7/21~7/31
21日
日が落ちる。その時に私と貴方の視線が、甘く、切なく、粘着を持って、絡み合って。お互い熱を共有したまま、今度は指を、唇を、体を、絡め合って。
火傷しそうな熱に溺れながら願う。このまま夜が明けなければいい。いつまでも貴方とこのまま、一緒にいられれば。
そう願おうと、無慈悲に朝は来る。
「魔法の時間」
Day21「短夜」
22日
俺の趣味は人間観察。人は言語無く様々なことを教えてくる。職業柄、こうしてそれを拾う目を養う時間はとても大切だ。
あの男は頬に手の跡……きっと恋人に振られたばかりだな。あの女は、整っていない髪……朝に時間が無かったか。あの学生は腕に痣が……虐待か、イジメか。どちらにせよ、丁度いい。
「誘拐犯」
Day22「メッセージ」
23日
君は太陽のようだ。
そう言ったら、何それ。なんて、君は笑った。
だって、仕方ないじゃないか。日を向く花畑の中に立つ君は、その花のどれよりも、太陽が似合う。
それを迎えに来る役割に過ぎない僕は、そう思ってしまったから。
だったら貴方は月だ。君がそう返す。君に照らされて光る。悪くないな。
「太陽と月」
Day23「ひまわり」
24日
悲鳴が響き渡る。私は慌ててその声の方向へと駆けていった。部屋に飛び込むと、座り込む女性の姿。その視線の先に、床に広がる真っ赤なシミ。
「何の事件だ!?」
「ええっと……」
「これは血痕?貴方は怪我をしていないようだが、これは……」
「虫に驚いて、ケチャップをぶちまけただけです……」
「事件未満」
Day24「絶叫」
25日
その光に、どこまでも魅せられるようだった。
その小さな球の中に、どこまでも半透明で、上下逆さまに、映る世界。いつまでだって見ていられた。その中なら、こんな醜い世界も、美しく感じられたから。
それでも、いつまでもここに囚われちゃいけない。私はそう思い、太陽に向けその世界を投げ捨てた。
「ガラス玉」
Day25「キラキラ」
26日
絶対に失くならない、"私だけのもの"が、欲しかったの。
だから虫を捕まえるのが、好きだった。取って、優しく、繊細に、愛を持って、私のものにしてあげるの。そうしたらそれは永遠に綺麗で、美しいまま。私のものよ。
ある日、とある人を好きになった。「ねぇ……私のものになってくれないかしら?」
「私だけのもの」
Day26「標本」
27日
「ねぇ、遊ぼうよ」
「……遊ばない」
「何で?」
「……勉強しなきゃだから」
「まだ夏休み1日目なのに?」
「そうやってたら、あっという間に夏休み終わるよ」
「うっ、耳に痛いけど……くらえっ!」
「わっ!?……あーもう、ノートが……」
「ね!遊ぼうってば!」
「……もう、少しだけだよ!」
「そうこなくっちゃ!」
Day27「水鉄砲」
28日
炭酸水を飲む。喉を通る、爽やかな衝撃。それと同時に、少しだけ笑顔になる。
喉が変な感じ。でも爽やか。だから嫌じゃないの。この感覚に、どこまでも酔っていたい。泡が小さく弾けて、その度に笑いながら、勇気を、自分を、曝け出すことができる。
何でかな、こんなに楽しい。
髪を解き、駆け出す。
「爽やかな衝撃」
Day28「しゅわしゅわ」
29日
「耳揃えて返せや」
僕の友人が、ドスの利いた声でそう言った。思わず条件反射で、震え上がってしまう。怖いけど、仕方がない。僕が悪いのだから。
僕は食パンの袋を取り出し、耳を千切って、炒めて砂糖をかけて……。
「はい……この前の昼食のお礼……」
「カリカリで美味しいな」
「ありがとう」
「耳を揃えて」
Day29「揃える」
30日
掲示板から、イベントのポスターが剥がされていた。そこの担当だった私は犯人を探すことにし、案外それはあっさり見つかった。近所の小学生だった。
訳を聞くと、これで好きな人を誘いたかった。だそうだ。
小学生は私にポスターを差し出し、一言。
「一緒に行きませんか」
全く、叱れないじゃないか。
「デートのお誘い」
Day30「貼紙」
31日
今日は夏休み最後の日らしい。らしい、というのも、私は大人で関係無いからだ。一方小学生の君は関係がある。時折寂しそうにしつつも、嬉しそうに綿飴を頬張っていた。
「あ、花火」
誰かが言った。空を見上げる。花が咲いて、散って。君が口を開く。
「 」
……ドキドキさせてくれるじゃん。
「 」
Day31「夏祭り」
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