Ⅵ
『そう……。それはあなた自身が本気で人を好きになったことがないからよ。長年、あなたの中にいて思ったことがあるわ。あなたの家庭の事情、そして、あなたに関わる周りの人々、それはあなた自身にも責任があるのよ。人を愛せば分かるってこともある』
「それは本当にそうでしょうか? それは簡単に人を愛することは容易ではありません。ましては、私にはそんな相手もいませんし……無理ですよ。このまま、あなたに支配された方がましです」
私は何を言っているのでしょうか。自分に自信がない事ばかり、私らしいとは一体……。
『じゃあ、あの人はどうかしら?』
と、天使はこの暗闇の空間に外の様子を映し出す。そこには一人の男子生徒がました。
「これは……坂田君ですか?」
『そうね。彼は、あなたを助けるために保健室へと体を運んでくれたのよ。今、あなたの体の瘴気は、彼の仲間が治してくれたの。ま、この応急処置がなかったら、今頃、あなたは暴走して、天使になり、街を破壊していたかもしれないわね』
「そうですか……。でも、なぜ、あなたは坂田君の事を選ぶのでしょうか? 彼は、ただのクラスメイトですよね?」
私は、天使が言いたいことが理解できない。なぜ、天使が彼の事を棚に上げるのでしょうか。
『ただのクラスメイト……。やはり、あなたの目にはそう見えているのでしょうね。でも、彼はただのクラスメイトではないわ。彼は、天使化を抑えるための『鍵』よ。まぁ、彼自身、あなたにはそれを隠しているらしいけど』
「えっ……」
私は言葉を失った。天使化を抑える『鍵』とは一体……。もしかして、そのためだけに彼は、私に近づいたのでしょうか。でも、どうして……。
「でも、それがそうだとして、もし、私の天使化が抑えられたとして、彼はその後、私との関係はどうなるのですか? 私から離れていくのではないのでしょうか?」
『さぁ、それは私には分からないわ。だって、天使は私だけじゃないから……』
「それはどういう意味でしょうか? 他にも私みたいな人がいるってことですか?」
『そうよ。まだ、私みたいに覚醒はしていないけど、天使によって、性格も違うし、凶暴な天使だっている。ま、それを助けるためには彼が必要なんだけどね。でも、愛で天使の力を抑えるといったけど、偽の愛で抑えられるわけではないわ。本物の愛ではないと無理よ』
天使は私の方へと近づいてくる。
『さて、一応、あなたはこの世界から出ることができるわ。でも、ここは私に任せてみる気はない?』
「どういうことですか?」
私は、天使の考えに疑問を抱く。
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