第54話 水族館。
朝から息苦しいのを感じて目を開けてみたら、今朝も当たり前のように茜の抱き枕になっていた。てか、寝癖悪くない…?いくら俺が彼氏だとしても…、朝からパジャマのボタンを外した彼女の肌を見るのはやばすぎる…。ヌード色のブラから腰のラインまでしっかり見える女の子の肌は、男にとってけっこう危険な状況だった。
無防備すぎるのもほどがあるんだろう…、茜。
それより、なぜか俺のボタンも外れてるし…。
「朝だよー」
「ううん…。また朝…?」
「また朝って…、今日は一緒に水族館に行くって言ったよね?」
「はっ!そうだ!うっかりしちゃった!」
と、言いながら俺の肩に寄りかかる茜があくびをする。
「よく眠れなかった…?疲れてるね」
「柊くんがそばにいるからね…。なんかちょっと緊張しちゃって…、眠れなかったよ…」
「なんでだ…?とにかく、準備をしよう」
「はーい」
朝ご飯を食べてから顔を洗う時、俺は首から見える変な傷跡に気づいてしまう。それはちょっと赤くて、誰かにつけてもらったような傷跡だった…。確かに、昨日は蚊に刺されたこともないし、首も痒くなかったからな…。だったら…もしかして…?
「茜!」
みそ汁を飲んでいる茜が柊の声にびくっとする。
「う、うん?」
「首筋のこれなんなんだ!」
「え…?なんでしょう?茜、分かんない!」
「……いつの間に、やられてしまった」
「へへ…、なんか無防備な柊くんを見ていたら…いたずらがしたくなるからね!」
その気持ちは分かるけど、今日はみんなと水族館に行く約束をしたんだろう…?
こんなところに残すと、あの二人に見えてしまうから…。だから、たまには俺のこともちょっと考えてくれ…、このままじゃあの加藤に笑われるんだよ…!またあの「やった?」「やった?」「おいおい!やったのか」を聞きたくない…、勘弁してくれ二人とも。
でも、仕方がないよな…。
彼女がやりたかったことだし、怒るのもおかしいよな…。
「デコピンするぞ…」
「ひっ…!」
……
結局、茜からつけてもらったキスマークは隠せず、俺たちは約束の場所に着いてしまった。今日は天気も晴れてるし、茜のテンションも高くてとてもいい日だ。てか、前に買った服、茜とすごく似合ってるからちょっと照れてしまう…。茜にぴったりの白いワンピースと白いスニーカーか…、俺もそれに合わせて白いシャツを着たけど、やっぱり茜は可愛いな…。
「あっ!柊くんあっち!」
「どこ?」
「よ〜。柊と茜ちゃん。二人今日はペアルック?」
「へへ…、柊くんと同じ色にしてみました!」
「可愛いね」
ちょっと照れてる茜の姿に嫉妬していまう…。
いつ見てもこいつはカッコいいな…。くっそ、なんか負けた気がする。
スタイルがいいやつだからな…加藤は、こうやって外で会うのも久しぶりだから忘れてた。そしてそのそばにいた上野が、加藤のせいでちょっと緊張しているように見える。
……が、頑張れ上野…。
「美穂ちゃん!今日可愛いね!こんな姿初めて見た!」
「そ、そう…?」
二人が話している時、こっそり俺を呼び出した加藤がにやつく。
「なんだ…。そのいやらしい顔は…?」
「昨日やった?」
やっぱその話が出るのか…、こいつの頭に何が入ってるのか聞いてみたい…。
「何もやってねぇよ」
「そう言われてもな…。何もしていない相手にキスマークを三つか、茜ちゃんもなかなかやるね」
「はあ?三つ?どこ?」
「後ろにあるぞ」
しまった…。体の向きを変えた時につけてもらったのか…、玄関でくすくすと笑っていたのもこれをバレていなかったから…!茜…、そんな純粋な顔をして俺を騙すなんて…、ある意味で怖いな…。本当、茜に余計なことを教えてあげたかもしれない。
「そんなことやってない。好奇心の猛獣にやられただけ、俺が小さい女の子といやらしいことやるわけねぇだろう…?」
「なんで?俺ならすぐやるかも。彼女がそんなこと嫌いって言った?」
「言ってないけど、とにかく今は二人のところに戻ろう…」
「はいはい」
全く…、こいつはいつもそんな話ばっかり…。
「みんなー!行こう行こう!」
「柊、柊くん…!」
先に入る二人を見つめて、急ぐ茜が俺に手を伸ばした。
その小さい手を握って、俺たちも水族館の中に入る。
「私、ペンギンさん見たい!」
「うん?」
「ペンギン!」
「それが見たかった?うん、分かった。そっちに行こう」
会長からもらったこのチケット。来る前にその水族館を検索してみたけど、けっこう広くて大きい水族館だったから何から見ればいいのかよく分からなかった。その前に水族館も初めてだから…、そう見えないけど、俺なりにすごく緊張していた…。
「わぁ…!」
中に入ると深海の中にいるような気がした。
紺色の世界が目の前に広がって、いろんな魚たちが泳いでいる。その景色にぼーっとしていたら、俺の手を引っ張る茜がペンギンが見える場所に連れて行った。
「ここ!ここ!わぁー!」
数多いペンギンがぼーっとしているのを見つめる茜。そして先に入った加藤たちとは別れてしまったけど、一緒に回ることより二人で楽しむ方がいいんだよな…?そう考えながらじっとしている茜の横顔を見つめていた。
繋いだこの手は離さず、じっとしている茜を…。
「あっちにいるペンギンさん、ぼーっとしている柊くんみたい!」
「俺、そんなにバカみたいな顔しないよ…」
「一緒!アハハッ」
「じゃあ…、あっちの寝てるようなペンギンは茜と同じ!」
「え!なんで…!」
「のんびりしてるのが一緒!毎朝あんな顔をしてあくびしてるじゃん…」
「ち、違うよ!」
「フフッ…」
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