第98話 そばにいてくれるのが好き。−2

 意識してはいけない…。してはいけない…。

 裸の二人。目をどこに置けばいいのか分からないほど、恥ずかしい状況だった。俺はけっこう慣れているはずなのに、どうして茜と一緒にいる時はこうなるんだろう。タオルで前だけを隠すのがもっとエロいのを知らない茜、背中やお尻が丸見えになってるって話してあげた方がいいかな…。


「はい…!座って!今から彼女が背中を流してあげます!」

「何…、気合い入ってる…」

「へへ…」


 湯気が立つこの場所で、茜が俺の体を洗ってくれるなんて…。

 気づいた時にはもう裸の姿で俺とくっついていた。後ろから感じられる柔らかい胸の感触とボディータオルとともに触れる茜の手、目の前の鏡に映る初々しい姿は俺にけっこう刺激的だった。本当に動揺している…。すごく緊張している…。


 すると、茜は真っ赤な顔をして「どう?」って聞いてくれた。


「……いいと思うよ」

「柊くんって、体硬いね…!」

「そ、そう…?」

「噛みたい…!」

「食べ物じゃないからね…?」

「へへ…」


 少し緊張している雰囲気を和らげてから、俺の前に座る茜。


「今度は…私、私…」

「うん。でも、こんな明るいところで体のあちこち触ってもいい…?」

「……うん」

「分かった」


 感覚的に触ってた体を…直接見るのはけっこう恥ずかしいな…。

 茜の肌、本当に真っ白。その脇や太もも、胸…アソコまで俺の手が触っていた。暖かくて、少し震えているような気がした。だよね…、こんなに触れてるなら恥ずかしくなるよね…。拭いてるよって言い訳をしながら…さりげなくその胸を揉んでも、茜は何も言わずに俺を感じていた。目を閉じて、じっとしているのが本当に可愛い…。


「……っ」

「ちゃ…ちゃんと拭いてるの?」

「うん…。ちゃんとやってるけど?」

「先から胸とアソコばかり触ってるから…、恥ずかしいよ…」

「あら…バレちゃった!」

「もう…!この変態!」

「だって、好きだからね〜」

「……早く入りたい…。恥ずかしい」

「分かった…。ごめんね」


 てか、うちの風呂ってこんなに狭かったのか…?

 二人が入ってるけど、後ろから茜の体を抱きしめるようになってしまった。これもこれなりに悪くはないけどね…。ちょっと…あいつがムラムラしてるから…、恥ずかしくなるだけ。意識しないように…、無理だよな。裸の茜とくっついてるから…。


「柊くん、勃起した…」

「……」

「柊くん…?」

「うん…」

「勃起したよ…!」

「二度言うな…。恥ずかしくなるから」

「へへ…、これで今日はやるよね!」

「どうしてそうなる?」

「それ、一人で処理できるの?」

「茜、いやらしいことを言うな!今も十分苦しいから、やめて…」


 ニコニコしている茜が振り向いていた。


「……えーいっ!」


 と、ぎゅっと握りしめる茜。


「……茜…」

「なんか、めっちゃあったかい!すごい!硬いしあったかいし、鈍器みたい…」

「うるさい…。変なこと言うなよ」

「……あのね。今日は逃げないから…あの時の続きをしようね」

「……」


 俯いてる茜が小さい声で話した。

 あの時の続きと言えば、やっぱりやるんだよな…。


「分かっ…」


 答える前にキスをされてしまって、俺の体を抱きしめる茜と風呂の中から濃厚なキスを始めた。あったかい風呂の中でさらに熱い茜の体と触れている。柔らかい感触が俺を支配するような気がして…、その胸を揉みながら茜とのキスを続けた。


「はあ…」

「答えはいらない…。彼女がやりたいって言ったら素直にやるのよ。分かった?」

「うん…。分かった」

「好き…」


 それからゆっくり、風呂の中で時間を送っていた。


「柊くん、私ね」

「うん?」

「美香さんと言う人と会ったことがある」

「そう?」

「美香さんは柊くんの彼女ですか?って聞いたら、美香さん…笑ってた…」

「まぁ…そうだよね」

「そして、その後…茜ちゃんに任せるって言ってたの。その意味はいまだに分からない」

「……」


 多分、美香さんと俺が別れたあの日の話だろう。

 もう会えないから、茜にそんなことを言ったかもしれない。美香さんって茜のことを知っていたからな…。「好きな子ができるまで付き合っちゃダメ」と言ってくれた美香さんの話はまだ覚えている。今は元気にしてるのかな…、美香さん。


「よく分からないね…」

「それと!最近は、美穂ちゃんも優香先輩も…彼氏と上手く行ってるから本当に幸せだよ」

「えー、自分のことじゃなくて他人のことで?」

「うん。だって、私大人になったら柊くんの嫁になるからね!もう決まってるし!」

「……」

「だから、周りの人が幸せになってほしかったよ」

「そ、そっか…」

「その顔は…!やはり私との約束覚えてないよね!」

「……うん、ごめん」

「じゃあ…、他の女と…あの…、するの?」

「何を…?」


 ぎゅっと、俺を抱きしめる茜は震える声で話を続けた。


「け、け…結婚のことよ…!」

「……え、それはちょっと早いんじゃない?」

「そ、そう?他に…あの、相手とかいるの?」

「まだ高校生だしね。心配しすぎ」

「えっ…?何言ってるのか分かんない」


 目を合わせて不安そうな顔をする茜、さりげなくその頭を撫でてあげた。


「まだ早いんだよ〜。茜、プロポーズくらいは俺にやらせてよ」

「……」

「茜以外に…、そんな人がいるわけないでしょう?」

「……」


 カナンと会う前に、俺はそうするつもりだった。

 いつも涙声で俺に抱きつく茜、そんな可愛い子を殴る人が大嫌いだった。他に頼るところもなかったから、ずっと俺しか見てないことも知ってるし…。一緒に過ごした時間が増えるほど、俺の中からもどんどん茜のことが好きになるのを感じていた。


 だから、もうちょっと待ってくれるかな…。


「ずっと、こうなりたかった…。好きだったよ。幼い頃からずっと…、ずっと、ずっと…。お兄ちゃんが大好きだったよ…」

「俺も、茜が一番好き…」


 涙を流す茜の体を抱きしめてから、昔の思い出を少しずつ思い出していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る