは楽しいのだろうか。


「確かに富山さんが、僕が考えるデートの計画よりも上だとは思いますよ。ですが、主役は、あくまでも彼ら二人ですからね。もちろん、二人を信用していないとは言っていませんが、経験が全くない二人に任せっきりも僕の考えとしてはどうかと思っているのです。でも、富山さんに全て一任させるのも難しいですね」


 犬伏は、それぞれの意見を聞きながら、双方の短所を並べた。


「じゃあ、どうするのよ。二人だけで考えさせると、結局何も決まらずに、ふらっ、と外に出て、近所の公園とかで話して、帰るだけデートになっちゃうわよ」

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